転送実験
転送実験
いくつかのモニターには転送先の様子も写っている、そちらにも数十人規模で見学者がいる。
中には民族衣装を身に着けた各国の大使まで見学に来ていたりする。
《これより転送テストを行います、皆様お手元に配りましたゴーグルを装着してください》
俺にはもちろん必要のないゴーグルだが、前回の小テストの時も一時的に辺りがまばゆい光に包まれた。
装置に流れる電圧が一定の大きさを超えると周辺にスパーク現象が見られた、これはあまりにも高い電圧から装置を流れる電流が漏れ出す現象。
出来ればこの現象も抑えるように改良を加える必要もあるが今は後回しするか、それとも同時に改良していくのか、現場の研究者によって協議したいところだろう。
「ビービービービー」
《転送開始!》
同じようにモニターの向こう側の様子も見られる、一瞬まばゆく光り転送先である名古屋の施設に映し出された景色も同じように光にあふれると、どうやら本日最初の転送テストが終了したようだ。
「どうだ?」
「こちらは成功です」
《名古屋基地、転送成功しました》
「わー」
「やりましたね」
「まだだ、今日はこれからもう一回福岡への転送テストがある」
《東京―名古屋間転送テストは成功しました、次は東京―福岡間の転送テストを行います》
《次のテストは1時間後になります》
本日のテストは片道だけだが、今後数回の往復転送テストも行われる。
転送する物体も今日は無機物に限られており、転送したのはいくつかの機械と水や薬品それと金属などだ。
モニターの向こう、名古屋の基地では送られて来たものを注意深く一つずつ調べている。
「どうぞ」
いつの間にかコーヒーやお茶が配られている、チリや埃が入らぬよう空調が効いているのと本日は乾燥気味の為見学者は全員喉の渇きを感じている事だろう。
「ありがとうございます」
そう言って紙コップを受け取る、コーヒーはやや薄めだが香りはちゃんとしているので安物ではなさそうだ。
「今日は乾燥しすぎだな、やはり冬場はミストを発生させた方がいいかもしれない」
「そうだな、用意しておこう」
目の前の研究者たちはモニターと数値を検証しながら前回の実験の様子と今回を見比べているようだ。
1時間後、今度は福岡への転送もうまく行って、本日の惑星間転送装置の実験は終了した。




