撮影は一休み
撮影は一休み
さすがにこのいで立ちで日傘をさし、秘書を横に沿えて見学する人物を見れば誰でもその異様さに気が付く。
そうなれば周りだけでなく、いやでも撮影に集中できなくなってしまうだろう。
「おばあさまどうしてこちらへ?」
「近くに寄ったから見学しに来たわ」
「…」
「良いじゃない少しぐらい、今日は宗助ちゃんも一緒だし」
「こんにちは」
「ごめんなさいね、無理やり」
「いえいえ、こういう仕事場、見るの初めてなので勉強になります」
「あ 宗助君! なんでここに?」
「こちらのお姉さまに無理やり誘われてね」
「おね… 無理やりではないわよ」
上げて置いて下げる、そうするとこうなる。
「どう?順調?」
「順調だけど、何か?」
「そんな怖い顔しないでよ、折角仲間を連れて来たのに」
「仲間ではなくお友達ですね」
「うふふ」
「全く…」
「ああ そう言えばアイリーンは初めてだったよね」
「松田財閥、松田竜太郎の奥さま シオン様です、そして私設秘書の地頭アリスと申しますよろしくお願いいたします」
そう言って名刺を差し出す地頭さん。
よく見るとMATUDAグループ・MATUDA総合警備会社・シオン会、等々と印刷されている。
「松田ってあの?」
「裏からこの国を支配していると言う噂のあるね」
「…」
「支配じゃなく使役?」
「詩音様、使役ではなく支配でもありません指導です」
「ごめんあそばせ、そうそう指導的な立場ですわ」
「そうなんだ、初めまして国生アイリーンと申します」
「あなたはハーフなのね、カワイイわ」
「はい父がイギリス人です」
「お父様にもよろしくね」
「あ はい」
(多分知り合いだと思うよ)
UKの通商代表や外務省関係の仕事をしているモリソンさんが日本のドンと顔合わせしていない訳がない。
「まだ仕事の続きがあるのよね、ここで退散するわ」
「ではまた」地頭
「じゃあまたね」
「見に来てくれてありがとう」
(今日の話は又後で)
(分かった)
まあちょっと立ち寄っただけだが、なんというか遠慮しないと言うか。
人の事は言えないがシオンさんが勝手にしゃべると、誤解を招くような話をしてしまうらしい。
地頭さんが秘書でなければどうなることやら。
「中々良い子ね、宗ちゃんの彼女は」
「お友達ですけどね」
「ふーん」
「車を回してまいります」
「お願いね」
先ほど取り出した傘や椅子は何処に行ったのだろう、地頭さんの手にはそれらが一つも見当たらない。
「うちの地頭は優秀でしょ」
「能力者だったんですね」
「あの子は秘書としての能力はSクラスだけどそれ以外にも特殊な超能力があるのよ」
異次元ポケットと言いたいところだが、違う事は分かっている。
多分だが縮小能力と拡大能力だろう。
色んな道具を小さくしたまま持ち運こび、必要な時に取り出しては元に戻す。
しかもその素早さが人の目では追えないので、まるでマジックを見ているような錯覚に陥る。
「お待たせしました」
もしかして車も縮小したのかと思ったがどうやら縮小拡大には限度があるようだ。
「どうぞ」
「駅まで送るわ」
「助かります」
車の中でもう一度頼まれた、シオンさんの頼み事 それは超能力の認定係。
「あなたに頼めば誰が何をすればいいのか、何処に配属すればいいのか早くわかるでしょ」
「本人に了解が取れるなら構いませんが、普通簡単に自分の能力を教えたりしないでしょう」
「あら、うちのグループに就職するのよ、能力開示は当然よ」
「そう言う契約ですかなるほど、ならば断る人はいませんね」
財閥のトップにいる予知能力者にとって、どんな能力者をどこに配属すればいいのか。
いくら能力者の卵を見つけても、どのような超能力を持っているのかを知るのは難しい。
その判別を俺にして欲しいと言った所か、もしかしてシオンさんに俺の能力は殆ど知られてしまっているらしい。
わざとそのあたりの事を言ってこない、変に勘繰られて俺に逃げられても困ると言った所か。
一応了承はしておいたが、いつどこで誰をどんなふうに査定するのかまでは聞かされていない。
「今度日程が決まったら知らせるわ」
この時期だから中途採用の可能性が高いが、宇宙戦艦の襲来以降超能力者がその能力を発現する事例が増えてきている。
今の所それほど凶悪な事件は起きていない、せいぜい不可思議な事件としてTVをにぎわせているだけだが。
USAやUKそしてEU各国でもすでに超能力者を割り出すプロジェクトは始まっている。




