メディロン
メディロン
惑星YAK181からいつの間にか持ち帰ってしまった医療用とみられる生体ドローン。
治療用と言う目的から危険性は無いと思っていたのだが、その判断の甘さから厄介な出来事へと発展しなければよいのだが。
【御免、百合ちゃん今日先に帰るよ】
【どうしたの?】
【アクシデントだ】
【惑星絡み?】
【その通り】
【いいわ、こっちは何とかやっておくから、後で詳しいこと教えてね】
【うん、有難う】
短縮授業が終わり午後2時、いつもより早く下校する。
友人にも断りを入れて、やや小走り気味に学校を後にする。
この時間帯ではどこかで瞬間移動すると言う分けにもいかない、普通に電車に乗り込み家路を急ぐ。
【宗助様!】
【どうした?】
【また変化しました!】
映像が流れて来る、5つほどに分離したメディロン、それがいつの間にか棚に飾ってあったフィギュアに似た姿に変化している。
【どうしてこうなった!】
大きさは小さいままだが姿はフィギュアの様、そして背中には羽が生えているような形になり。
部屋の中をふわふわと舞っている。
俺は近くのスーパーへと入りトイレへ駆け込む、この時間学生がスーパーのトイレへ駆け込むのは、怪しいと思うより我慢していたのねと思ってもらえることだろう。
但しそこから出て来る俺の姿は無くなっているのに気付く人がいたら…、まあそんな事はどうでもいい。
「シュン」
一応ドアのカギは開けたままだから面倒はかけていないつもりだ。
【マジ!】
【そうだ鳥獣テレパシー】
アンジェラから入手したスキル鳥獣テレパシー、それはいわゆる超音波解析システムの様な物。
翼人族と意思疎通ができるのならば彼らの使用していたメディロンにも俺の意思を伝える事が可能になるはず。
《こんにちは》
「キュキュ」
《なに?》
《おー通じた》
《ここはどこ?》
《ここは地球と言う星の俺達が住んでいる家だよ》
《家?地球?お腹空いた》
《ヤッパリ食料が必要なのか、そうだよな》
【宗助様、まずは水が必要かと】
【分かった】
この生物、接触するとその相手に合わせて自分の形態を変えるらしい、そして相互協力関係を築くため、依存する生物に適した回復系能力を発現させると言う。
まるで俺の能力の縮小版の様だが、攻撃するような能力を発現させることは無いらしい。
台所の戸棚から器を取り出し水を注ぐとテーブルの上に置く、するとメディロンがそこに飛んできて触手(手)を水面へと漬ける。
《おいしい》
【そうちゃん】
「そうちゃん」
「かあさん」
「バタン」
どうやら母よりも俺の方が先に帰宅したらしい。
「ガサガサ」
「食事の材料選んでいたら時間食っちゃったわ、それで問題って?」
「目の前にいるよ」
半分、いやまるで全体がガラス細工のようなフィギュアに見える、大きさは水分を取った事で少し大きくなったが。
基本この生物は空を飛んで移動するらしいのである程度の大きさで拡大化するのは止めるらしい。
《お腹いっぱい》
「ふわふわ」
《怪我無い?病気無い?》
《ああ大丈夫だよ、君はそれが普通の形なの?》
《私、浮かぶ 移動する、食べる アクアお腹ヘル、分離する》
要するに食料が水分であり、足りなくなると空気中の水分を効率よく得る為小さく分離すると言う事だ。
《何かして欲しい事は?》
《私、ない》
【この子も宇宙人なの?】
【うん、惑星YAK181の宇宙生物らしい】
危険性が無いと判っていても、だからと言って野放しにはしておけないのだが。
【多分大丈夫じゃない】
【そうかな~】
【でも一つだけお願いしておいた方がいいかも】
【一つだけ?】
【多分、単一生物で雌雄同体、しかもある程度危機が迫ると増殖するって事よね】
母はそう分析していたようだ、確かに話して分かる生物ならば頼んでみた方がいいだろう。
《君にお願いがあるんだ》
《何?》
《この星で増殖するのは辞めておいてほしい、その代わり食べ物はちゃんと用意する》
《交換、わかった 食べ物 ある それ守る》
脳の大きさはその生物の知能に比例するとどこかで聞いた事が有るのだが、目の前にいる生物はどう考えても脳の大きさが豆粒ぐらいではと思う。
まあこのサイズは惑星YAKで生きて行くのに一番良い大きさなのだろう、そこを無視するのならばいくらでも大きくなれる事になる。
なにせ自由に大きさも分裂して個体数も変えられるのだ、そうなれば脳の大きさなどは関係ない。
宇宙は広いようやく宇宙人がいるというのが現実になったばかり。
目の前にいる生物の生態系など誰も知らなかったことなのだから。




