超越者VS殲滅部隊
超越者VS殲滅部隊
その日母は涙腺が緩んだのか、父が帰って来てからもしくしくと涙を流し続けた。
皆には朱里と平太の2人はインドネシアへと帰ったと言う形にしてあり、旅券もパスポートもしっかりと飛行機に乗ったように改竄してある。
空港の監視カメラにまで侵入し嘘の映像を入れ込んだのだから。
次に惑星リズに行くのは地球時間で83日後約3か月後。
それまでは寂しい日々を過ごすことになるが、そうしなければ計画は進まないし、いつまでも彼らを家においておくと言うわけにはいかない。
だがそんなに計画がうまく行くかは別な話だ。
【そうちゃん】
【どうしたの?】
【あの子達大丈夫かしら?】
【もともといた場所に帰したのだからそれほど問題は無いと思うけど】
【何かひっかかるのだけど…】
【どんな?】
【あの場所って宇宙人からは狙われていないの?】
【超越者のグループの話だと今まであの場所は見つかっていないし、もう20年以上殲滅部隊も来ていないと言う話だよ】
【そうなのかな~すごく心配なんだけど…】
【分かったよ近いうちに様子を見に行くよ】
【できれば私も連れて行って】
【考えておくよ】
この母の勘と言うか心配は後日現実になってしまう。
そうあの超越者達のコロニーが殲滅部隊に見つかり、襲撃されてしまう。
《マザー第28地区の廃棄都市に超越者の反応が有ったと報告がありました、いかがいたしますか?》
《殲滅部隊に探らせなさい、もちろん見つかれば殲滅するように》
《はっ!かしこまりました》
殲滅部隊は50人規模、偵察隊が10人先行し超越者のいる場所を特定し、場所が分かれば後は殲滅するだけ。
但し今回そのコロニーには朱里と平太、そしてアーバンとボルドーが潜入している。
勿論戦うのならば彼らも超越者達に協力するだろう。
だがこれがどういう事になるのかはまだ分からない、もしかしたら今の体制を崩すことが今回の事件で難しくなっていく可能性もある。
一方コロニーにいる朱里たちは。
《退屈ですね》朱里
《はい…やることが無い、地球での暮らしはやることが沢山あって楽しかった》
《あなたはこの星が変わったらどうするの?》
《僕は地球に住みたい》
《やはり考えている事は同じね》
《客人!殲滅部隊がこのコロニーに向かってきています》
《分かったわ、どうすればいい?》
《一時400k離れた仲間のコロニーに移動します》
《了解》
だがそこには別の殲滅部隊が向かっていた、潜入していた食糧調達班がその足跡をたどられてしまっていた。
要するに今回殲滅部隊は2か所同時に超越者のコロニーへと攻撃を仕掛けると言う事。
どうする朱里、平太、そして第三コロニーの超越者達。
《どういうことだ?》アーロン
《殲滅部隊は今回2班出ています第一コロニーとこちらの第三コロニーに向かっています》
《これでは逃げられない…》
《第2コロニーは?》
《あそこまで行くエネルギーは無いだろう》
他のコロニーへ行く転移装置はあるのだが、200人からの住人を全て送るためのエネルギーは無いと言って良い。
マザーの監視から逃れて移り住み潜入した仲間が、生活に必要な物資を見つからないように盗み出しては、徐々に生活を安定させては来たのだが。
移動に使うエネルギーを確保するのはかなり難しい、基本的には蓄電池のようなものを使用してエネルギーを貯めて置き。
一日2人ぐらいの移動を可能にしているが、どう考えても数時間で移動させられるのは10人が限界。
それは他のコロニーでも同じこと。
残った超越者達は結果として戦わなければいけない。
《地上戦で使えるスーツは何着ある?》
《現在50着です》
《もう少し盗み出しておくべきだったな》
《はい ですが…》
《仕方ない 戦おう、相手も50人規模ならこちらの方が有利だ、迎え撃つ》
《客人2人はどうします?》
《彼らの能力は分からないが、彼らが死んでしまうと今後の計画が全て消え失せる、それでは我々の将来が白紙に戻されてしまう》
《第2コロニーに転送しましょう》
《その方が良いだろう、但し参戦するならば協力してもらうように》
朱里と平太は惑星リズの戦士の中でも優秀だった、つまり今回コロニーにやって来る殲滅部隊よりも戦闘能力が高いと言う事。
それに2名は宗助から各種の仮想装備を受け取っている、2名はこの星の有毒な大気の中でも平気で暮らせるようなエアクリーナーや放射能除去装置を装備している。
勿論体はロボ化されている為、自分達より弱い超能力では傷一つつかないぐらいに強化されている。
だがこの2名もそうだがフィギュアの2体も宗助の命令で人・宇宙人も含めて殺す事は禁止されている。
《客人、他のコロニーへ移動してください》
《それではここの住人は?》
《それは…》
《私達も戦います、ですが私たちは相手を殺す事を主人から禁止されています》
《ではその判断は我々が請け負います、相手を戦えなくしていただければ、後はお任せください》
《分かりました、では作戦室へおいで下さい》
地下の都市は迷路のようになっているとともに本部のある場所は距離もかなりあった。
朱里たちがいる場所は中央管理棟等からは少し離れていたが超能力で空を移動するのなら数分でそこまで移動できる。
《敵は何処まで来ていますか?》朱里
《コロニーの東10kです》
《何人規模?》
《50人と思われます》
《拘束具はある?》
《一応20個は有りますが…》
《使えればいいわ、私たちが無力化するから捕まえたら順次拘束してもらいます》
《客人、戦っていただけるのですか?》
《一応私たち二人は本部でもエリートでした、戦闘には慣れています、問題は私達2名それにバトルフィギュア2体はご主人から殺す許可は得ていません、相手を無力化したら順次あなた方で捉えて下さい》
《わ 分かりました》
《それから念のため、惑星間転移装置を使ってご主人さまに知らせてください》
そう言うと朱里はカプセルをアーロンに渡した。
《これは?》
《緊急信号の発生装置です、地球専用の物ですから、スイッチが入っていても問題は有りません》
それはUSBをロボ化で発信装置に改造したもの、見た目はただのUSBだが常に電波が出ておりそれを地球のどこかに送ることができれば、緊急な要件だと宗助に分かるはず。
USBぐらいの小さなものならば転送装置で地球まで送るのはさほどエネルギーを食わない。
《では今すぐに転送しましょう、座標は?》
朱里が地球の座標をデータで渡すと、すぐに他の超越者が転送室へとUSBを持っていく。
《これでいい、後は戦うだけ》
《久しぶりだね》
《ええ、私達はそのために訓練を受けて来たのだから》
地下道を地上出口まで超越者達を後ろに従えて、元戦闘部隊エリートの隊長と副隊長が進んで行く。
マンホールのような蓋を上げると、すぐに人の気配がする。
《100メートル以内に敵2名!》
《出る!》
《後の者はこの場所で少し待機》
《分かった》
ロボ化された超能力者、そのスピードもさることながら、判断の速さも素早い。
そして時折バトルフィギュア2体が光学迷彩を使用して敵の出鼻をくじいて行く。
【右から5人新たな敵です】アーバン
【了解】
【先行します】ボルドー
「ガンバキッ!」
「ドンッドカン!」
「カンカンドン!」
「バシュンシュンドカン!」
「バキンドンッバシン!」
【5人沈黙】
《5人倒した拘束して下さい》
《もうか!早い!》
バックに付属していた6つの球と底上げされた身体能力を使い、光学迷彩機能を使用すればあっという間に敵を沈黙させることはたやすい。
それに相手は地上戦をするため各種の機材を背負っている。
その量と数は朱里たちの手に入れた仮想機械と比べれば雲泥の差だ。
敵の持つ電磁ソードや超能力銃が一回も使われずに倒されて行く。
それにバトルフィギュアが敵の死角から武器を無効化しスーツに取り付けてあるエアクリーナーを破壊する。
それは圧倒的だった、だが第三コロニーはそれで良いが第一コロニーでは数人のけが人が出た。
《これで最後みたいね》朱里
《もっと手ごわいと思っていたんだが》平太
《有難うございます客人》
《他のコロニーは?》
《何とか撃退したようです》
約1時間が過ぎ2つのコロニーに派遣された殲滅部隊は、慣れない毒まみれの地上戦で自分達が殲滅されてしまった。
だがそれを黙っているわけはない、当然今度は千人規模で殲滅部隊を送り込んでくるだろう。




