家に来た
家に来た
ようやく面倒な人たちから解放された宗助、だがその晩またもや厄介な人物が宗助達が住む家に訪れる。
「ただいま~」
「お帰り」
「帰ってたんだ」
「うん、そっちは」
「久しぶりに委員長と長話しちゃった」
「委員長どうだった?」
「元気だったよ、勉強で忙しいって」
「そうなんだ」
そこに父からの電話が入る、どうやら誰か連れてくるらしい。
「はい、それじゃ連れてくるのね」
【どうしたの?】
【珍しいわ、研究所から一人お客さんを連れてくるんですって】
【それ、もしかしたらCNのリーさんかな?】
【そんなこと言ってた、CNって、スパイ?】
【どうだろう、今のところスパイというより、スーパー研究員かな…】
【え?】
【この人、色気よりも知識がほかの人と比べられないぐらい豊富なんだよね】
【そうなんだ…でもきれいなのよね】
【あ~ 父さんは大丈夫だよ、ちゃんと見張っているから】
【宗ちゃんありがと~】
【俺にも関係があるからね】
夜8時を過ぎて、女の園と言える呂方・木下家へとスパイの疑いがある人物がやってくる。
本来ならば彼女(李謝恩)も家に行くより既成事実を作って虜にしようとする方が手っ取り早いと思うのだが、さすがに頭がいい人は考え方が違う。
それともそういう能力があるのか、だとしてもいい度胸だというしかない。
「ただいま~」
「おかえりなさい」
「さ はいって」
「おじゃまします」
「こちらが中国からうちの研究室に来たリーさん」
「はじめましてリーシャオンと申します、奥さまですね、研究所ではお世話になっています」
【なるほど、色気だけじゃないわね】
「さ 入って」
この時間なので食事というより、酒の肴に近い料理。
父はそれほどたくさん食べる方ではない、遅いときはカップラーメンや軽食で済ませてしまうことが多い。
だから父の帰りが遅いときなどは、野菜炒めや卵炒めを作って栄養のバランスをとることが多い。
「え~と、なんで女の子ばかり?」
「父さん言ってないの?」
「自分のこと以外は話すの難しいんだよな~」
「初めまして、木下百合奈です」
「初めまして」
「私は国生アイリーンよ」
「パパさんの同僚なんだ、美人だね」
「こら、変なこと言わないの」
「私は呂方愛菜、サッカー少女よ」
「なんだよ、その挨拶」
「え~今流行ってるんだよ、自己紹介」
まるでスター登場といったようにフリまで付けてあいさつする。
そして最後は。
「国生エミリアで~す、ナイスチューミーチュー」
「彼女らは分けが有って同居しているんだ」
「そうなのですか、楽しそうですね」
どこが楽しいのかわからない、俺にとってこの状況は面倒としか感じていない。
今まで何事もなく暮らしているのが不思議であると、誰もがそう思うだろう。
多分俺のことは女性に興味がない人だと思われていてもおかしくはない。
たまにエミリアがやらかしてくれるが、俺のスルーする姿を見てそれ以降は過激な行動をすることがなくなった。
多分見る人が違えば、相当なトラウマが生まれてしまうだろう、なにせわざとスッポンポンで目の前に現れるのだから。
「それでリーさんは?」
「今夜は泊めてあげてくれないか?」
【宗ちゃんどう思う?】
【大丈夫だよ、いざとなったらロボ化で精神誘導するから】
【わかったわ、宗ちゃんに任せるわね】
「そうなの、じゃあお客様用の部屋を用意するわね」
特に変わったことなどない、女性が多いこの家で一人増えたところで何の変化もないはずだったが。
密命を帯びているCNのスパイは夜になるとその行動を活発化させる。
1階の開いている部屋にベッドメイクし、今晩はそこに泊まってもらうことにした。
当然のことだが彼女が何もしない訳がない、それは分かっている。
いたるところに仕掛けてある仮想カメラを使って注意深く彼女の動向を調べることになった。
「トイレはどこでしょ~」リー
わざと口に出すというのはどこかにマイクやカメラが仕掛けてあることを想定している。
多分狙いは父の書斎ではないかと思われる。
1階には3つの小部屋があり、その一つは父の書斎だ。
「カチャ」
(この部屋ね)
「トントン」
「何?」
「そこはトイレじゃないですよ」
「おー間違えました」
(油断も隙もありゃしない)
とりあえず1階のトイレに案内し、戻ってくると…
(やっぱり)
(みんな何してるの?)
(えーパパが初めて女性を連れて来たんだよ~)
(しかも美人でインテリ)
(母さんは知ってるの)
【知ってるわよ】
【そうなんだ】
(みんなばれないうちに寝た方がいいよ)
(はーい)
アイリーンも百合ちゃんも階段の踊り場の陰に隠れて成り行きを見ていた。
まあ最初にCNから派遣されているということが分かっているから、しかも美女であれば気になってしまうのは仕方がないだろう。
そしてトイレから戻るとなぜか俺の部屋へとやってくる。
「コンコン」
「はい」
「お水が飲みたいのです」
「今行きます」
冷蔵庫からペットボトルを取りコップに注ぐ。
「ゴクゴク フー」
「相当喉が渇いていたんだね」
「日本の水は気をつけろと言われました」
「そうなんだ、ずいぶん古いデータだな…」
「そういえばあなたは大学生、しかも東教大学に通っているのでしたよね」
「そうですよ」
「私はこの仕事終わったらそこに留学するかもしれません」
「そうなんだ」
「あなたとはいいお友達になれそうです」
何を考えているのかはわからない、だがそれだけ優秀な人ならば国費を使って留学することは難しくはない。
そして彼女が手を差し伸べる。
【精神攻撃です】
【マジか!】
【スキルロボ】
「パタッ」
警戒はしていたが、久しぶりの精神攻撃、超能力を使用して眠ってもらうことに。
精神攻撃と言ってもいくつかの種類分類がある、相手の精神を破壊してしまう攻撃や。
相手を操るような精神操作系の能力、そして相手の能力や思考を知る能力など。
現在宗助の知っている精神汚染能力だけでも5つ以上ある。




