能力者の事件
能力者の事件
それから数日、TVの報道がにわかに騒がしくなっていく。
超能力者の事件、いや事件だけではなく様々なシーンでミラクルなことが起こり始めていた。
中にはネットで拡散する者も出てきて、学生の中でも噂は広まってきている。
「おはよう」
「おはようございます」
「それじゃ講義を始める」
「ん?君はここの学生じゃないよな」
量子物理学の馬場一郎教授、俺の進むべき学問にはこの人の講義が必要だという。
ゼミには20人ぐらいが参加しているのだが、教授は必ず参加人数を数えていたりする。
当然のことながら生徒の顔もしっかり覚えているらしい。
「わたしのことか?」
「初めて参加するなら名前と学部を教えなさい」
「なんで?」
「この大学の生徒以外には私の話を聞く権利はない、タダで聞きたいのなら論文の発表会で聞くんだね」
「ケチな大学だな」
「君はなんだ!」
「おい!」
「世界で一番進んでいると聞いてきたが、たいしたことないようだ」
「ガヤガヤ」
「バタン!」
「君らか?」
「…」
大学の警備員が2名、教室の中に入ってくるが、それを見て2人の若者が逃げ始めた。
「おい!」
「まて!」
「うるさい!」
「うわ」
「ガタン」
「バタン」
「にげるな!」
2人の若者、何のために侵入して何のためにこのゼミへ来たのか?
当然のことながら部外者が勝手に入ってタダで教授の話を聞くことはできない。
もしタダで聞きたいのなら学会とか国際会議の場で聴講するのが一番だ。
しかも捨て台詞を残すとなると、いったい何をしに来たのだろうか?
「ドン!」
「ぐへ!」
「君、ありがとう」
「受講のタダ聞きは許されませんからね!」宗助
「やるな~」
「当然のことです」
だがこの騒ぎで警察まで登場し、その日の講義は明日へと延期されてしまった。
実に不愉快であり、あの2人に命令したやつにはきつくお仕置きしてやろうと思っていたのだが。
一応事情聴取の後、外国人であることとそしてショートステイであること、極めつけは大学の講義を聞くのは無料だと、誰でも聴講できると思っていたという嘘をずっと吐き続ける。
指名手配犯というわけでもなく軽犯罪にもならず、2人は釈放されてしまうらしい。
【宗助様】
【ああ、超能力者だな】
【ESP部隊、しかも昨日の奴らとは別なグループらしい】
CN宇宙軍所属ESP部隊、暫定100人、そう彼らの頭脳から手に入れた情報だ。
だがこの2名は同じ部隊ではあるがグループが違うらしい、なぜ違うのかそれはこの2名にはパワー系の超能力がない。
彼らはCN宇宙軍所属ESPエリート部隊、要するに近代兵器の情報や機密情報を狙った潜入部隊、先の奴らは殲滅部隊という役割らしい。
彼らの能力はデータコピーや幻惑能力、そして記憶能力に特化しているようだ。
パワーが無いため宗助によって簡単につかまってしまうのだが、外国人特権によって簡単に釈放されてしまう。
それが分かっているのだから追加の対応を取るのは当然だ、捕まえた時に仮想カメラを仕掛け能力は封印させてもらった、誰が黒幕か仲間は何人かなどの情報はこれで簡単に調査できるだろう。
【とうとうここまで来ましたね】
【真面目に勉強するだけならいいんだけど、邪魔をするのは良くない】
【現在のCN副首相補佐が司令塔らしい、レイランのトップが失脚してから部隊のトップに赴任したようだ】
【どうなさいます?】
【どうやら近いうちに日本へ来るらしい】
何度かスパイ行為が失敗すると、必ず親玉は現地に出向く。
失敗した責任を現地の指揮官に押し付けるため、そして自らの威厳を保つため。
しかもその人物は惑星間転移装置のUSA⇔日本の実験を見に来るという。




