惑星VIT233
惑星VIT233
その星は地球に似ていた、だが一つだけ他の星とは違う部分がある。
星の大きさは地球と同等かそれよりやや小さい。
だが太陽が5つもあるので常に昼間のような明るさがある。
そして常に星の半分を雲が覆っている、適度な日差しと水分が生物の成育できる環境を生み出していた。
24時間植物が生育できる星であり、大陸は3つに分かれ海は全体の約半分。
豊かな緑と青に彩られた星だった。
【成層圏から見ると、まんま地球のようだ】
【やや陸地が多いようですね】
【サテライトズーム】
惑星の成層圏から危険な生き物や竜人、さらには恐竜族などがいない場所を検索する。
【安全確認完了しました】
【このまま下へ降りよう】
俺は瞬間移動ではなく通常落下方式を採用した、空気があるのなら重力制御だけすれば空から舞い降りることもできるはず。
だが新たな危険がそこにあったとは思いもよらなかった。
【何かあります】
【なんだ、あれ?】
それは空中に浮いている模様のようなもの、雲ではなく何かの印かはたまた生き物か?
《ゲート》
《は?》
どうやらこの星は通常の世界とは違い、異次元へと移動できるゲートが無数に存在しているらしい。
《触るとどこかに飛ぶ》
《それはまずい》
何処のゲートがどこに移動できるかわかれば楽だとは思う、だが目の前に見えたゲートはやや大きめの100メートル四方。
そして空中に浮いているのだが、よく見ると50k程度離れた場所にも同じようなゲートが見える。
《あれ全部?》
《そうだよ》
触ると終わり、まあ目に見えるので避けることは難しくないのだが。
星のあちこちにこんなものがあるとはいやはや面倒くさい。
おかげでゲートを避けながら地上へと降りる羽目になった。
【この星を侵略とかはできそうもないな、まあもうしないけど】
【ゲートに触れたとたん別の場所へと飛ばされるようです】
その間も時速1000k程度で落下を続ける宗助達、ゲートを避けながら1時間程度でようやく地面が見えてきた。
【あそこか?】
「ヒュー」
そこは崖の上であり周りは切り立った山に囲まれている。
平地にはいくつかの都市が見えているので、安全なのは人里離れた山の上ということになる。
近くに森もいくつか見えている、問題なのはその森や都市の一部にもいくつかのゲートが見えることだ。
《ここでいいか?》
《ここでいい》
《じゃあここでサヨナラだ》
《うん?》
《元気で》
《うん》
デイバックからメディロンを取り出すと、ふわふわと風に揺られながら飛んでいく。
まさか別の星まで送り届ける羽目になるとは思ってもみなかった。
確かにこの星に住んでいる竜人族は、一つの都市で2万人程度確認できる。
時折飛竜とみられる生き物が飛んでいるのも見える、多分原種である竜たちもこの星に暮らしているのだろう。
【面白い星ですね】
【ということは彼らに協力を頼んでも意味がないのか?】
すでに他の星への移住を完了し安全に暮らしている、そんな彼らを仲間にしてヤコブ族に対抗するための力を貸して欲しいと説得するのは難しいことだ。
惑星YAKの氷の下にある町は現在観測所みたいな物であり、惑星YAKのヤコブ族が自分達のいる星へと侵略を始めるのか、そうでないのかを見極めるために残されているようだ。
宗助は又作戦を考え直さなければいけなくなってしまった。




