戦わずして…
戦わずして…
一人を残し2隻の宇宙戦艦は帰還してもらった、シンカーの言った通りだった。
敵がこちらを侮っていると言うのが一番の勝因だが、次が有るとしたらこんなに簡単にはいかないだろう。
【どこへ連れて行く?】
【惑星RIZだよ】
【まさか自死も出来なくなるとは…】
敵につかまった時の対処方法、ほとんどの場合地球では降伏すると言うのが一般的だが。
戦国時代には自死用の毒薬を仕込んだり、お互いに首を切り合ったりというそんな史述もある。
惑星YAKのヤコブ族達はどうやら超能力で脳を破壊すると言う方法が一般的らしい。
まあそこまでに至る前にはいくつかの段階があるそうだが、俺のロボ化を使えば自殺などという方法は絶対できなくなる。
ロボ化によって脳内の倫理的なエリアに地球のデータを移植したならば、小さなプライドなどで死ぬことなどほとんど考えられなくなる。
『シンカー、帰還するぞ』
『了解』
【リリーズも集合】
【はい主】アーバン
【簡単でしたね】ボルドー
【もっとガツンと戦うのかと…】ルミナス
【え~怖いのは嫌ですよ~】クリスタル
宇宙空間から一度惑星RIZの大気圏内へと移動し、地上もしくは地下の転移先を探す。
【やはり転移先は軍港がよさそうだな】
【はい、先ほどの小型艇が格納されていた5番ドッグの第1格納庫であれば3機目も収納可能です】
【じゃあそこまで転移…と言いたい所だがその前にエネルギー補給が先だな】
俺は隊長機のガイアギア内で携帯食料を取り出し咀嚼する、もちろん口の周りはスキルロボで隙間を作るのは忘れない。
【なんだ?それは】
【地球の携帯食料だ、食べてみるか?】
【いや、そんなものはいらぬ】
(もしかしてこいつ食い物に興味があるのか?)
目の前で携帯食料を3つほど取り出し咀嚼する、そうしないとガイアギア2体と4体のリリーズを軍港の格納庫まで瞬間移動することが難しい。
残る携帯食はこれで5つほど、次に来るときは予期せぬアクシデントまで想定して、現在の倍以上携帯食を買っておかないと安心して宇宙旅行もできやしない。
【よし燃料補給完了、移動する】
「シュン」
軍港の格納庫で各種除去装置を展開しウィルスや有害物質などを除去する。
宇宙空間からの移動と言う事で危険な物質が付着している可能性は少ないが、機体に付着していた場合なども考えられるので油断は禁物だ。
【ついたぞ、降りてくれ】
【搭乗解除】
「ニュニュニュ」
「お前が裏切り者か」
「姫様なんだって?ここじゃ主の奴隷、いや捕虜だっけ」
「くそ」
「そんな怖い顔しなさんな、綺麗な顔が台無しだぜ」
「貴様に言われたくない」
「こわ!」
「とりあえず宇宙服は脱いで」
「この中は裸なのだが」
「じゃあ頭だけ脱いでくれ」
「それからテレパシー機能を付与するから尋ねられたら答えてくれ」
宇宙服と言ってもボディースーツに近く、下着などと言う概念はないらしい。
そして一番の問題、宗助だからヤコブ語もライズ語も話すことが可能だが、惑星RIZではテレパシーでの意思疎通が一番楽な方法だ、そうしないと大統領達との会話も通訳が必要になる。
《アマリアいるか?》
《主様、今第六地区の食料生産都市にいます》
ちなみに彼らは惑星RIZの転移装置を利用できない、その理由は身長がでかいから。
と言う事で俺が直接向こうへと連れて行くことになる。
(また食べないとダメか…)
《アマリアこっちからシンカーとザロスを連れて行くから少し転移ゾーンの確保を広い目で頼む》
《わお、姫様じゃん》
《そういう事だ》
テレパシー通信で映像まで見せるとすぐに事の次第が分かったようだ、アマリアの目に仕掛けたロボスキルのカメラモードで確認する。
「シュン」
《知っているのか?》
《ゴリアン神王13番目の姫君、しかも戦神と言う位を持つのはザロス姫だけですからね》
《もしかして着替え?》
《ああ、少しサイズが小さいかもしれないけど、普段着なら何とかなると思ってね》
《はい今出します》
亜空間収納に入れてきた普段着、それは大きな布にしか見えないが。
古代ギリシャ人はその布を体に巻いて着ていたと歴史では記されている。
俺達地球人が使う布だとかなり小さいが、ヤコブ族のアマリアが持っている布であればザロスに着せても何とかなると思ったからだ。
なぜ着変えるかと言うと彼らのボディースーツガイアギアを降りると少しネチャネチャした物質が付着しており。
そのままだと独特な臭いまでしてくるので、着替えず放っておくわけにはいかないからだ。
2人はその場でスーツを脱ぎ、約15メートルはある幅の広い布を纏っていく。
筋肉隆々としたからだが布で覆われると、顔だけを見ればちゃんと女性だと判別することが可能になる。
《アーロン、今どこを案内している?》
《現在は第3区画の教育都市にいます》
《全員こちらへ来てくれ》
《分かりました》
こちらから行くより都市間転移装置を使用してこちらへ移動してもらった方が早い。
「シュン」
《Mrロホウが?》
《はいお話ししたい事が有るそうです》アーロン
待つこと数分、食糧管理都市や教育都市を回り、惑星RIZの現在状況の説明を受けていた地球からの訪問者。
見ること全て未知の世界だが、視覚的な情報はそれほど地球とかけ離れていない。
地球ならばインフラ整備するのに下地から順番に加工して行くのだが、ライズ族は超能力と機械で行っていく。
道は道路ではなくただの通路、足で歩くことがあまり無かった彼ら、飛行する為の幅を確保できればそこを道として使用していた。
現在は足の筋肉を鍛えるため、よく使う通りだけ表面にクッション加工を施している。
地下の都市には天候による変化がないので傘もいらないし風や太陽による劣化も少ない。
但し、急ぐ時はやはり超能力を使用して空中を移動している。
《お待たせしました》
《ソービッグ》
《こちらは?》
《ああ、ヤコブ族と一応話を付けてきた》
《さすが主》
《何の話?》大統領
そう言えば大統領にはヤコブ族の宇宙戦艦が攻めてきたことは話していなかった。
《先ほどヤコブ族の宇宙戦艦が襲来したので対処してきました》
《え?確かヤコブ族が攻めて来るのをどうするか心配していたわよね》
《はい、ですがもう大丈夫です》
《もう大丈夫って…》
《大統領落ち着いて》
《一体どうやって?》
全部説明すると理解に苦しむだろう、それに能力の話もしなければならない。
まあ敵のコンピューターにハッキングを仕掛けて、お帰り願うと言う形は地球の時に立証している。
そこを話しても問題は無いはず、問題なのは目の前にいるヤコブ族のアマゾネス。
彼女が何故おとなしく従っているのかという事だろう。
《あなたは捕虜になったと言う事?》
《なるほどテレパシーと言うのは便利だな》
《種族の違う者が交流するのに一番面倒なのが言葉の壁だからな》
《まあ良い、私は奴隷と同じ負けたのだからな》
《奴隷?》
《殺してくれと言ったのだがな…》
(嘘は言っていない、それに敵対心が折れてしまっているわ)
《ヤコブ族は戦いにおいて負けは許されないようです》
《そうなの?》
《それで私はどうすればいいんだ?》ザロス
一応先に捕虜となったシンカーとアマリアは食糧管理都市で働いてもらっている。
他の都市では彼らにできる仕事が無いのと、デスクワークの場合彼らのサイズで行動できる建物が無い。
通路サイズも食糧管理都市であれば作業用ロボットを使用している関係上、ヤコブ族に仕事を割り振ってもさほど問題は無いと感じたからだ。




