3度目の宇宙
3度目の宇宙
予定では5時間程度で帰ってくるはずだった、だがこうもこじれてしまうとは思ってもみなかった。
宇宙人側の超越者5人は始め俺を快く話し合いの場へと案内したのだが。
《嘘をついたな!》ボボビ
《嘘って何のことだ?》
《お前仲間を連れて来ただろう!》
《そちらが5人に対し私はここまで一人で来たが、他に仲間がいないとは言っていない、逆に聞くが俺に超能力を使用するのは止めた方が良い》
《なんだと!》ボボビ
その場所には何も見えてはいないのだがそれは視覚的にだ、そこには数人の超越者がいるのは最初から分かっていたことだ。
敵か味方か、それが分からない以上最悪のシナリオだけは回避するのは当たり前。
だから宗助はそれを了承したうえで彼らの話に乗ってきたのだから、そこは問題視してはいない。
だが彼らの一人が、何度となく超能力を使い宗助に対して攻撃を仕掛けてきている。
しかも生身であれば即死しているほどの超能力を。
《何してる!》アーロン
《こいつ縛れない…》ボボビ
《おい!》
攻撃されて黙ってみているわけには行かない、しかもピンポイントで心臓を狙って掛けられた念動力。
生身のままならばすぐに殺されてしまってもおかしくはない。
相手の動きがおかしかったので宗助もじっとせず、自らの立ち位置を10センチずらしては元の位置へ戻すと言う少し落ち着きのない状態を維持した。
それでも無理やり能力を使われたため、腕や服にはその圧力がかかり、着ている服が少しよじれる。
ここに来る前に洋服はもちろんのこと、背負っているデイバックにもロボ化を適用して置いた。
今はそのレベルを10段階の最高値、レベル10に引き上げたが、それでも布がよじれるほどの圧力を掛けられている。
そしてその一人は、仲間の制止にも拘わらず攻撃を辞めようとはしない。
《仕方がない》
俺は光学迷彩機能を発動しその男を無効化する。
【ロボ化】
「バタン」
《何をした!》
《面倒なので眠ってもらっただけだ》
《それとも全員同じようにしようか?》
すると別の超越者まで攻撃を始めた、今度は脳波攻撃。
すぐにおれはそいつもロボ化で無効化する。
「バタン」
《やめろ!もう手を出すな!》
《話し合うために来たのにいきなり攻撃は無いんじゃないか?》
《すまない人選を誤った》
《即死能力に洗脳能力か、確かに2つの能力者がいれば敵が少なければ簡単に粛清できる》
《だが一人でやって来た者がそれらに対抗できないとでも思ったのか?それにその力を使うのならば話が終わってからだと思うけどね》
《確かにその通りだ》アーロン
《あなたが指導者か、なるほど前回話したのはそちらの彼だね》
宗助は念話でそう言うと光学迷彩を解き左側にいる人物を指さした。
《そうだ俺が20日前にお前の対応をしたプロンと言う》
《この歓迎はあまりじゃないか?まあ分からなくはないが…》
《すまない》アーロン
《まずは腰掛けて自己紹介をしよう》宗助
先ほどから謝り続けているのがこのシェルターの指導者であり、最長老のアーロン(207歳)。
そして前回、俺と話した事のあるプロン(89歳)、そしてもう一人倒れた仲間を介抱している女性とみられるのがアリナ(66歳)。
最初に攻撃してきたのがボボビ(28歳)LV3サイキッカー、そして2回目に攻撃してきたのがサービル(34歳)洗脳能力。
《私がこのコロニーの管理者アーロンだ》
《彼らは後で元に戻すから安心していい、それでこの状況は味方にもならず敵になると言う事か?》
《いやそうではない、彼ら2名はまだコロニーへ来てから日が浅い、元の生活が長かったせいで敵と判断した者に躊躇なく攻撃するよう育てられたせいだ》
《そうか、こちらに怪我がないので今回は許すが、次は無いと思ってくれ》
《分かった後で言って聞かせる》
《それで結論はどう出た?話合ったんだよな?》
《我々の中では結論が出なかった》
《要するに直接会って話さないと協力するも敵に回すのも分からないと言う事か?》
《すまないその通りだ》
《言っておくが今回結論が出ないと、我々の方からこの星に対して殲滅部隊が来る》
《送り返された攻撃宇宙戦艦の事か?》
《いやそれだけで済むわけがないだろう、我々の星からも攻撃部隊が来るようになる、お前たちもそうやって今まで星を手に入れて来たのだろう?》
《たしかにその通りだ》
《その時にあなた方も敵に回るのかと言う話なのだが?まさか自分達は関係ないとか思っていないよな?》
《そうは思わないが、我々の中でも意見は割れている》
《もしかして元の生活に戻ると言う事か?それは最悪のシナリオだ、我々と完全に敵対することになる》
《それはあり得ない、我々の選択の一つは他の星への移住だ》
《確かにそれならば可能性はあるが、そうなると宇宙船を20隻以上盗まないといけなくなるよな》
《そうだ》
《それができるならマザーの指令を操作することができるはずなのではないのか?》
《…》
宇宙船の設定を現在、占領や開拓している他の惑星にするにはマザーの許可なくしては行えない事だ。
もしそれができるのならばマザーの倫理規定を変更して超越者達を安全な者として認識させることも可能になる。
始めからそれができるなら宗助の話など聞く必要もないことだ。
《それは結局無理な事なんだろう?》
《ああ 確かに無理だ、だが新たに加わる能力者によっては無い話ではない》
《それを待てるのか?来年には399隻の宇宙戦艦が帰還後すぐ自爆するのに?》
《あなた方が第三者に生活を委ねるのが長かったのは仕方のないことだが、このコロニーに移住した後考えなかったのか?長くは続かないと》
《考えたが…》
《俺の計画を話そう、その計画に乗らなければあなた方の明日は無いと思った方がいい》
それからは自分が考えた青写真をすべて話して聞かせた、もちろん計画実行には超越者が全員協力する事が大前提。
まずは宗助の能力を使い超越者5人に能力の底上げをする。
こちらもリリーを含めたAIロボットを同じく5体サポートに付ける。
最初に行うのはマザーがいる中央指令施設の制圧、その後指定施設に潜入しマザーと言われている管理コンピューターをダウンさせ再起動、もしくはマザーの完全なハッキング。
その後倫理規定を改竄し無害な自治管理データに変更させてもらう。
それらデータの変更や改竄はリリーさんに委託する。
そして朱里と平太を指令のサポートに付ける、不慮の事態を考えて2人は問題のある場所へすぐに移動できるようにする。
彼らの話から、攻撃してくるのは機械化ロボットと、超能力戦士と言う事だが。
宗助の能力で仲間はロボ化して強化すれば問題ないと思われる、なにせ敵側にはほとんど超越者がいないのだから。
潜入している超越者達には事前に計画を知らせておいて万が一の時にはサポートしてもらう。
その後は各市の指導者の洗脳、AIマザーの設定を変えても従わない管理者がいた場合、各市のトップをこちら側へと思考情報を変えなければならない。
マザーからの指令が彼らにどこまで影響力があるのかが一番のカギとなるのは言うまでもないことだ。
なにせ今までマザーに全てを委ね生活してきたのだから。
その後は地球から工作隊が来た後、事情を説明すればそれで戦争は回避されることになる。
戦後の補償問題は各国とこの星の指導者との話し合いと言う事になるが、それ以上の戦後補償には、できれば宗助自身は関わらない方向で作業を進めるつもりだ。
学生の身分であまり深く関わると抜け出すことができなくなってしまう、そうなれば最悪学生を辞めざるを得ない状況にまで陥ってしまうだろう。
一番のネックは朱里と平太の処遇になるかもしれないが、どうしてもUSA側が許せないと言う事になればどこかで手を貸さなくてはいけなくなってしまうことになる。
今考えても先のことなど分からないのだが、最悪2名をどこかの星に逃がすことも選択肢に入れておかなければならない。




