アイリーン&ユリナ
アイリーン&ユリナ
終業式が終わってすぐに、アイリーンは百合ちゃんと秘密の話が有るらしい、俺には明日引っ越すと同時にアイリーン姉弟の受け入れをどういう工程で行うかの話だと聞いていた。
実はそうでないことぐらい俺にもわかるが、女性の考えることにいちいち口を出すなど、自分で自分の首を絞めることになることぐらい分かっている。
アイリーンはすでに卒業式も終わり本日は春休み中、合格した大学はK大だった。
彼女は3校受けて全て合格したらしい、さすがサバイバーの子孫。
ちなみに桃ちゃんもちゃっかり大学へ進学することになっているSNSで語ってくれた。
そしてアイリーンの妹エミリアちゃんはG大付属音楽学院高等部へと進学、こちらも中々優秀な成績で合格している。
どちらも都内に有り、アイリーンが通う学部は六本木からも近いらしく芸能事務所から駅で2つと言う近さだと言う。
ここからだと少し通うのが大変だと思うが、学部のある都心の校舎へ通うのはこの時代週に2日~4日で良いらしい。
学部にもよるがほとんどはリモートで学ぶ方式に変更されており、これは交通費も削減できるし、学生にかかる学費や養育費も削減できると言う理由だ。
そのうち高校や中学もだんだんこのようになって行くのだろうか。
「百合ちゃんは明日荷物を運ぶのよね」
「うん、先に部屋を決めてあるから」
「分かったわ、明後日私達が引っ越すから、時間は12時ぐらいになると思う」
「了解、部屋は決まった?」
「一応2階の部屋を2人でシェアするわ、でも…」
「お父様の事でしょ」
「まさか宗助君と同居しないとだめなんて…」
「喜んでいる く せ に」
「え? そ そんなことないわよ」
「リンちゃん、分かり易い」
どうやら百合ちゃんはアイリーンをリンと呼ぶことにしたらしい、確かに愛菜と愛称がかぶる。
「顔が赤いのはどうして?」
「仕方ないんじゃない、百合ちゃんだって宗助君が側にいればそうなるんでしょ」
「多分そうなるかな…」
「それで今日の話ってそれだけじゃないんでしょ」
「そう、今日話すのはそこじゃないわ、メアリーさん」
「最近復帰したUKモデルの人よね」
「先日、宗ちゃんがUKに行った時、彼女と知り合ったらしくて…彼女宗ちゃんの事狙っているらしいの」
「でもあの人35歳でしょ」
「本当の歳は違うらしいけど、あの人すごいお金持ちだって」
「それは事務所の代表からも聞いた、それで彼女をできるだけ近寄らせないようにすればいいのよね」
「できればそうしたいんだけど、中々曲者らしいの」
「どんなふうに?」
「宗ちゃんが言うには何らかの能力があるって」
「百合ちゃんはそれ信じているの?」
「信じているわ」
超能力の話はお互いにしてはいない、好きな男子に寄って来る羽虫を寄せ付けないように共闘はするが。
今まで自分たちがどんな能力を有しているのか、それらの事は何も話し合っていない。
だが、百合奈は既に宗助の力で超能力を得ているし、その恩恵にも預かっている。
アイリーンはUKサバイバーの末裔であり、現在は接触型の対人情報取得能力とわずかではあるが念動力も使用できる。
お互いの能力は未だに伏せてあるため、それを語るのはできれば避けたいところだが。
そこへお邪魔蟲が一匹現れた所で、それを排除するには超能力の話も少し出さないと先へは進めない様子なのだが。
だからと言って百合奈の口から宗助の能力を明かすこともできないのがもどかしいところ。
「そういえば妹さん、エミリアちゃんは?」
「そうなの、彼女も狙っているわ、だから妹とメアリーさんを戦わせて、宗助君から引き離すように仕向けようかと思うんだけど…」
「ん~ それは止めておいた方が良いかも」
「どうして?」
「多分宗ちゃんには分かっちゃうかもしれない」
「小細工しても逆に余計なことをした人と思われるって事?」
「多分、黙って見ていて墓穴を掘るのを待つ方が得策なんじゃないかな~」
「ところでメアリーさんってどんな感じ?」
「え~と、これ言っちゃっていいのかな~」
メアリーさんの年齢はあまり言えないことも有るが、それ以外の話、特に雰囲気から自分や宗助の母と同じような雰囲気をしていることなどを話すことにした。
だがそれだけでは何がまずいのかは伝わらない、だが宗助から聞いた話ではなく、百合奈はメアリーから感じた直感を話す。
「メアリーさんは幸運の持ち主なんじゃないかしら」
「幸運?」
「そう彼女の行動は全て彼女の良いように動いて行くような気がする」
「それって?」
「変な小細工しても失敗に終わる、もしくはこちら側にしっぺ返しが来るかもしれない」
「そんな… 確かに彼女はUKサバイバー…」
(あっ!この話はまずいかな…)
「UKサバイバーって?何?」
「あ~ やっぱり話さないとフェアじゃないわね」
ここまで話してそういう能力を否定する話はできない、逆にそういう能力があると話して置かないと自分たちの事も分かってもらうことなど出来はしない。
アイリーンは少しずつ話すことにした。
「そうなんだ、なんか納得した」
「怒らないの?」
「どうして?能力があるのは仕方ない事だし、悪いことに使わなければいい話だと思う」
「ずるいとかは?」
「確かに少しはそう思うけど、それを攻めても自分がみじめになるだけだと思う、私はそういう力が有っても良いと思うし」
「よかった、せっかく出来た友達、なくさないで済んだわ」
「ふーん それでリンちゃんはどういう力を持っているの?」
「ひ 秘密」
「え~」
まあうすうす百合奈は感づいていたりする、学園祭の時手を触られた瞬間、何故だかアイリーンに何かを知られたと感じたからだ。
それが超能力だと今更だが再確信することができた、そしてそういう人たちがUKには沢山いるのだと。




