いつもの朝食
いつもの朝食
リーさん昨晩の事は何も覚えていないと思う、とりあえず握手をして部屋に戻ったという記憶を植え付けておいたから。
だが俺が能力で封印したことで封印された側は、その封印を解くカギを探すような行動に移るらしい。
そう言えばデータの封印は今回が初めてなのか、メアリーさんやRUの工作員の場合はデータの消去や改ざんを主に行った。
だが超能力の発生が本人の資質によるところが大きい場合、消してしまうと何が起こるかわからない。
もし俺の能力が一夜にして使えなくなったとしたらどうなるだろう。
リリーズ達も母や百合ちゃんに付与した能力も消えてしまい、惑星間移動もできなくなってしまうのだ。
リーさんとは違うので能力がなくなったとして、それが参考になるかはわからないのだが。
もちろん彼女がまた他の能力を手に入れる可能性もありえる。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよ~」
「おはよう」
朝7時、眠い目をこすりながら続々と女性陣が1階のリビングへと降りてくる。
すでに母は目玉焼きを8個焼き上げ、ベーコン炒めは既に皿の上だ。
「呂方さん、おはようございます」
「おはよう」
父は挨拶をするとすぐに椅子に座り新聞を広げて視覚を遮断する。
6人もの美女から発せられる色気に耐えるにはこの作業が必須なのだろう。
だから俺の能力はそれを打ち消すための機械化という能力になったのかもしれない。
鋼の心臓を手に入れることができればどんな美女の前でも臆せず行動できるのだから。
「ダダダダ」
「おくれる~」
「コラ そんなに騒がない!」
「え~ だって~」
「あ リーさんおはよう」
「おはようございます」
「あ コラ駄目よ愛菜ちゃん」
なんで急いでいるのかはわからないが、母の作った目玉焼きとベーコンをその小さな口に押し込むとあわただしく家を出ていく愛菜。
「いってきまーす」
「お弁当は!」
「いらなーい」
「バタン」
「まったく…」
この時間に学校へと出かけるのはかなり早い。
【宗助様、愛菜様は朝練です】
【朝練の初日?】
【その通りです】
どこの学校も9時には授業が始まる、現在時間は朝7時だ。
どんなに急いでも8時 いや7時40分に着く可能性に掛けたのか。
【多分乗り換えせずに途中から走って登校するのではないでしょうか】
【そうなるな】
朝のラッシュを避けていくつか手前の駅で下車し、そこからは脚力のみで学校へとひた走る。
【あの子大丈夫かしら】
【多分大丈夫だよ、一応待機してたリリーズを付けたから】
【ありがとう宗ちゃん】
そんなことを話しているうちにテーブルの上には朝食が並んでいく。
「カサカサ」
「父さんできたよ」
「おーそうか、ではいただきます」
「いだきます」
「いただきまーす」
愛菜が先に登校したため、残る美女は5名。
少し静かに始まった朝食の風景だが、リーさんは割とおとなしく食事をしている。
どこかのビデオを見たときに知った、あちらの国では食事の風景がかなりにぎやかだと。
「気になりますか?私の家ではみんな静かに食事します」
「そうなんだ」
「私の母国でもいくつかの種族に分かれます、それに私の先祖には日本の血が入っています」
昨晩脳内データを覗いてみたところ、遠い先祖に日本人がいたらしい。
アジア人同士助け合うのが当たり前だった時代の話。
「気にしないで、うちはどんな国でも差別はしないから」
【宇宙人でもね】
【そうだね】
「ありがとうございます」
食事が終わるとすぐに父が支度を終えて本来の勤め先である研究所へと向かった、リーさんは本日転移装置の最終調整に立ち会うらしい。
要するに行く場所は別々らしい。
「そうなんだ」
「私はもう少し呂方所長に師事して学びたいけど、本来の研究は転移装置なので残念です」
「へー」
「じゃあ途中までは一緒ね」
2駅進んで乗り換えないと惑星間転移装置が置かれている研究所にはたどり着けない。
俺も百合ちゃんも、そしてモリソン姉妹もさらに先の駅へと乗り継ぐので、途中でお別れということになるのだが。




