スリーピングファーム(人口管理都市)
スリーピングファーム(人口管理都市)
そこは円形の建物が数百と並んだ、まるで卵が立ち並んでいる様に見える場所。
一つの建物が幅100メートル近くの半円状になっている。
一行はその中へと入って行くと、中には数百のカプセル状の機械が並んでいる。
《こちらがスリーピングポッドになります、一つの建物に1000人が収容されています》
《メディカルポッドとは違うの?》
《形と大きさはほぼ同じです、ここの地区では人口管理の為眠りについてもらう住人専用になります》
《確かバイオハザードや疫病で人工が減るとここから補充するんだよね》
《はい》
《医療ポッドのある場所は?》
《では次の建物へ参りましょう》
卵状の建物には外部に特徴がある、入口とみられる扉の上部に模様が書かれている。
卵の形、コールドスリープには青い色で卵が書かれ、医療ポッドのある建て物の入口には
赤い色で卵が書かれている。
医療用のポッドは建物の中に100機用意されているが、一度に100人が収容可能と言うだけで。
現在それを全部稼働させることなど無い。
《こちらです》
《いらっしゃいませ》医療ポッド管理官
《こんにちは》
《今怪我をした仲間が治療を受けていますね》
《片足…》
映像で見せられた医療ポッドに入っている市民はどうやら地表探査に出てけがを負ったらしい。
何かの機械に挟まれたのか、映像ではその時の様子が直接テレパシーで入って来る。
そして現在その治療が行われているのだが、それは今までに見たこともない光景だった。
《片足が無くても元に戻せるのね》
《はい全ての設計図が機械に入力してあるので脳以外は全て修復可能になります》
《改造やバージョンアップは?》
《その場合かなり負担が出ると思います》
《確か脳みそだけ移植もできるのよね》
《移植と言うより書き換えですね、そのためには人体を培養してから記憶を移植すると言う形になります》
《その場合元の体は?》
《予備のパーツとして保存も可能ですが、一定の時間が過ぎてしまった生体組織は再利用すると逆に不具合が出てしまうのでお勧めしませんね》
《ああ そうよね》
《実体験されますか?》
《え!》
《大統領》
《か 考えておくわ》
この星ではそれが可能だ、但し若返ることになればそれはそれで面倒な制約が課せられるだろう。
惑星RIZのライズ族は300歳までは生きる、その技術で地球人を改造したのなら。
同じく300歳まで生きる事が可能だ、だがその場合地球ではいつまでも若く死なない人間と言うレッテルを張られてしまう。
それはいうなれば化け物に認定されると言う事に他ならない、そう言った人物が沢山出てくるのなら話は別だ。
今の地球ではそれを黙って見ている人などいない、金が有れば自分自身が若さを手に入れようとするし。
金が無い人は人類に対しての冒涜だと叫ぶだろう、特に宗教の教えを強く信じている人達からはかなり批判される。
《あの設計図の完成品がここにあるのね》
《そうですね、バージョンを変える事で何通りにも使える魔法のポッドです》
《そうか、やはり引退してからの方が良さそうね》
どうやら大統領は今すぐと言うより、今の地位を引退した後の方が良いと感じたようだ。
その道筋が分かっただけでも未来に希望が広がって来る。
《所で蓮華さんは若がえりたくないの?》
《その件でしたら私には必要ないかと…》
どうやら本当の年齢を話してはいないらしい、まあ話すともっと大変なことになるのだが。
《そうよね、もし自分の能力に関する事だったら話せないわよね》
《ニコリ》
(ん?もしかして歳を取らない能力者なの?)
《そうともいえますが違うともいえますわ》蓮華
さすが嘘を見抜く能力者、簡単に蓮華さんの超能力が何かを一言で感じ取ってしまった。
蓮華さんもそこを否定したり言い訳したりはしない様子。
(宗助君、うまくごまかしてよね)
《あはは》
(言い訳すると墓穴を掘るような気がするわ)
長生きしていると、相手が何を考え何をしたいのかが事前に分かってしまう事が有る。
それは経験と言うやつで、超能力とはまた違う能力なのだが。
《次は軍港へ移動しましょう》
スリーピングポッドとメディカルポッド、そしてボーンポッドと言う3種のポッドを見て回った。
一番興味があったのはメディカルポッドの方かもしれないが、もう一つの方は既にUSAでも研究が進められているようだ。
宗助がUSAに渡した人口子宮もこの装置の別バージョンと言って良い。
精子と卵子を生きたまま保管し、人口の増減を管理する。
その装置は2歳までカプセルで育てる事が可能で、そこから先は別の施設で教育して行く。
テレパシーを使用する彼らには経験以外は全て共有可能になるので、座学はほぼ必要ないと言うのが地球人と違う所だろう。




