父は逃げるのが上手かった
父は逃げるのが上手かった
そこは合同研究所であり各国の技術者も総勢10人以上が参加している、特にCNやK国。
そしてI国やアジア各国の研究者が続々と参加を表明している。
宗助の父が開発した小型のエネルギー蓄電装置、出力を何倍も底上げできるのに使用する電力は半分以下に抑えると言うスーパーブースター。
さらに特殊な金属を使用した熱伝導システム等々、そこには現在の科学力を超えるテクノロジーが含まれている。
「Mr呂方この数値でよろしいか?」
「はい、こちらのデータがここに記録されます」
何故か半分以上が女性と言う構成で参加表明したCNの研究員、いくら差別が無くなってきたとはいえ女性研究員の登用が多い様な気がするがそれは気のせいか。
既にCNの女性工作員レイランはその役割を終えているが、現在は別な工作員がここに潜入している。
CNは5人の研究員の内3人の女性を参加させていた、しかもその中の一人はとびぬけていた。
「そろそろ休憩にしましょう」呂方
「はい」
各国の研究員は、2から3人が普通だがCNだけは5人もの研究員、それが何を意味しているのか明確な理由は直接聞いてみるしかない。
だがその行動を見ればおのずと答えはでる、呂方敦之にすり寄るのが李謝恩と言うCNの工作員(宝花)のメンバー。
まるでモデルのようなスタイルをしているが、CNでも一番の北都大学を首席で卒業している。
それが事実かどうかは分からないが日本語も英語もペラペラなだけではなく、科学と物理にも精通しているのだから参加者の個人データには嘘が無いと思える。
逆に彼女以外の研究員はエレクトロニクスに対する精通度が普通なのが余計怪しい、一人だけ優秀だと思わせる作戦なのではないかとも思えなくないが。
昼休みとなり昼食を取る為、研究所から歩いて数分の食堂へと足を運ぶ。
「カツ丼定食を一つ」敦之
「私はマーボ豆腐B定食で」リ
「お邪魔します」
そう言いながらトレーを棚から取り敦之の横に並ぶ、身長は175以上ありそうだが、研究所内は白い白衣を着るのが日本での習わしであり、呂方も白衣のおかげで割と助かっていたりする。
日本の研究員を鹵獲しようと画策している各国の工作員、白衣の下はやや露出度の高い服が多かった。
配膳を受け取ると、敦之についてきて当然のように隣へと座る。
「お隣良いですか?」
「あ うん どうぞ」
「博士はなんでここに?」
「あ ああ僕は蓄電池システムの研究で呼ばれたんだよ、いつの間にかそのほかのシステムも関わってしまっているけどね」
「そうなのですか?てっきり惑星間転移装置の発明者ではと思っていました」
「この装置の出どころはUSAと言う話だよ」
「それは聞いていますが蓄電システムは違いますよね」
「本来必要な電力を得るために必要な装置を小型化するのが元々僕の研究だったからね」
「そうだったのですね」
(やはりこの男の研究だわ)
「君もかなり研究してきたんでしょう、その年でここまで詳しい人を初めて見たよ」
「おほめ頂きありがとうございます」ニコ!
ここから徐々に親しくなって、さらに帰宅の途中で襲う、いや誘うと言った方が良いのだが。
ちなみに彼女が参加してからもうすぐ1か月が経とうとしている、親睦を図るためと企画された夜のお誘いをほぼ全て断っている敦之。
断ると言うより逃げているだけだが、さすがに美女が迫ると何故敦之が逃げるのか。
そして肌を寄せるとすぐに避けるのか、彼女もそのぐらいは勘づいていたりする。
女性恐怖症、その時点で色気を使って鹵獲するのは難しいと言える。
だが知識の分野で壁を崩して行けばどうなるだろうか?CNの工作員リー(李謝恩)は惑星間転移装置のデータ取得だけでなく。
その他の最先端技術全部を盗むと言う指令を帯びて潜入していた。
だからそれぐらいの知識が無いと研究員として派遣された任務が務まらない、彼女はいくつもの特殊任務をこなすCNのスーパースパイだった。
まずは呂方敦之からの信頼を獲得する事、鹵獲と言う路線からすぐに作戦を変更した。
USAに潜入していたRUのスパイみたいなデータ持ち去り、などと言う簡単な仕事ではなく全てを盗むのが彼女に課せられた仕事だった。
【さすがに今度のスパイは強敵だな…】
【主、どうします?】キャンディ
【様子を見てみよう、手を出さないならこちらも泳がせておくしかないし、本当に研究のために来ているかもしれないからね】
【了解です】
姿を隠して敦之を警護しているカラフル戦隊リリーズのキャンディブルー、設定は17歳の高校生、クロームシルバーと同じ歳と言う事もあり、仲の良い友人と言うアニメの設定。
宗助のロボ化によって現在は父(敦之)の仕事を邪魔するスパイの排除を任されている。
現在CNから派遣されている他の工作員はそれほど活動していない、それは情報開示が緩やかだが進んできたためだ。
無理に情報を得ようと動けば逆に疑われて外されると言う事になり、仕事を降ろされるのは彼らにとっても死活問題。
それは本国に置いて未来を絶たれるのと同じ事だった、だから単に情報を盗むと言うより得た情報をCN側でも組み立て分析した方が確実だと言う事になる。
エネルギーや輸送問題など、どの国でも常に議題に上がる、国家の戦略としてこの2つは常に上位にある。
すでに惑星間転移装置は法律の整備や国の間での取り決めを煮詰めるだけとなっている。




