ワシントンの夜
ワシントンの夜
一週間の日程だと言う事は、明日にはUSAを出発しなければならない。
なにせ直通便でも19時間はかかるのだ、既に5日と半分経っており明日の朝はすぐに東京行きの飛行機でワシントンを離れないと1週間と言う期限などあっという間に来てしまう。
まあ最初考えていた時より早く問題が方付いたおかげで、予定通りメアリーさんのお手伝いは完了したのだが。
まさかUSA迄来ることになるとは予想していなかった。
急な事なのでもちろん宿などとっておらず夜も遅いと言う事で、本日は迎賓館から少し離れた要人専用の宿泊施設へと通された。
【一応個室みたいだな】
【急遽設定されたようですね】
リリーさんのアバターフィギュアを亜空間ストレージから取り出す。
光学迷彩を使用して姿は見えないようにしてあるのだが、この部屋自体にはいたるところにカメラやマイクが仕込まれているのを感知している、なのでリリーさんとの会話は全て脳内通信で行う事にした。
【この部屋は、それ用の対応だな】
【4隅とそれから調度品にもカメラとマイクが有りますね、カメラは合計10か所マイクは8か所です】
【あの天井の空調の隙間にもあるな】
【宗助様いかがいたしますか?】
【そのままにしておくよ】
【誰か来るようです】
【USAのSVRかな?】
「コンコン」
「どうぞ」
「ハイ、マイネームイズリリアン・マージェス」
「…」
「あなたも挨拶しなさいよ」
「マイネームイズリオールズ・デンバー」
「ウェルカム、マイネームイズソウスケロホウ」
「私たちはUSAのSVRよ」
「それで何か用ですか?」
「あなたの力を借りたいの」
それはかなり突拍子も無い事だった、細かく聞かないと何を手伝うのかもわからない。
まず彼ら2名はUSAのSVRであり、そしてMS工科大学の博士号を持つ研究員である。
「我々は惑星間転移装置の開発を手掛けている」
「それで?」
「実は我々の仲間であるアンジェラ・マクファーレンが行方不明になった」
「行方不明?」
「ああ、実験中に姿を消した」
「転移装置は稼働していたのですか?」
「稼働していたと言うより稼働させた時に…」
「入力した数値に誤りが有ったようなの」
「一度装置を見てみないと僕にはわからないと思いますよ」
「見ればわかるのか?」
「数値のデータは?」
「これだ」
惑星間転移装置に入力したデータはUSAの研究施設から別の施設への転送で間違いはない。
だがそれで行方不明になる分けは無いのだが。
「彼女もSVRだ、しかも瞬間移動の能力を持っている」
【宗助様】
【惑星間転移装置の稼働中に自分の能力を干渉させたのかもしれないな】
【その可能性が高いですね】
【だが…】
「研究所の場所は?」
そう聞いて話すわけにはいかないのは分かるのだが、それを聞かないとこの件を解決するのに時間がかかってしまう。
リリアンは少しためらった後に研究施設の場所を明かした。
「それは…」
「日本のSVRに話しても?」
「MS工科大の研究施設だ」
「ここから千キロ以上離れているんじゃ今日は無理だな」
【機械にもしかしたらジャンプ先の座標が残っている可能性があります】
【マジか、明日は飛行機に乗って帰らないといけないのに…】
能力を使用すれば飛行機に乗らなくても日本へと帰国できる、だがそれを行うと一緒にUSAへ連れてきた女性達は不思議に思うだろう。
「とりあえず研究所の住所を教えてくれないか?」
「住所?それを聞いてどうするんだ?」
「君らもここから帰るなら1日はかかるんだろ」
「ああ明日の夜には戻れると思う」
「それじゃ遅いな…」
【宗助様研究所の位置データが揃いました、衛星経由で転移に適した場所も数か所見つけました】
【有難う】
「それで君たちは俺の能力をどこまで聞いた?」
「ユーも転移能力があると…」
「ジャクリーンから聞いたのか?」
「ヤ」
「緊急事態という分けか」
「ヤ」
2人は目を見合わすとすまなそうにそう答えた。
大統領から俺の能力を聞いたと言う事は、かなり切羽詰まっていると言える。
大統領もこちらに帰ってきてから聞いた話しではないだろうか、しかも研究中の事故となると反対派からの攻撃の的になる。




