閑話 モリソンSウィリアム
閑話 モリソンSウィリアム
宗助の話を受け内容を精査しUKのSVRと情報部から呼び出された彼はすぐに飛行機でUKへと飛ぶ。
仲間のSVRらも同行したが、UKではそのことで情報部とSVRとの間でもめていた。
「ただいま戻りました」モリソン
「どうだったかね」
「やはりジャパンの外務省から惑星間転移装置のデータを手に入れた方が良いと思われます」
「そうすると外交筋を使わないといけないな」
「すでに日本とUSAで研究は着手しております、早く始めないとCNに先を越されてしまいます」
「カービン君我々が惑星間転移装置を手に入れない場合の損失はどのぐらいかね?」
首相の補佐官として同席しているカービン・テイラーは補佐官になる前、運輸関係の仕事をしていた。
「まずは参加した場合年間で最低100万ユーロのパテント料と別途研究費がかかります」
「合わせるとどのくらいかね?」
「年間の研究費はわが国内での研究と共同研究とに分かれます、我が国単独ですと1000万ユーロ、共同研究で日本との提携企業を使えば半分以下の300から400万ユーロです」
「惑星間転移装置の研究に参加し装置の実験に成功した後の利益は?」
「運輸革命が起きた場合年間で10臆ユーロの輸送費が削減できます」
「すでに日本は実験機で10メートルの転送に成功したと言う話も出ています」
「すぐに日本の外務省経由で研究の参加を打診したまえ、それと研究員も派遣するように打診しておいてくれ」
「かしこまりました」
そう言うとカービンが職務室から出ていく。
「ところでSVRとしてこの件について何か問題はないのか?」
「日本にいるSVRいや呂方宗助は娘の話ですとメシアだと言う話です」
「君も直接会ったのだろう?」
「はい、彼は複数の能力を持っていると言って良いと思われます」
「どんな能力だ?」
「まずは完全記憶です、そして念動力も使えると思われます」
多分モリソンは宇宙船が攻撃した時に相手のデータを盗む行為自体を念動力として認識しているのかもしれない。
「それだけではないんじゃないのか?」
「後は魅了、もしくはハッキングの能力も有ると思います」
「最低3つの能力持ちか…」
「彼は自分の能力を知られることに危機感があるようです」
「まあ私や君も同じだから、それは当然だな」
「だがこんなに早く惑星間転送装置が他国主導で出来てしまうとは…」
「UKではもう何十年も研究していますからね」
「ああ、君の能力を機械的に解析する研究はしてきたが、超能力の機械化までは至らなかったからな」
モリソンの能力瞬間移動、移動できる距離はせいぜい2k程度だが、その研究は何年も前からSVR主導で行われて来た。
だが超能力をそのまま機械化するのはかなり難しいと言って良い。
4千年以上科学力が進んでいる宇宙人だからこそ、その技術を持っているのであって、彼らとくらべれば地球人など原始人に近い状態。
能力の人体実験をしようにもサンプルがモリソン一人では少なすぎる、調べれば他にも同じ能力者がいるとは思うが。
モリソンもオックスフォードに在学中、自身の能力を使い研究していた瞬間移動能力の機械化。
最初は電気や稲妻の応用から考えていたのだが、研究論文はそこから先へと進む事が出来なかった。
宇宙人達の惑星間転送装置を使用した移動方式とは移動と言う概念がかけ離れていた。
そこに到達するには根本から概念を考え直さないと無理な話だったのだ。
「座標空間交換移動航行式…私の能力を現代の宇宙人達が使う航行術が解決してくれるとは思ってもいませんでした」
「しかも他国に先を越されるとは…」
考えようによってはインターネットのデータのやり取りも瞬間移動と言えなくはない。
だから最初のうち瞬間移動は電気で移動する方式として考えられていたのだが、それは違ったのだ。
「どちらにしても日本そしてUSAと2国間にはまだ割り込む余地はあります、我が国が加わればさらに研究は加速するでしょう」
「その通りだな、これからも頼むよ、モリソン君」
SrモリソンSウィリアム、UKの貴族でありSVRの子孫、彼の祖先は2千年前この地に調査で飛来した里帰り宇宙人。
その頃はまだ惑星間転移装置は生まれていなかった、その時に有った技術はコールドスリープ。
時間がかかる宇宙航行を可能としたのは時間を短縮する方ではなく自らの生命を伸ばす方が先だった。
超能力者として宇宙船を動かせば地上から宇宙空間までの移動はわけないことだ、なにせ1トンもの重さを重力を無視して移動させることができるのだから。
だが惑星間の行き来には時間がかかる、だからコールドスリープ装置の開発が最初に求められた。
だが当時宇宙船に有った技術は全てロストしてしまったようだ、宗助のような記憶能力があればそのまま技術を再現できたかもしれないが、当時里帰りした宇宙人達にはその能力は無かったのかもしれない。
ましてや知識があったとしても当時の科学力ではコールドスリープ装置は再現できなかったのだろう、歴史的にもそのような史述は残っていない。
「奥様とお嬢さんによろしくと言ってくれたまえ、それと近いうちにMr宗助呂方を連れてきてもらえると有難いが」
「分かりました、今年は無理かもしれませんが来年早々には連れてきますよ」
グレートブリテンの一角を担う貴族達、その生い立ちはあまり語られてはいない。
過去にこの地へ里帰りした宇宙人に端を発している事は間違いないのだが、その時代はどの大陸も戦国時代だったと言って良い。
国も統一されておらず、ようやくいくつかの宗教を利用して国家統一と言う旗印を元に建国を始めた時期。
そこに能力者達が加わったと言う証拠は何処にもないが、おとぎ話の中にはいくつか彼らが手を貸したと思しき情報が紛れていたりするのだから、おとぎ話もバカにできない。
惑星リズ、そこは死に瀕していた。
だが宗助の力で司令塔であるマザーの記憶を改竄、その方向性を地球と同じ命を大切にするデータへと入れ替えることには成功した。
全ての危機は一時的にかも知れないが去ったと言えよう、今後の問題は地球側がこの後どうするのかにかかって来る。
行き過ぎた科学、その力は革新的ではあるが旧世代の人間にとっては薬にも毒にもなるのだ。
昔よりは戦争などと言う物は少なくなってはいるが、いまだにいくつかの国は領土を広げようと格下の国に圧力をかけていたりする。
宇宙人との対話は多分これからも続くだろう、だがそれよりもこれからは地球の中での話し合いの方が大変になって行くのはどう考えても避けられない。
宇宙戦争の危機は去った、面倒なのはこれからだ めげるな宗助!




