ヤコブ族の暮らし
ヤコブ族の暮らし
その星はそれほど機械に特化しているわけではない、AIに似た機械の利用も少しは進んでいるがほとんどが地球と同じハイブリッドな環境だ。
機械化もあまり進めてしまうと生き物は楽をしようと自らの肉体に対して鍛錬を怠る傾向が強くなる。
彼らの暮らしは器械も使うが移動に関しては自らの足を利用することの方が多かった。
この星の重力は地球の0,8倍、重力が小さいせいでその肉体は地球人の倍近くまで大きくなった。
惑星リズとは進化の度合いが違うが、彼らは自身の肉体鍛錬を怠らず今でも各種スポーツには力を入れている。
「どうだ、今度の強化スーツは?」
「少し動きに鈍い部分がありますね、ですが伝達速度は速くなった気がします」
「伝達システムに敵が使っていた装置を使用してみたからな」
「解析できたんですか?」
「ああ、テレパシーの解析は昔からしていたがどうやら敵の超能力はその分野では我々より進んでいるようだ」
惑星リズでは殆ど肉声で言葉を発する事が無かったが、この星ではまだ言葉での意思伝達は失われていないようだ。
「プロフェッサー、客人です」
「通してくれ」
ヤコブ族は現在安定期に入っている、人口が少ないのは増やす必要がなくなったから。
日本人が中々人口が増えないのと同じ、経済成長を進めて行くと次第に寿命が延びて行く。
そして人族の寿命が500歳を超えるとどうなるだろう?
神代の時代に超能力を持った先人達、その生き残りが終の棲家を見つけここまで繁殖して来た。
自己の肉体鍛錬を怠らず病や事故などを超能力や科学の進歩で退けて来た彼らは、コンスタントに全員が最高寿命(1000年)を生きる種族になった。
だがそこに攻め入る敵が現れたのはここ数百年になってから。
千年前にはそこまでの事は無かったが、この数年でライズ族からの侵略攻撃がこの先増えると考えれば、今までの生活を改めなければならない。
敵と判定した星からの攻撃を黙って見ているのではなく、報復処置を取らざる負えなくなってくる。
ライズ族の科学技術を取り入れ、他の惑星へ移動する機械装置を開発して行くヤコブ族。
問題なのはこの種族が生体工学を使用したパワードスーツという技術に関して、他の惑星に住む宇宙人より進んでいると言う事だ。
その科学力が進んで行くとどうなるのか?パワードスーツに惑星間転移装置を取り付け、さらにエネルギーの循環装置や各種の動力装置を小型化し装備させることが可能になる。
そうなれば宗助のように座標さえ判れば簡単に惑星間の移動ができてしまうようになる。
彼らがそういう力を数年で身に着けてしまえば、いずれ地球も巻き込むような戦争が宇宙規模で勃発する可能性が出て来る。
「惑星間航行装置の小型化は、どの程度進んでいる」
「もうすぐできそうです」
「ではパワードスーツに取り付けて他の星へ行けるかテストすることにしよう」
惑星YAK181の近くには資源となりえそうな星がいくつかあった、殆ど生物は住んでいない星だが。
この時から急激にヤコブ族の惑星開拓が進んで行く、そして数年で彼らは急激に周りの星を開拓し始めるようになる。
彼らが帰還するように細工したライズ族が放った開拓宇宙戦艦、それらは半年をかけて惑星RIZへと帰還するのだが、はたして2つの星の運命はどうなっていくのか。




