アイリーンの進路
アイリーンの進路
2月もすでに最後の週、メアリーさんも2駅離れたマンションに移り、当分は日本において活動することにしたらしい。
そしてUKからようやくモリソンさんが日本へと戻って来た、その後アイリーンからかなり深刻な連絡が入った。
深刻と言ってもアイリーン一家の今後の暮らしについてのことだ、それによると彼女の生活について、かなりの変更が余儀なくされそうだと言う話。
どうやらモリソンさん3月からUKでの仕事が忙しくなり、家族全員でUKへ移住すると言う話になっているようだ。
勿論そこには先日起こった事件がかなり関係していると言う。
『宗助君どうしよう…』
『もう受験は終わったんだよね』
『後は発表を待つだけだけど…』
スマホのアプリ機能を使いSNSでお互いの顔を見ながら言葉を交わしている。
どうやら合格発表を前にUKへ行くのかそれとも日本で一人暮らしするのか、2択を迫られているようだ。
『合格はできそうなの?』
『2校は完全に受かっているはずよ』
『問題は一人暮らしさせてもらえるかどうかという所?』
『そうなんだけど、私タレント活動も有るし、それを全て捨てないといけないのよ』
『UKで暮らす場合の予定は?』
『向こうで永住するとなると大学はケンブリッジになると思う』
『あ~モリソンさんの母校か、なるほど』
『アイリーンはどうしたいの?』
『私は日本に残りたい』
『それならばはっきりそう言った方が良いよ、それとも一緒にいないといけない訳でもあるの?』
『パパの話だとEU全体のサバイバーの組織が現在不安定になっていて、特にRUからUKのSVRに対して攻撃指令が出されているようなの』
『そうなっているんだ…』
『私は日本にいた方が安全だと思うんだけど…』
『多分日本の場合CNが攻撃して来るからかもしれないな』
裏サイトの情報からRUとCNが組んで昔のような情報戦を始めたと言う話が出回っている。
そこにはSVRと言う言葉は出てこない、いわゆるスパイ大戦争勃発と言った所だ、お互いの国家機密をめぐる奪い合いが始まった。
これも例のアプリと惑星間転移装置の開発が原因だろう、両方とも宗助が絡んでいるので知らん振りなど出来やしない。
『それで?』
『こっちにいる条件が一つ出ているの』
『モリソンさん心配性だな…』
『宗助君と一緒に暮らす事!』
『なんだよ それ!』
まさかそういう事を条件として出されていたとは、だが娘の事を考えればあり得ない話ではない。
UKに行く際、旅客機の襲撃を防いだ力はまだ明かしてはいないが、あれが俺の能力だと言う事はバレてしまっている。
その力があるのならば娘を日本に残しておいても安心だと言われれば、UKサバイバーとの連携を考えると断れなくなってくる。
折角、お互いに協力しましょうと握手をしておいて、ヤッパリ無かった事にでは筋が通らない。
そうなると俺は新築の家に住むのではなく、どこかのアパートでアイリーンとルームシェアの生活をしなければいけなくなる。
だが、それを母や百合ちゃんが許すはずもなく、ましてや売れっ子のタレントと一つ屋根の下はあり得ない話だ。
『それはまずいな…』
『なんで?』
『高校生と同棲は無理でしょ』
『私は構わないんだけど…』モジモジ
(恥じらいながらもノリノリかよ…)
『百合ちゃんには悪いけど私は宗助君とならどこでも良いわよ』
『それをすると百合ちゃんも一緒に暮らすと言う事になるよ』
『それいいかも!』
不味いことになった、これほど女性に振り回されることになるとは、普通の男子なら興奮して眠れなくなるぐらい喜ぶことだろうが。
父である敦之の遺伝子を受け継いだ宗助にとっては、罰ゲームと同等か それ以上の厄介ごととしか思えない。
【宗助様一応お母さまにお聞きしてみては?】
【う~ん…それしか無いか】
『UKに行くなら予定は?』
『一応卒業式が終わってすぐになると思う』
『そうなると3月終わりか』
『それと、妹も一緒になるかも…』
『エミリアちゃんも!』
『あの子も私が残るなら残るって言いだすかもしれない』
『そういえばそのために勉強頑張っているんだったよね』
エミリアちゃんも今回高校受験と言う事で何校か東京の私学を受験していたりする。
神奈川のミッション系女子高は既に合格しているのだが、わざわざ東京の某女子高を受けていると言う。
『そうなんだ、やってくれるな、モリソンさん』
『そういえばメアリーさんって知っているのよね』
『ああUKから一緒に日本に来たSVRの女性でしょ』
『彼女、宗助君の何?』
『親しい友人だよ』
『それだけ?』
『それだけと言うと?』
『宗助君の事大好きでステディだって 言っているのだけど?』
『そ そうなの?』
『でも彼女の一方的な思いよね』
『そうみたいだね』
『仕方ないわ、宗助君がモテモテになるのは、少し複雑だけど』
USSJに仕事の再開の件で顔を出したときに話をしたのかもしれない、お互いにUK関係でありサバイバーの子孫でもある。
元々お互いを知らないわけでは無い、アイリーンもメアリーさんの事をモリソンパパから話ぐらいは聞いているのだろう。
『宗助君に断られたら向こうに行くしかないけど…』
『この話は家の親にも聞いておくよ、そうしないと何も進めそうもないから』
『分かった、早いうちに知らせてね』
この後すぐに母に脳内通信で連絡を入れるとなぜかすぐにOKが出る。




