エロくは無い
エロくは無い
50センチもあればその辺りの作りもかなり精巧に作られている、胸には一応低反発シリコンを使用してあると確か書かれていた記憶があるし、髪の毛も通常のナイロンではなく絹と綿で作られた新開発素材らしい。
「おいあまりHな妄想はすんなよな」
「え~するだろ普通」
「おまえと一緒にすんなよ」
「エロ本とか無いのか?」
「あ~~それは無い」
実は壊された家に数冊有ったのだが、まさかあれを持ち出すわけには行かないので残念だが廃棄処分のため置いてきた。
たぶん母はすでに知っていたりするのだろう、恋愛小説を書いていてH系の物語を書かないわけは無い、見て見ぬ振りをしてくれているのだと思うが。
その代わり今度母の作品を買って読んでみようとこの時思った。
部屋に添えつけてあるテーブルをセットしお盆に載せられたケーキと紅茶を移す。
「あまり触ってるとケーキやんないぞ」
「あ それは勘弁して」
そこからはUFOの話や自衛隊の話、そして学校の話になった。
「ああそういや、木下さんかわいそうだったな」
「ああお父さんが死んだんだってな」
「うちも家を壊されたんだけどな」
「え~この家か?」
「違うよ前の家だよ」
「そう言えばこのマンション新品みたいだな」
「おととい引っ越して来たばかりだよ」
「なんでペントハウス?」
「近場の物件で空いてるのがここしかなかったと言う話だが」
「へ~でも高いんだろ家賃」
「詳しくは聞いてないからわかんないよ」
実は知っていても話そうとは思わない、言えば又学校で言いふらされてクラスの注目を浴びてしまう、それでなくても現在家を失ったり肉親を失ったりと言う人が多いのだから。
「理数系なら一番は筑波か?それとも東大か?」
「いやもう一つあるじゃないか防衛大が」
日曜日までは理数系の大学など頭の端にも考えておらず、狙っていたのはせいぜいN大が良いところだったのだが。
ロボ化になってからはちょと前までは考えも及ばない学校がどんどん浮かんでくるようになっていた。
完全記憶、頭の中がPCと同じようにデータを記憶して置けるなら、容量にも寄るが最低1万テラは記憶可能ではないかと思われる。
と書いておいて実は俺にも詳しく判らないのが現状だが、リリーに聞いたところまだ増やせると言う話。
それは何故と聞いたところ他人とリンクしたり、ネットのクラウドを利用することも可能だと言う。
ああ確かにPCをネット経由でリンクさせれば容量は無尽蔵と言って良い。
すでに母のロボ化とフィギュアのロボ化で、使おうと思えば2つで3万テラと言う事になる。
その場合、母だけは共有になるのだが、まあそこまではしようと思わない。
「いいな~やっぱ次のリリーが出たら応募してみるかな…」
「5万だぜ」
「バイトでもするかな」
「バイトなんかしたことあんのかよ」
「まだ無い」
「じゃあ最初は郵便局だな」
「え~自転車で運ぶやつだろ」
「と言うかそれしかないだろ、それ以外にあんのか?」
「DEMAE人とか」
「あれはあれで大変だと言うぜ」
高校2年、原付き免許を取ることなどこの時代の高校生、しかも進学校の生徒が考えなどしない行為、どちらかと言えば後2年ぐらいすれば自動車の免許の方が取得する可能性は高いのだが。
すでに殆どの車はAI化が進み、高速道路では自動運転が殆どの車で可能となっている。
当然のことながらバイクは殆どEVになった。
と言う事で自転車には殆どアシスト付が常識となり、郵便配達もさほど大変な業務では無くなったと聞く。
逆に出前の配送の方が大変だと聞いたことがある、スマホで連絡を受け取るのに待ち時間は店外にて待機しなければならず、受け取った料理を時間内に運べればよいのだが、それも住所をちゃんと特定するのは最初かなりてこずる事だろう、地図に慣れなければ収益は中々上がらない。
「時給は郵便配達の方が安いが、DEMAEは数をこなせるようになるまで大変だと聞くぜ」
「知ってたかあの背中に背負うバッグは自前だってさ」
「え?支給されるんじゃないのか?」
「DEMAEはネット完結のバイト登録だろ、バッグ送って辞めますなんてやつも居そうだ」
「ああそう言うやつは若者には居るよな、俺らはまじめだが」
東山が目をそらす
「なんだ東、もしかして転売しようなんて考えてるのか?」
「そんな上手い話あるわけ無いだろ」
「そ そうだよな、俺は別にずるは考えてないぞ」
「というかそれを本当にやると一応詐欺になるぞ」
ケーキをぱくつきながら皮算用をしていると、母から脳内通信が。
【そうちゃん、皆お夕飯は食べるの?】
【ん?ちょっとまって聞いてみる】
「そう言えばおまえら夕飯は?」
「え?良いのか?」
「もう5時か…ゴチになります」
「じゃあ家に連絡しておかないと」
それから友人2名はスマホを出すとそれぞれに家へと連絡を入れ了承を得たようだ。
午後6時、居間にあるテーブルに着くと、そこには豚のしょうが焼きとサラダそして煮物と納豆、そしておしんこなどなど。
おまけに手羽のから揚げが山盛りに積まれていた。
「わ~すげ~」
「いいにおいだ」
そこに妹もやってくる
「こんにちは妹の愛菜で~す」
「あ お こんにちは米田邦夫です」
「東山智広です…」
「あ~こいつら女子に免疫無いから」
「え~嘘、おにいとおんなじ?」
「おい 俺はオタクではあるが女子とちゃんと話せるぞ」
「うそ~」
「ほんとだって現におまえとも話しているだろうが」
「そう言えばそうかも」
本当はそうでもないのだが、というか女子と話をした事はそれほど多くは無いし、実際しゃべる機会も無かったような気がする。
あまりもてようとも思わないし、だからこそ進学校へ進む事ができたのだとも言えなくは無い。
「あら宗ちゃんはインキャじゃないわよ」
「母さんまで」
「だってお父さんの血を受け継いでいるんだから」
そう言われると更に複雑な気きがするが、一度父と母の馴れ初めを聞いてみようと思う宗助だった。
【宗助様お母様とお父様は恋愛結婚ですよ】
【いやそれは知っている、あれだろ取材だっけ】
【それもありますが、声をかけたのはお父様の方ですよ】
【何で知ってる?】
【お母様から伺っています】
そう言えば暇なとき母にリリーと会話する事を許可したのだった、もうこんな事まで話し合っているのかと思うと、少し薄ら寒い気もするが。
(いつの間にか全て知られていそうで隠し事もできやしない)
男には知られたくないことも有るのだから、まあこの母の前では通用するとは思えないが…
「では戴きます」
「いただきます」
「い いただきます」
「いただっきま~す」
友人2名の対人スキルはかなり低く俺以外との会話はたどたどしい。
「米田君は大学は何処に行くの?」
「は はい一応S大を…」
「そうなのね、すごいわね~」
「はい」
俺の母相手に何緊張しているのか、もしかして米田は隠れママオタ?
「愛菜さんは?」
「今中2だよ」
「へ~」
こちらは完璧なロリコンで間違いない。
「愛 東山はロリコンだから、あまり話さないほうがいいぞ」
「お おまえそりゃ無いぞ」
「家の妹に手を出されたら敵わないからな」
「グッ!」
「大丈夫だモン、お兄ちゃんに指図されたくないんだけど」
「そうか、それじゃ隠れオタに襲われても助けてやんないからな」
「え~」
「いやいや襲うなんて絶対無いです~」
一応釘を刺しておかないと、この時期の男子は女子が話しかけてくるだけで好意があると思い込むチェリーボーイが多く居る。
俺も少し前ならそう思っていたときがある、だが母の一言でその考えは変わってきた。
(女の子はね自分の環境を守るために他人に良い顔をすることがあるのよ)
まあそれは女子に限らず男も良いカッコするときや良いやつキャラを作る事はある。
だから受け取る側はあの笑顔と言葉が社交辞令だと事前に知っておかないと、ものすごい勘違いをする事となる。
簡単に違いを思い浮かべてみれば良い、告白と普段の会話は別物だと分かるだろう。




