進路指導
進路指導
登校日、今日は授業は無いと言う話だが、それじゃ何の為?と言う感じになる生徒は俺も含めて数人いるだろう。
勿論分かっていることがある、それはこの大惨事の最中に、心のケアと生徒の進路をもう一度確認する事だ。
俺のように家を失ったり家族を失ったりしていたら、進学なんて出来なくなる子供もいるはず。
そう考えると俺の家はラッキーなんてものじゃない、親は金持ち家族はスキルのおかげで死ななくて済んだし、恵まれすぎていると言って良い。
教室に入ると俺の席はちゃんと残っていた、どこかの漫画だと外に机が出されていたりして、いじめが有ったりなどということがよく題材の中に書かれているが、さすがに高校にまでなると受験を控えた2年3年でそんな事をやっている馬鹿はいないと言って良い。
但しそれは先日までともいえるが、今回の異星人襲撃で中には高校を辞めてしまう生徒もいるはずだからだ。
「それじゃ席に着いたか?これからホームルームを始める、初めに雄太これ配ってくれ」
2年1組の担任、粕谷当矢は一番前の席に座る学級委員長の是坂雄太にプリントを渡す。
「配り終わったら注目、このプリントにこれから先の事を書き込んでくれ、先のUFO襲撃で内の学校の生徒の中にも数人犠牲者が出ている、今回の事件で親御さんたちにもかなりの被害が出ていると聞いている、但し最初に言っておく勉学に掛かるお金はこれから政治判断にはなるが支援金が出るはずだ、だから学校を辞めるという状況は考えなくて良い、それでも家庭状況により困難な生徒もいるだろう、遠慮なく先生に相談してくれ」
少し教室内がざわめく、あちらこちらから自分達の家庭状況の話しが漏れ聞こえてくる。
「ああ そう言えば呂方、おまえ怪我は治ったのか?」
「はい一応、怪我もたいした事無かったようです」
「ほんとか~無理するなよ」
「先生!」木下百合奈
「なんだ?」
「私…」
木下百合奈は何の特徴も無い普通の生徒だが、よく見ると可愛い顔をしているしスタイルも良いのを俺は知っている、メガネのせいで可愛さが隠されているのが難点だ。
その彼女が次の瞬間泣き出した。
「どうした?泣いてないで、言って見ろなんでもいい力になるぞ」
「お父さんがお父さんが…死んじゃったんですグスッグスッ」
「そうかこの場では他の仲間もいる、詳しい事はホームルームが終ったら相談室に来なさい」
「他の皆も何でも良い話したいことがあったら相談に来い」
「それから今回うちの学校でも臨時宿泊所を作る事にした、家がなくなった生徒や親の都合で東京から離れなくてはならない場合は学校が契約した宿泊所から通うことが出来る、利用したい生徒は申し出てくれ」
「それと順序が逆になったが臨時の相談室が職員室横に用意されているオープンスペースになるが、そこに先生達が常駐するから終ったら相談しに来てくれ」
プリントには今後の順路指導に必要な進学の意思と家庭環境の変化を書き込む欄が。
「プリントは来週以降の登校日に集める、特に変化のない場合は白紙でもかまわないが、できるだけ書いてくれ自分の精神的な変化でも良いぞ、怖くて寝れなくなったとかでもな」
「書ける者は今日書いて出してもかまわないが、一応親御さんと相談してから出すようにな」
「それじゃホームルームを終る」
そう言うと先生は木下さんを呼び1階の相談室へと教室を後にした。
「かわいそうに」
「木下って父子家庭じゃなかったか?」
「マジ、じゃあ両親共にいなくなったってことか」
教室内は担任が去ると同時に少しざわつくが、それぞれに思うところがあるのだろう。
少なくとも被害を被った生徒はこの時点で全体の1割以上はいると予想される。
おれ自身もその一人なわけで、人ごとではないのだから。
「宗ちゃんは進路どうすんだ?」
「俺はエレクトロニクス系の理工系大学に進むよ」
「そうか、俺は文系だから別々だな」
「俺も文系だぞ」
そこに学内放送が掛かり、俺の名前が呼び出された。
ピンポロンパンポン
【呂方宗助君 呂方宗助君 至急職員室へおいで下さい】
ピンポロンパンポン
「お 宗ちゃんお呼びがかかったが何かしたのか?」ニヤ
「何もしてね~よ」
俺はプリントをかばんに詰め込むと、席を立ちそのまま教室を後にした。




