ロンドンでネカフェ(仮)
ロンドンでネカフェ(仮)
日本のような小さな個室ではなく、まるでレンタルオフィスのような場所。
寝ると言うより仕事をするためのレンタルスペースだ。
そこに仮眠を取ることができるソファベッドが用意されている。
廊下に出て少し進むとコーヒーやジュースのサーバーが幾つか設置して有りその隣には本棚がずらりと並んでいる。
所々に監視カメラが有るので一応セキュリティーもしっかりしている。
「ソファベッドは一つなのね」
「どうぞ、僕は少し調べ物をしますから」
室内の温度は22度ぐらい、外套を脱いでも何とか寒くはなく過ごせる。
だがメアリーさんが外套を取るとドレッシーな姿が露になる、まさか彼女が343歳だと言っても誰も信じないだろう。
「それでメアリーさんは他人のエネルギーを吸って自分の歳を若くできるんですよね」
「そうよ、いけないかしら?」
「相手を殺さないなら別に良いのでは?」
「殺さないわよ!」
「リアルでおとぎ話の中に出て来る人物に遭遇するとは思いませんでしたよ」
「あなただって そう なんでしょ?」
「僕はこの能力を身に付けたのは去年ですよ」
メアリーさんの記憶から人を殺したような記憶は無かった、但し悪い奴に襲われる記憶はいくらでも有った。
彼女が能力を知ったのは20歳を過ぎてからだ、若いときは能力が発動しても相手が貧血になるぐらいにしか思わなかった。
魅了の能力は自分の外見が美しいからと、まさかこれが超能力だとは思っていなかったらしい。
それも30歳を過ぎた頃からはどう考えてもおかしいと気付く、いつまでも若くそして男を魅了するのは外見の良し悪しだけでは理由がつかなかった。
そして何故自分は全く歳を取らず、襲って来た者が自分の言う事を聞くようになるのか色々調べた。
それはまるでおとぎ話、そうまるで魔法の世界に出て来るサキュバスやドラキュラと同じだと。
自分の能力を知り60歳を超えたあたりから、まるで歳を取らない自らの姿を隠すため、地元を離れる決心をする。
地元を離れると同じような超能力を持つ集団と接触し、結果として中央政府の調査機関に自分の居場所を見つけることになる。
そこには彼女のようなSVR達がいっぱいいたからだ、その中でなら自分も普通になれる。
彼らの仲間になり、表向きは大臣の補佐官と言う役職を手に入れたが。
裏では大臣に近寄る敵のエージェントや襲撃者の情報を得るのが任務となった。
不死者とは言うが全く死なないわけでは無い、頭を吹き飛ばされれば生きてはいけないし、能力以上の欠損が有れば彼女でさえ死から逃れることなど出来ない。
「じゃあ頭を吹き飛ばされたら…」
「死ぬわよ」
「心臓を撃ち抜かれた場合は」
「24時間以内に他人か動物の生気を取り込めば修復可能よ」
「へ~」
「ミスター宗助は?」
「完全記憶…」
「え~、まだそれだけ?」
「後は想像にお任せします」
「ハイディングの能力はあるわね、それと もしかして飛行?」
「ありゃ バレた かもしれない…」
「3つも」
「あはは、そのぐらいにしておきましょう」
その間も俺は持って来たタブレットをデイバックから取り出すと、メールとSNSのチェックを始める。
そこにはアイリーンや百合ちゃんから何通かのメールやSNSへの招待コールが入っていた。
【アイリーンか?だがこの場で相手するとメアリーさん絶対見に来るよな…】
【はい、一応メールだけで対応しておいた方がよろしいかと思います】
【そうしておこう】
「あれ?SNSはやらないの?」
「やはりそう来たか…」
「つまらい の~」
「僕の個人情報はあなたにあまり見せたくはないので」
「ケチね~知っていたとしても何もしないわよ~」
「その目はそう言っていないのですが」
「バレ たか~ なんでわかるのよ?」
「だって一応メアリーさんスパイでしょ」
「そうよ」
(もうばれたならしかたないわ)
「対象者のデータを掴み組織の糧にすることが仕事ですよね」
「そうね」
「もうかなり僕はあなたにデータを渡していますけど」
「え~ まだあるんでしょ?」
「あっても出しませんよ」
そう言いながら日本語でメールを返す、相手はアイリーン そして百合ちゃん。
さらに大統領と岩田さん。
全部日本語で書いて出す、後ろからのぞき込むメアリーには何が書かれているのか分からないはず。
一応安全の為彼女の胸についている怪しいブローチはロボ化の時に少しいじらせてもらった。
「はい終わり」
「もう?」
「何を期待しているんですか?」
「え~、日本の秘密組織の場所とか人物とか?」
「日本にはここUKみたいな組織は無いですよ」
「そうなの?」
「メアリーさんは日本に来たことないのですか?」
「東京と沖縄なら行ったわよ、後はえーと 香港も」
「香港は中国です」
「そうなの?」
まるで悪びれず、ばれたならいちいち隠すこともないと言う風にフランクに話し出す。
確かに彼女の力なら怪我を負っても何とかなる、俺が能力を使用して危害を加えないと判ったのか。
あまりにも危機感が無さすぎなのが少し心配、まあ彼女はこうして今まで生きてきたのかもしれないので、調子に乗ってこちらから彼女に合わせ過ぎ無いようにしないと、痛い目を見る可能性がある。
「それじゃいいことしましょう♡」
「しませんよ!」
【あ~、宗助様もったいないです】
【君までそういうこと言う?】
【何のしがらみもなく卒業できますよ】
【だから何のだよ!】
【あとで記憶を改竄してしまえばよろしいかと】
【それは ナッシング!】
【真面目過ぎです】
【ほっとけ】
「え~ 私はソウスケみたいなインテリジェンスな子、好きなのよね~」
「仕方ない」
【スキルロボ】
能力を発現させて彼女を抱きかかえ、ソファに寝かせる。
※35歳、いや日本人から見ると20代後半でも通る外見、身長も180近くあり見事なプロポーションだ。
そんなイギリス女性からラブコールをもらって、断る紳士は宗助ぐらいだろう。




