初めてのUKその前に
初めてのUKその前に
ヨーロッパ、UKイングランドにはもちろん行ったことなどない。
フライト時間はアメリカの時とほぼ同じ時間がかかる。
行き方は2つ、直行便と乗り継ぎだ、たいていの場合運賃の関係で乗り継ぎを選ぶ場合が多いが今回の旅はどちらになるのだろうか…
何故ならモリソン氏が旅券の手配をしたからだ、多分エコノミーではなくビジネスクラス以上で頼むのではないかと思われる。
当然往復の旅券なのだが、またしても三日で帰らなければいけないのが何とももったいない話。
前回アメリカへ行った時もそうなのだが、観光などと言う物は全くせずに帰ってきたのだから。
だが一度訪れる事が出来たなら俺にはロボ化の恩恵である仮想瞬間転移装置により、座標さえわかればカモミーメイト一個で一瞬に移動することができてしまう。
モリソン氏が持っている超能力とほぼ同じだが、その移動距離は月とスッポン。
まさかそれを彼に話すわけには行かないが、いずれこの能力はばれてしまうだろう。
その時までに言い訳だけは考えておかないといけないと思うのだが、果たしてそれまでにうまい言い訳などが考え付くかどうかは分からない。
「え~又旅行に行くの?」百合奈
「何かまずい事でも?」
【なんかずるい気がする…】
そう言いながらジト目で俺を見る百合奈。
だがそれは仕方のない事でもある、行くと言っておいた以上、今更モリソンさんに行けませんとは言えない。
【国生さんも一緒なんでしょう?】
【いや彼女は受験だから一緒じゃないよ】
【そうなの?】
【え?そこらへんは話したんじゃないの?】
【…】
どうやら百合ちゃんとアイリーンの間で少し駆け引きが少ったようだ、アイリーンもどうせなら父とそして俺と一緒にUKに行きたかったのではないだろうか?
アイリーンは今回そのことを百合ちゃんには告げなかった、それは自分もいかないのだからあなたも我慢してねとでも言いたかったのかもしれない。
同じ理由でアイリーンの妹エミリアも受験なわけで今回のUK旅行は残念ながらモリソン氏と俺だけと言う事になった。
次の日…
「呂方君又休むの?」委員長
「ああ、今度はイングランドだよ」
「すごいじゃない!」
「すごくないよ、又日帰りみたいなものだから」
「又例のアプリ?」
「そうなんだよ、勘弁してほしいんだけどね~」
「まあ良い事があった後はそういう面倒事がつきものだと言うし、何事も経験なんじゃない?」
「は~…」
冬休みが終わり早々に海外旅行、確かにそれは忙しすぎる気もしない訳じゃない。
かといって断ればUKサバイバーの動向も探ることができないし、もしかしたら有益な情報を得られる可能性があるかもしれない。
「で?なんで百合ちゃんを連れて行かない訳?」
委員長の言葉に俺と百合ちゃんは固まった。
考えなくもない事なのだが、それができたとしてどんな理由で一緒に行くと言うのか?
学生のうちにラブラブデート旅行とかありえないだろう…
「え~なんでよ(なんでだよ)!」顔真っ赤
「もう諦めたら、皆 知ってるよ~」
いつの間にか俺と百合ちゃんはカップルと言う認定をされているらしい。
確かに毎日一緒に帰るのだ、しかも一緒に暮らしているとなれば、いくら立派な理由があろうともそう考えるのが普通だ。
だが本人たちが知らないうちにくっつけられていたとは、俺も百合ちゃんも寝耳に水の事だった。
【どういう事?】
【そんな事俺に聞いても俺は知らないよ!】
【え~…】
【じゃあ一緒に行く?】
【そうしたら…不純異性交遊って言われるんじゃないの?】
【早めの卒業旅行に友達と一緒に行くって形じゃダメなのかな…】
【そ そういう言い訳…アリ?】
【行きたくないなら別に、留守番してもいいよ】
【い いきたい!】
【ならすぐに予約しなくちゃって、何か忘れてる気がするが…】
【そういえばパスポートは?】
【アッ!】
パスポートは明日申請して木曜日までに発行されるのだろうか?本日は火曜日、後2日しかない。
それに休みを取るなら学校へお休みの申請までしておかないといけないのだ、それはあまりにも無謀な計画で有り、あり得ない話だ。
【それなら瞬間移動で1日だけ私を連れて行ってくれないかな…】
【確かにそれならばできなくもないけど…】
問題はそれが可能な時間があるのかどうかという所、それに その計画を知って母が黙っているのかどうか?まさかついて行くと言われたらどうするつもりなのだろう。
【だめかな~】
【分かった 考えておくよ、でも母さんには言わないで】
【う~ん、それは難しいかも…】
【母さんに話したらまた面倒なことになる】
【う~ん】
学校が終わり帰りの道でまさかCNが手を出してこようとは今の今まで思いもしなかった。
それは駅のホームでの出来事、まさか俺ではなく百合ちゃんまでもが狙われるとは思わなかった。
「ガタンゴトン、次は武蔵境~武蔵境~」
「おい、彼女が大事ならここで降りろ!」
「⁉」
「声を出すな」
割と込み合っている午後5時半の中央線下り方面、俺の斜め前には百合ちゃんがいてその後ろには小声でそう言い放った男がいる。
その男はマスクをしており帽子を目深にかぶっていた。
【百合ちゃんCNの工作員だ、黙って従うけど付き合って】
【?うん分かった】
「武蔵境~武蔵境~お出口は左側になりま~す」
俺はおとなしく横の男に従った、もちろんそれを見て数名のエージェントは同じように武蔵境で下車する。
まさかここまでしてくるとは…
電車の扉が開くと、俺そして百合ちゃんさらに後ろからCNのエージェントらしき男たちが数名下りて来るのだが。
それだけではなく、他にもエージェントかもしくはスパイと思しき人物数名が同時に降りて来る。
「シューガタン」
「押さなくても下りるよ」
「何? そうちゃん!」
腰のあたりにはスタンガンらしきものを当てられているのだが、すでにガードレベルはMAXに上げてあるため、反抗してスタンガンを使われてもほぼ問題は無い。
勿論、百合ちゃんにも同じように設定を上げるよう伝えてある。
だがその前にこんなにたくさんのエージェント及び私服の警官が混ざっているとは思わなかった。
「ハイそこまで」私服警官(麻生義行)警部補
「それは預かりますね」
「な なんだ?なにもしてないだろう!」
「これはスタンガンよね?」私服警官(田村麗子)警部
「あ~あんたらも動かないで!」
「ウッ!」
「逮捕して」
「要人略取及び危険物所持法違反で現行犯逮捕します」
「先輩武器発見!」
「あ~これで豚箱行きは免れないわね~」
ギャラリーの中には三田陸尉と新人であろう鎌田浩一郎陸曹、それに変装したUKの夫婦エージェント、さらにUSAのエージェントらしき外国人まで居る。
まあ彼らは遠巻きに見守ることを決めたらしい、日本の警官が対応しているのだから余計なことをせず黙ってみていた方が得策ではある。
「大丈夫だった?」田村
「はいなんともなかったです」
「ごめんなさい一応お話を聞きたいので署まで同行できますか?」
「あ~そうですよね」
そう答えながら他のエージェントの方を見ると、彼らは俺たちの無事を確認して素知らぬ顔で改札の方へとすでに歩き出していた。
多分どこかへ連絡でもするのかもしれない。
自衛官の方を見ると、何やら同僚と話し合っている。
「そちらの方は?」
「あ 陸自の護衛官、三田三等陸尉です」
「同じく陸上自衛隊護衛官、鎌田浩一郎陸曹であります」
どうやら宇宙人対策班と言う部署は伏せられているようだ、確かにその肩書では相手に伝える事が難しい。
それよりも要人の護衛と言う形にした方が分かり易いのは確かだ。
「ご ご苦労様です、知り合いの様ですし一緒に来られます?」
「はい出来ましたら、同行させてください」
その後は駅前にパトカーが数台、ちょっとした騒ぎにまでなったのは言うまでもない。
そしてCNのエージェントが事情聴取で何を言ったのかはすぐに判明することに。
当然のことながら俺は彼らの体に少し触れる度に仮想カメラと、仮想録音マイクを仕掛けておいた。
取り調べ室では…
『いや~カツアゲしようと思ったんだけどさ~』
『それは本当の事なの?』
『だって高校生のカップルって彼女をかばって金出しそうじゃん』
他の尋問室でも同じようなやり取りが行われた。
結局恐喝未遂と言う事で方付けられ、せいぜい数日の収監で釈放されてしまう事になった。
3人いたCNのエージェント全員がほぼ同じ受け答え、しかも前科が無いと言う。
それにこの3人は国籍が日本だと言う、つまりCNにやとわれた日本人と言う事。
バックにはCNのエージェント、そして傘下にある組織が見えて来る。
特に2名は仲間だが直接手を下しておらず、まさか仲間の一人が本当にスタンガンで脅すとは思ってもみなかったと言う嘘をつく。




