ウィリアム家
ウィリアム家
その昔王家に仕えていた貴族がいた、時の王アーサー・ウィリアム3世は他国の蛮族を打ち払うため地方の領主に招集を掛けた、その中にSVRとして宇宙からやって来たモリソンの祖先がいた。
彼はその能力を利用して蛮族を打ち払い、時の王アーサーから騎士の称号と爵位を手に入れた。
そして時の王アーサーの実娘と婚姻しウィリアムの姓を名乗ることを許された、それが今から1500年前の話。
「ここにいれば安全だ」
「久々だったわ~モリソンの瞬間移動」
「あまり使いたくは無いのだが、今回は特別だよ」
「瞬間移動、すごいですね 距離は?エネルギーは?」
「宗助君…」
「あ!すみません、まるで夢の様で 変な事聞いてしまいました」
少しわざとらしいが、初めて経験したと言う体を装うのは礼儀だろう。
「距離はせいぜい2k程度だよ、でも1回使用すると丸一日使えなくなるのが難点だよ」
「そうなのですね、中々カロリー消費が大きそうだ」
「カロリーって、食事をすれば元に戻るわけでは無いのだが」
「あ すいません、そうですよね」
「まあ これで今日は使えない訳だから、今攻撃されたら僕には防ぐ手立てはないからね」
「大丈夫よ、宗助がいるもの」
「?」
「メアリーさん!」
「あらまずかった?だってモリーは宗助の力…モゴモゴ」
「あ~、なんでもないです」
とっさにメアリーさんの口を押さえたが、彼女はこれ以上俺の能力を話せない。
だが何故メアリーが途中で押し黙るのか、モリソンにそれを知られると又変な誤解を生んでしまう。
もしかしたら娘も宗助に操られているのでは?と、だからとっさに彼女の口を押えて不自然に押し黙るのを隠すようにした。
メアリーさんはそれを知って、自らの失態を反省したようだ。
「あ ごめんなさい勘違いしていたわ、もしかしたら夢で見たのかも…」
「メアリー、君は少し失言が多いって言われていないか?」
「そうなのよね、アイムソ~リ~」
そう言うとペロッと舌を出す、中々食えないお姉さんだ。
どうやら普段から一言多いのは彼女の悪い癖らしい、黙っていれば美人で才女にしか見えないのだから少し残念だ。
「さて困ったことに本日は飛行機に乗り日本へ帰る予定だったが、私は今日宗助と一緒には帰れそうもない、メアリー 君が宗助と一緒に日本へ行ってくれ」
「分かったわ」
「そうなの?」
「攻撃してきた者達が気になる…」
「そういえば昨夜はRUの調査員がうろうろしていましたね」
「ロシアのスパイか…」
「何か問題でも?」
「ああ かなりね」
いまだに民族紛争と国家間の軋轢が渦巻くEU各国、東西冷戦時も2国間は様々な方法で情報戦を行って来た。
現在でもスパイ活動が無くなったわけでは無い、エネルギー問題や核保有問題。
人権問題や労働問題さらには移民の問題などで両国間はそれほどいい状態ではない。
先日俺とメアリーさんを捕獲しそこなったRUのスパイは、実力行使に出たと言った所だ。
但し現在攻撃してきているのは、その下部組織である。
「奴らはテロリストの組織を使いゆさぶりをかけている、宇宙戦艦が飛来してからその頻度が増えている。今回ですでに6回目だ、先日の航空機襲撃事件も半分はRU絡みだと言う話を聞いている」
「それもあって連行されたんだ、なるほど…」
「多分CNから君の情報が洩れている可能性があるな」
「それは知っています、日本でもすでに被害にあいましたから」
「そうか…」
「とりあえず車で空港まで送ろう、私は付いて行けないが向こうに戻ったら娘によろしく言っておいてくれ」
「分かりました、モリソンさんも無理はしないでくださいね」
モリソン氏の母方が住む郊外の一軒屋、彼の母は既に亡くなっており現在は誰も住んでいないが、モリソン氏はUKに帰って来るとこの家を宿泊所代わりに使用しているようだ。
壁に掛けられた肖像画や家族の写真を見ると、彼の母親が次女のエミリアに似ているのが良く分かる。
【遺伝子とはそういう結果を生み出すのですね】
【ああ確かに遺伝子だね】
ガレージから少し古い型のイギリス車を出すと、タイヤをチェックする。
本日はそれほど天候が悪くないのだが、雪は所々路上に残り急ハンドルや急ブレーキは事故が起こりやすいと思われる。
「さあ乗ってくれ」
「はい」
2列目のシートに身を沈めデイバックを膝の上に置き、シートベルトを締めるとゆっくりと車は走り出す。
空港までは20分程度の距離、道を何度か曲がって大通りに出ると川を渡りさらに進んで行く。
「すまないね、もっとゆっくりロンドンを見学してもらいたかったのだが、テロリスト達はその猶予を与えてはくれないらしい」
「いえいえ、貴重な経験をできましたから、UKサバイバーの方たちによろしくお伝えください」
「本当に宗助君は紳士だな、今時イギリス人でも君みたいな人物はいないよ」
「僕はモリソンさんを真似ているだけですよ」
「そうか?持ち上げてくれるな、それじゃ僕はここまでだ、また日本で会おう」
車はいつの間にか空港の玄関口に到着し、俺とメアリーさんはモリソン氏の車を降りる。
彼はその足ですぐに首相官邸へと向かうか、もしくは他のUKサバイバー達と今後の作戦を練るのだろう。
官邸のテーブル下に仕掛けておいた仮想カメラの情報ではすでにテロリストの排除は完了し。
UKサバイバーにほとんど怪我人は出ていない。
名目上はUKの政策に抗議する団体絡みのテロ行為と言う事だが、そのバックにはいくつかの国が見え隠れしている。
捕まったのは移民の極左組織で構成されたテロ組織、RUやCNなどから支援を受けているらしい。




