お土産を求めてはいけない
お土産を求めてはいけない
ワシントンの国際空港から直行便で日本の成田空港へ、マジでギリギリの日程だった。
到着したのは日曜日の夜10時、そして電車に乗って数時間。
こんな時はロボスキルで空を飛んで来たくなってしまうが、それは女性達のエスコートを全て拒否すると言う事になる。もちろん瞬間移動などしようものなら各国のエージェントからどんな報告が行くだろうか。
ちなみにずっとUSAとUKのエージェントが護衛のように付きまとっている。
まあ本人たちは旅行者に紛れている体でいるが俺にはバレバレだ。
「ようやく帰って来られたわね」
「ごめんね、俺のせいで休みが短くなって」
「え?」
「エアフォースワンに乗れたのに?」
「シー」
(声が大きいよ)
(大丈夫よ誰も聞いていないって)
いや美女が3人そろっているのだから、しかもアイリーンは売れっ子モデルであり。
確か歌手デビューするのも決まっていたはず、ちなみに空港でもスマホを数人がこちらへと向けていた。
気を付けないとそう言う写真データから身元がばれてしまい、隠していた秘密が明かされる事もある。
「USAのロケはウマクイキマシタネー」メアリー
(わざとらしいが、うまい言い訳だ)
「ああ、そう そうだね」
「明日のロケは?」
「明日はお休みよ」
「まあ今日は家に帰ってゆっくりしよう」
いやこのやり取りで仕事だと遊びじゃないと判ってくれるかどうか?
いらぬ誤解をぬぐっておかないと、なにせ3人共にUSSJ所属のタレントなのだから。
何度か電車を乗り換えて最寄りの駅へと到着する、そこからは荷物もあると言う事でタクシーに分乗する。
俺とは違い彼女らの荷物はかなり大きい。
ちなみにお土産の購入時間が今回めちゃくちゃ少なかった、一応観光で行った体を装って移動したので小さなものなどは購入できたが。
目立った特産品などを手に入れる暇が無さ過ぎた、仕事と割り切って行動していたので今回は諦めている。
「やっと着いた」
「メアリーさん?」
「私も今夜は皆といっしょにいたいでーす」
(お話したいということ?)
(イェース)
そう言ってニコッと微笑む、多分彼女はこの後、本来は蓮華さんの元へ報告しに行かないといけなかったりするのだろう。
だが彼女としてはその前に話す事が有るのか、それとも話しておかないといけない事が有るのかも。
「ただいま~」
「ただいま帰りました」
「ただいま」
「タダイマデース」
「あらあら」
「お帰り~メアリーさんも?」
【話したい事が有るみたい】
【OK】
【とりあえず中で話そう】
「お疲れ様、入って」
「オジャまシマース」
父は食後のひと時を堪能しているらしく、新聞を広げているが。
いつもなら書斎でデータ分析の見直しをしている時刻、俺達が帰って来るのを聞いて待っていてくれたのか、それとも俺から土産話を聞きたかったのか…
「食事それともお風呂?」
「あ~俺は食事を先に」
「分かったわ」
と言う事で俺が食事と言えば女性陣は自動的にお風呂を先にしてくれる、彼女らは自室へと荷物を運んだあと風呂へと直行。
勿論メアリーさんも一緒に入るらしい。
「ドドドドド」
3階から勢いよく下りて来る愛菜。
「メアリーちゃん来てる?」
「オーアイナーひさしぶる~」
「ひさしぶりだよー」
「ソーヒサシブリー」
「メアリーちゃん今日泊まって行くの?」
「そうよ」母
「じゃあ一緒におふろはいろ!」
「そうですねーいいですよー」
「やった!」
いやいや別にメアリーさんと愛菜が仲良しなのは良い事であってうらやましいとか思っているわけではない。
父の遺伝子を持った俺には彼女達の裸など目の毒であり、百合ちゃんの前では平静を保っていないと機嫌を取るのが面倒だったりする。
女性の風呂は長い、いくら新築の風呂が大きいと言っても4人が入るには少し小さいかもしれない。
その間に俺は遅い夕食を取ることにした、カレーの味で何故か一安心する。
「はいカレーライス」
「有難う」
「カサッ」新聞の音
「父さん仕事はどう?」
「聞きたいか?」
「うん」
機密事項もあるので父の話はできるだけ知らないことにして言葉のキャッチボールをするのだが。
どうやらまたCNのスパイが増えてきているようだ。
ニュースではCNも惑星間転送装置に予算を出すと言っている、まだ日本側がどこまで情報開示するのかで調整しているようだが。
先行してCNの研究員が転移装置のある研究所へと数人潜り込んでいる、あちらも出来ればすぐにでも核心部分の情報を手に入れたいところだろう。
「それよりUKはどうだった?」
「まだ寒かったよ」
「そうか」
「そう言えばUKにも転送基地作るようだね」
「ああCNよりも先にUSAから打診があったよ、既に用地は決まっているらしいが」
「そうなんだ」
「さめちゃうから早く食べなさい」
【それで大統領とは?】
「ゲホッ!」
「あらあら」
その話はもう少し経ってからと思っていたのだが、結局母と百合ちゃんが俺を寝かせてくれることは無くなりそうだ。




