表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
285/508

閑話 ある日の詩音

閑話 ある日の詩音


そこは芸能人や有名人御用達のスパ、都内某所の高級ホテルに創設された最新の設備を誇る松田建設がプロデュースした新しい提案。


「御婆様いきなり連絡してきてなんです?」

「仕方ないでしょう、ほらここ見てよ、また皺が増えて来たわ」

「だからと言ってここはスパじゃない!」

「こんなところでなければあなたに裸を見せられないでしょう?」


そんな事はない、松田財閥は全国各地に保養所があり彼女が使える別荘は10か所以上ある。

イリアの力を使うなら関東ならば群馬かそれとも栃木あたりの別荘に行った方が無難なのだ。


「それでどうするの、今日やるの?」

「明日は休みなさい、会社にはこちらから連絡しておきます」

「…いいわ、その代わり次に何かあったら断らせてもらうから」

「そ それも困るんだけど」

「まず、第一に60過ぎの爺さんを操ろうとかするのはやめてよね!」

「知らないわよ~そんな事」

「直接うちの会社に乗り込んで私に会わせろって、ものすごい剣幕で来たのよ!」

「そうなの?」


そうシオンは大手の会社を経営する社長達を集めて講演会をしていたりする、「未来を見据えて」と言う題材で、シオン会が定期的に行う講演会。

本当に見て来たのだから質が悪い、そして財界のトップにいる松田竜太郎の妻と言う立場をフルに利用していたりする。

裏の顔を知られたとしても彼女に近寄る金の亡者はいなくならないだろう、返って詩音を自分の思い通りにできないかとあの手この手を使って画策するはず。


だから詩音も自分に有利になる事になら親族家族を利用するのも当たり前だと思っていたりするのだ。

だが、その中でも中々自分の思い通りにならない親族の一人が孫のイリアだったりする。

頭が良く美人でスタイルも良い、それだけではないいくつかの超能力まで身に付けている。

ましてやその能力の一つが詩音にとって一番欲しかった能力、プレゼントエイジ(歳の贈呈)。

寿命が延びて天国へ至るまでの時間が長くなる、そんな能力ならば誰でも欲しいに決まっている。

だが彼女シオンの夫は若返ることを拒んでいたりする、人の考えは様々だ、いくら大勢の人が良いと思っていたとしても中には自分には不必要だと思う人もいる。


「もうお見合いの話は辞めて欲しいのですけれど」

「それは無理よ、わが一族の決まりだもの」

「それはおばあさまが決めたものでしょう?」

「違うわよ、わが一族に毒となるか薬となるかを測る手段の一つですもの」


要するにこう言いたいのだろう、見合いと言うのは見せかけだけで、うまくいくかは別として相手がどういう人物か見てくるのがお見合いに参加する最大の理由だと。

確かに全員独身ではあるが、紹介して来るおじさん達は全員が何らかの会社を経営している社長でもある、それらの会社を経営している人物が松田財閥の力になるかならないのか。

結婚していれば家族ぐるみでパーティした時に判る可能性もあるが独身の高齢者はそういう場には恥ずかしくて現れたりしない。

殆どはどこかの結婚相談所やマッチングサイトを使用して結婚相手を探しているはず。

そういう独身の社長が有益かそれとも害になるか探るには、この見合いと言うシステム、それを相手の人格や行動を見定めるチャンスとして使わない手はない。


「そのような暇はないです!」

「そうなの?困ったわね~」

「じゃあこうしましょう、月1回で良いわ、その代わりあなたの後釜を探して来て頂戴」

「どういう意味?」

「確か従弟のミリーちゃんだっけ、仲良いわよね」


相川美里(あいかわみり―)ミサトとは呼ばないようだ、相川家はイリアの母である舞香まいかの兄の子。

一つ違いである従姉妹、確かにまだ独身ではあるが、最近彼氏ができてラブラブだと聞いており、そこに話を持っていくのはいかがなものか。


「仲が良くても、そんな事でお見合いを紹介するなんてできません」

「あら、お見合いの使い方は別に結婚相手を探すだけじゃないと言ったでしょう、自分がお付き合いしている殿方を本気にさせる事にも利用できるのよ」

「そういうずるいやり方を友人に勧めろと?」

「まあ良いわ、じゃあ本日はこれから栃木の別荘へ行くわよ」


ホテルに併設されたスパから出るとすぐに待機していた秘書へ告げると、お付きの秘書が車の手配から別荘の管理会社へと流れるような動作でテキパキと連絡を済ませて行く。


「ところでマイカは?」

「母は本日TVの取材です」

「いい加減あの子も民放の仕事なんて辞めてしまえばいいのに」


TV局のお天気お姉さんから朝の顔となり、当時TV局の専務をしていた松田久恩まつだくおんと知り合いそのままゴールイン。

現在松田久恩はそのTV局の社長に就任し5年が経つ、いずれ松田財閥総帥である竜太郎の後継者となる人物。


「でも父と母を結び付けたのは御婆様だと聞きましたけど」

「だってあの子(久恩)が30歳の時、好きな人がいるからお見合いはしないと言うんですもの、調べてみたらあんな小娘が色目を使っていたと言うじゃない」

「母の悪口は辞めてください」

「あらごめんなさいね、確かにあの時はまだ手は出してなかったけどね~」


TV局の専務と言う役職はもちろん松田財閥のコネでねじ込んだわけだが、半分はちゃんとした実力であり財閥のコネを必要としていたのはTV局側だったりする。

バックの恩恵が必要になったTV局側は既に20%の株を松田財閥に買収されていた。

まあそれは計画的にだ、そうしなければ外資に乗っ取られる寸前だったのだから。


「さあ行きましょう」


ホテルの前に運転手付きのリムジンが横付けすると、運転手がそのドアを開けお辞儀をする。

その横には秘書が立ちスケジュールを話し出す。


「本日は栃木県那須塩原の別荘に宿泊予定です」

「わかったわ」

「お食事は近くの高級レストランからケータリングをご用意いたしました」

「明日の朝も同じレストランのシェフが直接料理を持ちします」

「そうなの、あそこのシェフね」


どうやら何度か利用しているレストランらしい。

車に乗り込むと音も無く高級EVリムジンがゆっくりとホテルから出て行く、広い車内には冷蔵庫もテレビも完備しているがシオンはそれらをほとんど使用しない。


「何か飲む?」

「いいえ」

「それでその会社に来た男とは?」

「会わないわよ、別に好きでも何でもないし」

「そうなんだ、それじゃアリスちゃん×付けて置いて」

「かしこまりました」


松田詩音の元に訪れる信奉者達、殆どが会社の経営者だが、シオンの未来視による情報を受け取れる人間は数が限られている。

相場や株の情報はあまり沢山の人間が関わるとその値幅が小さくなってしまい、利益幅も小さくなる。

国や財閥がテコ入れした場合は別だが、殆どの株価はそこまで大きく値が動く事は無い。

シオンはそれらを精査して傘下の事業者に情報を提供することで松田財閥の利益を増やしている。

だが中には利益を最大限上げるだけしか考えない金の亡者も引き寄せてしまう。

そういう輩はこちらのことなど一切考えずに自分だけ良ければいいと考える、それらを一番楽に選別するにはどうするのか。

それは簡単だ、その人物が経営している会社の評価を下げてしまえばいい。

但しその理由として親族に迷惑をかけたから、とか 悪いこと(犯罪)をしたからという理由が必要になる。

そのレッテルをイリアや他の親族にしてもらう、もちろん些細な噂だけでも構わないが。

お見合いと言う戦法は詩音にとって一石二鳥なのだから親族や孫に勧めない訳がない。


「そう言えば今度のNADL主催のパーティあなたも出席するように」

「来月でしたよね」

「そうよ、日曜日なのだから、来られるわよね・」

「多分…」

「多分?いい出会いがあるかもしれないわよ」

「それって私にとってですか?」

「さあ」


勿論自分にとってと言う事なのだろうけど、シオンの未来視はほぼ100%現実になる。

但し、彼女の能力はこれだけだと思っている人の方が多いだろう。

違う、そうではない、彼女には人を操る力もあるのだ、但しこちらは悪い奴に限定されている。

相手の悪巧みを感じ取り、そいつの精神を支配することができる、だがその反面聖者(正しい心)にはまるで使えないと言う能力。

だから今の所は彼女の信奉者であっても悪意のあるものにしか使用できず、殆どは彼らを自爆する方向へ導くため、自分の組織を守るために利用している。

その際には必ず松田財閥のダークな面も一緒にかぶるように持っていくのがミソだ。


「今度は何させようかしら」

「御婆様あまり変な事しないでくださいね」

「変な事って何よ、別にたいしたことは無かったでしょう」

「うちの本社の受付で暴れたのに?」

「けが人は?」

「出ていませんが」

「じゃあやっぱりたいしたことではないわよね」

「やれやれだわ…」


確かにけが人も出ず、収まったのであれば事件としては小さい方になる。

結果が全てうまく行くのならそれは良い事ではある、もし詩音が操っていなければひどい場合は本人が死ぬかそれとも本人の近くにいる人間がダメージを受けるようになる。

悪い奴と言うのは自分のする事全てが悪くないと思っている、そしてそういうやつのほとんどが責任を全部他者になすり付ける。

シオンはそこを少しいじるだけ、悪い奴を懲らしめているに過ぎない。

だがその力が宗助にとっては少し厄介だと言う事になるのだ、果たして未来を読める人物から逃れることなど出来るのだろうか。


第6章 惑星からのSOSその2  完


もっと戦争的な流れを期待していたりしたなら申し訳後御座いません。

この章ではようやく日本のSVR達も本腰をいれて組織の拡張を考え出したところであります。

まあ章の題名は後で変更するかもしれないので一応暫定だと思ってください。

という事で次の章は「惑星からのSOSその3」です。

えー?

期待させておいてあまり変化が無いと面白くないと思われるかもですが。

次回はついにヤコブ族の生体兵器を解説いたします。

と、言う事は…そうです敵になるかもしれない巨人たちの生態が徐々に明るみになって行きます。

第7章もご期待ください!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ