日本の不死者
日本の不死者
午後8時を回った頃、黒塗りのハイヤーが数台、この国のトップ数人を乗せ料亭から走り去る。
宗助とメアリーはその後、同じようなハイヤーに乗り込み、一路都内某所へと行く事になった。
料亭があった場所は赤坂の近く、そこから15分西へと車は移動する。
一度首都高へと出たり入ったり、複雑な経路を移動するが、おおよそ目指しているのは世田谷近辺。
「ここです」
そこは世田谷の一等地と言える、だがその屋敷は半端ないぐらい大きかった。
車を降りるとメアリーさんは門の横にあるインターフォンのスイッチを押す。
『どなた?』
「メアリーです」
『少しお待ちになって』
インターホンから女性の声がする、やや年配の女性なのか声が少しかすれているようだ。
玄関の扉は自動式らしい、ゆっくりと開いて行くと内側にはさらに扉が有り、どちらも防犯カメラが付いている。
中に入ると手前の扉が閉まって行く。
「中々警戒芯が強い人の様だね」
「そう、かもしれないです」
何故かメアリーさんの声が震えているようだ。
外扉が閉まると今度は内扉が開きだす、その内側にはさらに扉があるが、まさか3段扉とは思わなかった。
3つ目の扉を経て内部へ入ると、ようやく玄関口が見えて来る。
そこには車椅子に乗った上品な老婆が出迎えていた。
「ようこそ、初めまして私は徳川蓮華と申します」
「初めまして呂方宗助と申します」
「お入りになって、そのまま土足で構いません」
そう言うと蓮華さんは車いすをくるりと回転させ廊下を奥の方へと進んで行く。
メアリーさんは俺の手を取るとその後をついて行くので、俺も彼女の後をついて行く形になった。
少し進むと今まで車いすに座っていた蓮華さんがすっくと立ちあがる。
(え?)
「ごめんなさいね、こうしておかないといけない理由があるのよ」
そう言うと母屋の中へすたすた歩きだす、当然俺もメアリーさんも後をついて行く。
屋敷には蓮華さんしかいないようだ、こんな広い家を掃除するのは大変だろうなと思ったのだが。
どうやら掃除は専門の業者に頼んでいるようだ、その日以外はこの屋敷に彼女一人しかいないと言う。
連れて来られたのはかなり広めの応接間と言った雰囲気、高そうな調度品がそこらここらに置いてある。
「おかけになって」
言われるがままソファに座ると、俺の横にメアリーさんも腰掛けた。
だが、その後目の前の椅子に腰掛けたお婆さんから語られた話には、びっくりすることばかりだった。
「初代将軍徳川家康の側室、蓮華院と申します」
「え?え~!」
「ごめんなさい、500年前の事なんて分からないわよね」
【初代将軍家康の側室に蓮華院という人物がおられます、ですが歴史ではお亡くなりになられている模様です】
【いやメアリーさんのことも有る、あり得ないとは言えない…】
「それはメアリーさんと御同類と言う事?」
「あら、メアリー話しちゃったの?」
「宗助には隠し事できないみたいです、歳を知られると恥ずかしいです…」
「まあよろしいですわ、私は今年562歳になります、もちろん現在の名前は昔の名称からつけていますが、本当のルーツを知っているのはメアリーと数人だけよ」
「はあ、それでここに呼ばれた理由は?」
「そうね、手を出して」
言われるがまま手を出そうとしたのだが、途中まで出してみた所で蓮華さんの方から手が差し出され、さらにぎゅっと握られた。
【予備エネルギー貯蔵装置に侵入されました】
【解除して】
【かしこまりました】
「やはりメアリーさんとご同類?」
「あら!早いもうばれたの?」
「蓮華さん今はわざと生気を取っていない感じですか?」
「あら、これじゃメアリーが惚れるわけだわ…」
そこからは何故宗助を呼んだのか、そしてメアリーから聞いた話が本当ならば試してみない訳にはいかないと言う事になったのだと。




