CNの襲撃
CNの襲撃
地下鉄の駅を下車し地下道を少し歩く、大学の最寄りの出口へと階段を上ると目の前には事故と思しき風景が広がっていた。
「わー」
「ボンッ!」
「なんだ?」
【自動車事故の様です】
目の前の国道には何台もの車がひしめき合うように、まるで何かにまとめて押し出されたような感じだ。
通常ならばトラックに後ろから突っ込まれたのではと思うだろう、だがそのような大きな車は見当たらず。
不自然な位置に一人の男性が立っていた。
「助けよう」
「うん」
数台の自動車からは火の手が上がっている。
【ロボスキルレベル10】
【了解】百合奈
体だけではなく洋服にもスキルを施す、そうしないと火の中へ飛び込むことなどできないからだ。
「大丈夫か!」
「う う」
「バキン」
「これでなんとか…」
「私あっちを見てくる」
「分かった!」
1台2台ではない、最低8台は巻き込んでいる。
だがその背後には車ではなく一人の男性が道路の真ん中に立っていてこちらを見ている。
俺たちが救助を始めるとその男が近寄ってくる。
「おい」
「あんたも手伝え!」
「邪魔をするな!」
「なんだと!」
「バキン!」
「ドン!」
一瞬何されたのか分からなかった、その男はいきなり宗助を殴りつけた。
しかも強化能力を帯びた手で、何の躊躇もしない攻撃に宗助は受け身も取れず直撃を食らう。
もちろん体には何のケガも負うことなどは無いが、いきなり殴られたことで道の端まで吹っ飛んでいた。
「キャー」
「いってーなー」
「お 俺のこぶしで平気な奴がいた」ニヤニヤ
【重力20倍!】
「ぐ なんだ?急に体が」
「おい お前はなんだ?」
「あ!俺が何だと!」
【スキルロボ】
いきなり殴りかかった男、そいつのデータを見て驚いた。
CN宇宙軍所属ESP部隊、宗豆沃。
【なんだよこいつ】
【CNで新たに創設した部隊では】
【でもなんでこんなことしてる】
脳内通信でリリーさんとやり取りしている間に自動制御で救助活動を続行する。
一応この敵は路上に寝かしておくとして、さすがに火の回りが早い。
【宗ちゃん手伝って】
【今行く】
事故に巻き込まれたのは12人、力業でドアをこじ開け、次々に安全な場所へと助け出す。
【この人で最後!】
最後の一人を車の中から連れ出すと周りから歓声が上がった。
「おー」
別に歓声などいらないから誰か消防と警察に連絡してくれと頭の中でつぶやく。
【宗助様全部連絡済みです】
【そうなんだありがとう】
「君たちすごいね」
「別に」
「どこの人、学生?」
「スパイに語ることなど無いよ」
「…」
【スキルロボ】
「うっ」
「あ 大丈夫ですか?」
とっさに体を抑え地面に寝かせる、そして「事故を見て気分が悪くなったのかもしれない」とつぶやく。
参った まさか観客の中にも工作員が紛れ込んでいるとは。
先にロボ化した男性のデータの中にこの軽そうな男のデータもあり、そこにはこの男性が見張り役の仲間だということ。
もう一人のスパイの名は陳麻帥、要するに二人一組でターゲットを消す任務。
先の男が念動力と強化能力を使用してターゲットを事故に見せかけて粛清する。
そしてこいつがその一部始終を嘘を交えて警察に報告する、真実を明かされないように見物人に嘘を信じ込ませる偽証能力。
【ターゲットは同じCNの諜報員みたいだな】
【あの人かしら】
そこには車から運び出された男性と、その横には女性の姿も。
【どうやらそうらしい】
【あ 宗ちゃんこの人はもういいの?】
【もうすぐ目を覚ますけど記憶を弄り回したから、当分は自分が誰かも分からないだろうね】
【そうなんだ】
俺は助かった女性に話しかける。
「彼は?」
「あなたは誰?」
「CNの工作員は何人?」
「何のこと?」
「あの2人ならすでに無力化したよ、このままだと君も危ないんじゃないのか?」
「それをあなたに話して何ができるの?」
「できるさ、そちらの彼を治すこともね」
【スキルロボ】
【首の骨を修復中、同時に頭蓋骨を修復します】
流出した血はもとに戻すことができないが、血管の修復や骨の修復そして皮膚の修復はスキルロボの効果で瞬時に元通り、数秒で細胞まで修復する。
「う うーん」
「何したの!」
「秘密」
(しー)
一応、野次馬の陰に隠れて見えないように行ったが、目の前の状況に頭が追い付かないのかしばし無言が続く。
「逃げようとしてた…」
「CNのスパイに脅されたんだね」
「う ううう」
さーて、面倒くさいことになったが、俺はすぐに柄山さんの事を思い出して連絡を取る。
どうしてこうなったのかはすでに最初の男から命令を抜き取っているのだが、そこには裏切り者を粛清しようとする組織の情報があった。
【宗助様、柄山様に連絡しておきました、すぐにこちらへ向かうそうです】
【ありがとう】
こういう時いちいちスマホを出さずに連絡できるのは超楽でいい、しかも電話代はロボスキルの為無料になっている。
「ピーポーピーポー」
「ウーウー」
消防車と救急車が同時にやってくる、もちろん道路は封鎖するしかない。
野次馬もそうだが、一気に騒がしさが増してくる。
今日は午前中から大学で講義を聞くはずだったのだが間に合う状態ではなさそうだ。




