巨大な既得権益
巨大な既得権益
惑星間転移装置の民生利用についての概要、発展途上国に対してはODAとして日本や先進国からの援助での導入となり。
逆に先進国についてはUSA・UK・FR・CN(中国)・RU・JPN(日本)・IT・GRBRINなどを含む25カ国で資金を出し合い開発協力を進めると言う。
いつの間にか国家規模の巨大な輸送プロジェクトへと変貌していた、何故自衛隊が仕切っているかと言うと。
「こちらの惑星間転移装置、民生用は長距離相互転送装置となり、どちらも窓口は日本国防衛省とアメリカ合衆国国防総省よる主導で行われます、資料の3ページをご覧ください」
製造販売の窓口は国で行われ、運送や設置は自衛隊宇宙対策部とUSA宇宙対策局によって行われる、数少ない利権が絡んでいるからという事。
現状はまだ2メートル四方までの物体までに限られるが、研究が進み蓄電池の容量が増えればさらに大きな物体まで転送が可能になるだろう。
ちなみに現在の輸送単価は2メートル四方直線距離300k、一度の転送で電気料金500万円。
装置の開発費は1千億円を超えているので、それを輸送費に上乗せすると…現在は転送1回1億円と言った所だろうか。
「資料の10ページをご覧ください」
モニターに映し出されるコンピューターグラフィックには完成品と物流のモデル映像が流され。
転送装置によってもたらされる移動の快適さ、コスト面などの優位性、そして10年後には輸送で発生するCO2を半分以下に減らせると言うかなり盛った解説が流される。
【岩田さんすごいな】
【企業のプレゼンと変わりませんね】
【違いは制服の部分だけだな~】
ホテルの会場とは言え今回東京実験場に参加した35人程度の各国要人、TBサイトやMHメッサなどで年に数回開かれるショーに併設される企業のブースサイズと同等か。
テーブルと椅子が用意されており、100インチ以上あるモニターを前に制服を着た技師が映像を操作している。
何時から自衛隊でコンピューター部門を作ったのかは謎だが…
【宇宙対策班の隊員の様です】
【え?という事はエリート軍事オタク?】
【そう言った趣味を持つ隊員を招集し、装置の説明の為チームを組んだのではと思われます】
【それはあり得る】
名目上どうやら災害救助に使用する物資や救助に使うのが第一目的であり、自衛隊がこの装置を所持するためには、しっかりと使いこなせる部署が無ければ、何処かから文句が出てきて管理権限をよこせと言われる可能性もある。
宇宙人対策班も最初は10人規模だったが半年で50人規模まで増加していたりする。
しかも半分以上が一流大卒のエリートである制服組、企業のプレゼンと同じような仕事ができても不思議ではない。
「お手元の契約書をご覧ください」
惑星間転移装置に関する法制化は既に済んでいるが、今はその初期段階であり今後何度かの手直しが入るだろう。
現在は仮契約と言う形で進めて本契約は転送装置が完全に出来上がってからと言う事になる。
約2時間のプレゼンが終わると別室で食事を含めた歓談の時間となった、この場にいるのは各国の大臣補佐官クラスとその通訳やボディガード。
東京実験場に来ていたのは7カ国、そのうち4カ国はアジアの発展途上国であり。
今回は他の実験場でも同様のプレゼンが行われていたりする。
《君は、関係者?》
インド語で声を掛けられたが一応分からないふりをする、すると通訳が。
「あなたは関係者なのですか?」
「はい僕は呂方研究所長の息子です」
本当はもっと肩書がつくようになるが、それを話すとややこしくなり面倒なことになる。
まさかこの装置の出どころは僕ですとは言えない。
《おー…》
「そうでしたか呂方博士の研究は素晴らしいです」
どうやら電気会社の研究室所長がどこかの大学教授と同等の解釈をしているようだ。
まあたいして違いがない様な気がするが、父を褒められると何故だか嬉しかったりする。
少し言葉のやり取りをしていると、先ほどまでプレゼンをしていた岩田さんが話しかけて来た。
「宗助君」岩田
「岩田さん、久しぶりです 素晴らしいプレゼンでしたよ」
「はずかしい、本当は部下にやってもらうつもりだったのだが、他の実験場でも同様のプレゼンをしているので、詳しいものが足りなくてね」
「いやいや、僕もそれほど企業のプレゼンに詳しくないですが、本職では無いかと思いましたよ」
「ところで、話は聞いたが東教大にしたんだってね」
「すみません期待させておいて」
「まあ、そこは君の自由だからさほど驚きはしないけど、今後話が大きくなってきたら君にも参加してもらうからね」
「え?」
「当り前だよ、出所は君なんだから、ちゃんと予算が出ているから安心していいよ」
そう言われてしまうと逃げる事も出来ないと言う事になる、まあその前に日本にいられるかどうかも不透明な状態なのが少し気になるのだが。
「そろそろ出ましょう」メアリー
経産省の大臣である高橋卓さんは俺と話したかったのか、ようやく各国の事務次官との話を終わらせたようだが。
それはタッチの差で叶わなかった、ナイスですメアリーさん、あのおじさんは俺の能力に少し懐疑的なのか料亭でのお話の時も俺の事を子供として見ているような気がする。
まあ子供と言われても間違いないのだが、見下されるのはあまり良い気分ではない。
それはさておきメアリーさんの顔色を窺うと、次の訪問地はもしかしたら蓮華さんの自宅か?
ホテルの前に付けたタクシーに乗り込むと一路、世田谷方面へと移動する。




