日本への直行便
日本への直行便
帰りの便はエコノミー、わざとエコノミーで予約したのだろう、もちろん隣り合った席であり。
何故か彼女は俺を窓際に座らせ自分は通路側に腰掛ける、その素晴らしい体を押し付けながら俺を窓際の端へと追いやる、見事なぐらい俺は抵抗しようもなくそこが定位置だと言わんばかりに押し込められてしまった。
ずるいのは押し込みながら体が少し触れる度「アッ」とか「ン」とか声を漏らすのだから。
その状況で抵抗しようものなら、何を言い出すか分かった物じゃない。
「ミスターソウスケにならいつ触わられても構わないのに~」
「遠慮しておきます」
「もう!」
油断していた、俺の手を隣の席から握りそしていつの間にか自分の豊満な胸に押さえつけている。
逆サイドの席に座ったおばさんがこちらを見て目を丸くしている、わざわざ掛けていた眼鏡を直してまざまざとみられては…俺は窓の外へ目をやり、知らんプリすることにした。
【血圧が上昇しています】
【え?なんで…】
いつの間にか俺の手は彼女の手に抑えられたまま、彼女の胸から太ももへと移動する、だがそこまでだ。
【スキルロボ、愛情設定40%に】
【かしこまりました】
全くこれじゃ俺が変態みたいに見られてしまう。
スキルロボを使用するとメアリーさんは目を閉じて俺の肩へと体を倒してくるが、あえてしらんふりをする。
そして恋愛の愛情度数を再び下げることに。
【スキルロボ解除】
目を覚ますとメアリーさんは俺の手を離し、自分の手を見てから俺の方を向く。
勿論俺はまだ窓の外を見ている、窓ガラスに反射し不思議そうな顔をした彼女が俺の方を見ている。
【リリーさん、スキルロボの恋愛情報変更ってデメリットとかないよね】
【同じ情報の上書きになりますので何度も行う事で別の場所に記憶を収納してしまう可能性も有ります】
【要するに記憶を消されないようにバイパスを作成してしまい、情報操作がしにくくなるって事?】
【その通りです】
【参ったな…】
【多分これ以上情報を操作しようとしても愛情の%は下げられなくなってしまうでしょう】
【起こった出来事を消してないからな~】
【はい 紐付けられた情報に時系列で愛情が変化していますので、起こった物事の記憶を元から消さない限り、ロボの情報操作で感情を変えるのは難しくなるのではと思われます】
【好意を持ってくれる人の記憶を全部消すのだけはやりたくないんだよな~】
【宗助様、消すことができないのならば記憶を足してみては?】
【それはどういう事?】
【もうHをしてしまったとか、もしくは兄弟の契りをしたとか、親友になったと言うような記憶を足してみるのも一つの方法かと思われます】
【Hだけは なし! そうか親友ね、それは良いかもしれない、次に彼女の感情が高ぶってきたらそういう記憶を捏造してみよう】
【かしこまりました】
帰りの飛行機は、何の障害もなく14時間の空の旅は快適だった。
だが…メアリーさんは終始俺の方を向いて、その首をかしげている。
どうやら自分の記憶があいまいなのか、もしくは俺が何かしたのを気付いているのか。
「宗助 何かした?」
「何も」
「良いわ もう宗助になら何をされても、そういう恋愛も良いわよね」
【は~ マジかよ!】
【証拠捏造しますか?】
【いや正直に話す】
「メアリーさん、俺はあなたを好きでも嫌いでもないけど、あまりしつこく近寄ると嫌いになってしまいますよ」
「え?どうして?」
「あなたが誰を好きになっても構いませんが、僕には他に好きな女性がいますので」
「そうなのね、ごめんなさい、でも今だけは良いでしょ?」
「何を ですか?」
「恋人同士ってことで」
「メアリーさん…あまりしつこくしないと誓えますか?」
「え?恋人同士なのだからキスぐらいは良いのよね」
「日本では恋人同士でもそこまで頻繁にキスはしませんよ!」
「そうなの?それじゃあ愛を育くめないじゃない」
「そうではないですよ、そこを我慢することでもっと愛が深まるんです」
「そうなの?ジャパンの恋愛は難しいのね」
(よしうまく言いくるめられそうだ)
「ところでメアリーさんは日本に数日いるとして仕事はどうするんです?」
「日本に友人が運営しているタレント事務所があるのよね」
「もしかしてUSSJ?」
「確かそんな名前だったわ」
【なんかややこしくなってきそうだな…】
【アイリーン様とバッティングしますね】
【余計な事話さないでいてくれればいいけど】
「一応10年以上前に一度ジャパンのコマーシャルに出たことあるのよ」
「リアリー?」
「車のコマーシャルとキッチン用品だったかな…」
【データ有りました、芸名はメアリーレディ、ファンもいるようです】
【ほんとかよ】
【こちらがコマーシャルのデータです】
リリーさんがネットから見つけて来たデータが脳内でリプレイされると、確かに助手席に乗ってにっこり微笑むメアリーさんがいる。
そして「コノ~ 車なら安全 ネ~」と流ちょうな日本語にちょっとアクセントがおかしい発音でセリフを話すメアリーさん。
別のデータにはランウェイを歩くメアリーさん、こちらはファッションショーのデータらしい。
そこにはUSSJの加藤代表も笑顔で手を振る姿が映っていた。
【加藤さん若いな】
【まだご結婚前ですね】
【メアリーさん10年経っても変わんないな】
ふと窓から目を離しメアリーさんの方を向くと、そこにはいつの間にか彼女の顔が。
「ブチュ」
(なんだ~)
【セカンドキスおめでとうございます】
【2回目だっけ…】
【初めては百合奈様です】
【おでこじゃなかった?】
【その前に百合奈様を抱きかかえ空へ飛ぶとき、唇が触れています】
【そんなことあった?うそ、覚えてないのだが】
【それにしてもメアリー様長いキスですね】
「んな…」
慌てて肩を手でつかみ彼女の顔を離すと、そこにはうっすらとほほを染めた暫定35歳のお姉さんがいた。
「宗助ダイスキです」
「ダメだ こりゃ」
絶対母や百合ちゃんには言えない秘密ができてしまった。




