救世主ならば
救世主ならば
いつの間にか、多目的スペースの真ん中にでかいモニターが運ばれてきて、その前には楕円形のテーブルが置かれ上にはノートPCが載せられている。
「それでは皆様ご着席下さい」宗助
「なに何?」香織
「これより私が宇宙人から手に入れた情報の一部を皆さんに公開します」
実は前日モリソン氏に頼んで会場となる場所を押さえておいて頂くことにしたのだ。
勿論そのお代金はモリソン氏が出すのだが、その見返りはやはり転移装置とハッキングアプリの情報。
ちなみにハッキングアプリは各国の専用バージョンを範囲別に10カ国分作成して有り、アメリカ経由で契約が成立すれば各国へと渡すことになっている、勿論無料では無い。
「この映像はアメリカで大統領にお見せした映像の一部です、もちろん全部を明かすことはできませんので編集しております、全部の情報が欲しい方はアメリカ合州国において外交官を通しての交渉になります」
一応人工子宮のデータは全体の4分の1を編集したもので、この短い情報のままでは研究をすることもできない、映像を録画されたとしても何もできないと言う事。
結果としてアメリカのペンタゴンにでも侵入してデータを盗むか、国家予算レベルの金銭を使うかしないと全体の情報は手に入れる事ができない。
「彼らは今回地球を資源惑星として攻撃しました、彼らの目的は我々の絶滅であり文明の完全破壊です」
「本当なの?」陽子
「本当ですよ、たまたま僕がアプリを使用して宇宙戦艦のコンピューターをハッキングして送り返しましたが、彼らは必ずまたこの地球にやって来るでしょう」
「それは何時?」ジョルジョ
「私の計算では7か月後ですが彼らの科学は地球より4千年以上は進んでいるので、もしかしたら明日また攻めて来るかもしれません」
「そんな…」キャロライン
「あなたはどうやって送り返した?」アミール
「あるアプリを使用しました、そのアプリを使用して宇宙戦艦のコンピューターにハッキングを仕掛け指令を書き換えることに成功しましたのです」
「そのアプリは?」
「すでにアメリカと日本の軍部には渡していますが、無料でと言うわけには行きません」
「日本では有事の際にしか使わない約束で月々使用料を頂いております、アメリカからも同様に使用料を頂いております、これらにはアメリカを通して私との契約書が必要となります」
「無料と言うわけには行かないのか?」
「契約上そういうわけには行きません」
「先ほどの映像は又別なのですか?」
「先ほどの映像は宇宙人から手に入れたデータであり人口子宮のデータの一部です、こちらは各国の首脳以上の方とアメリカ側の外交を通じて、交渉していただかなければ得る事が出来ません」
「他に質問は?」
アラブ首長国連邦から2名の王族が今回新たに加わっていた、彼らの国にも最低1艘の宇宙戦艦が襲来していた。
砂漠の中に降り立った破壊専門の機械だが被害はそれでも数百人に上った。
アラブ諸国ではどこの家庭にも銃を常備しているが、それらの武器は当然のことながら宇宙人の作った殺戮ロボットには通用しなかった。
2時間と言う短い時間だったが、立ち向かう勇敢な戦士ほど殺されてしまった事は、彼らの心にも深く傷を残していた。
やられたらやり返す、その思いが強かったが、その相手が100万光年離れた星にいるとは思ってもいなかった。
「それではすでに惑星間転移装置は日本とアメリカで作っているのだな」トマソン
「後3か月で装置は出来上がり実験を始めるそうですよ」
「ザワザワザワ」
「他の国には黙ってみていろと言うのか?」ジョルジョ
「共同で参加するのならば2つの国に対して外交で交渉してください、僕にはどうすることもできません」
「はい!宇宙人が能力者と言うのは本当ですか?」アイリーン
「今回攻めて来たのは彼らが持つ殲滅部隊であり無人の破壊兵器を乗せた戦艦です、次に来るのは生身の宇宙人の可能性が高いですが、彼らは念動力を使用するサイキッカーの集団です。しかもその力は前日アメリカに現れた2名の宇宙人が起こした事件でもお判りでしょう、普通の地球人にはなすすべが有りません」
「フェイクじゃなかったのか?」ハッサン
「確かにアメリカの映画で同じようなものがありますが、その後日本でも自衛隊が襲われています」
「太平洋上の島への墜落事故だったよな、あれは事故じゃなかったのか?」ジョルジョ
「まあタイミング的には事故で処理したいと言う所ですが、嘘だと思うならば確かめてみる事をお勧めします」
「はいそちらのかた」
「この情報は私の国にも?」
「特に規制はしません、本当の事ですから」
「はいそちらのかた」
「あなたは本当に救世主なのか?」ハッサン
「宗教学的に言えば救世主としたいと思いますが、違います はいそちらの方」
「宇宙人は何故攻めて来るの?」エミリア
「彼らは自らの生活を機械に託しました、自然を壊すことにためらいを持たないようにして合理性を重視したために、資源が有る星を見つけては破壊と開拓そして搾取のみを行います、今回地球がその対象となったようです」
「彼らは何処から来ている」ハッサン
「地球から100万光年離れた宇宙からやってきます」
「100万光年!」ハッサン
「惑星間転移装置で対抗できるのか?」トマソン
「95%の確率で防げないと言えます」
「ではどうするんだ?」
「地球でも対抗する術が必要です、無人の宇宙船ならばハッキングアプリを使用して送り返すのが一番確実です、生身の宇宙人に対してはこちらもサイキッカーを探すのが私は現在一番の対抗策だと思います」
「それでサバイバーなのか…」
「猶予は数か月しかない、相手の宇宙人に対して対抗できる超能力者を早く見つけ、そして訓練することができれば宇宙人を撃退することができるかもしれません」
「君はサイキッカーじゃないのか?」トマソン
「そうだともいえますし違うともいえます」
「私たちの中にも超能力者はいると?」チャーリー
「いますよ、宇宙人は過去にこの地球から飛び立った地球人の末裔です」
そこからは何故宇宙人が他の星へ移り住み、独自に繁栄していったのかを話すことに。
そして過去に一度離れた宇宙人の中にもこの星へと逃げ返った、もしくは里帰りした宇宙人もいる事を話すことになった。
「ではなぜ奴らはそれを忘れた?」
「機械=マザーと呼ばれる電子頭脳の中には多分まだそのデータはあると思われます、ですが彼らはその電子頭脳に依存し電子頭脳は現在の宇宙人が一番良いとされている、合理的な道を探したため、この地球の事は資源惑星の一つだと判断したのではないかと思われます、これは僕の推測でしかありませんが」
「過去にこの星へ帰って来たサバイバー達と、今回攻めて来た宇宙人とはまるで関係が無いと言って良いでしょう、逆に彼ら宇宙人と対抗するならば里帰りしたサバイバー達を抜きにしては考えられないと思います」
「君は私達にも参加してほしいと?」モリソン
「できるなら」
「超能力か…」チャーリー
「そんな力が有ったら仕事も楽よね~」スーザン
「超能力は誰にでもあります、但しその力が大きいか小さいかです」
「もしかして私たちの国にもいるの?」陽子
「そういえば私も聞いたことがある」ハッサン
「宇宙人と戦うのなら自分の国にいる超能力者達を集めるのが一番の対抗策と言えるでしょう、惑星間転移装置で惑星リズに行っても戦えなければ意味がありませんから」
「良い話を聞いた、私達はこれで マッサラーマ」
「あたしたちもお暇するわ、またね宗助クン」
そう言うとアラブの2名と中国の2名は席を立ち会場を後にする。
「Mr宗助、私達2人はその話を聞きに来たわけでは無かった、でも事実を知ったわ」シルビア
「アメリカにもサバイバーがいます、誰とは言いません、基本的に優れた人間は殆どがサバイバーだと言っても構いません、今はそのサバイバーいいえ、テラサイキッカー(地球の超能力者)達を探して侵略者である宇宙人達に対抗する準備を進めてください」
「ジャクリーン大統領はすでにその作戦を進めているはずです」
「それならば私たちもやらなければいけないな」モリソン
「UKにも何人かはサイキッカーがいるわ、彼らに協力を仰ぎましょう」
いつの間にか併設されたレストランから飲み物が運ばれて来た。
「少し休憩しましょう」モリソン
「まだ続くの?」エミリア
「つまらなくなってきたかな?」
「その通り~」
「ここからはお父さんにも話してもらわないといけないんだけどね…」宗助
「我々のルーツか、まだエミリアには少ししか話していない事があるからね」
「サバイバーの話?」
「ああ、私で10代目だがUKの爵位持ちのほとんどはサバイバーだ」
約1500年から4000年前ローマ時代から前のエジプト文明に登場する偉人はほぼサイキッカーでありそのほとんどがサバイバーの起源だったと言う話。
モリソン氏もキリスト生誕から続く中世ヨーロッパの時代に祖先がこの地にやって来た。
宇宙を簡単に飛び回れる科学力を手に入れたが、その資源を確保するのは難しい。
中にはやっと資源惑星である星にたどり着いても何らかの事情で帰る事がかなわず。
この地球で生きていくことを余儀なくされた宇宙人もいる。
多分その時代にはまだ無人のロボットによる殲滅計画までは科学が追い付いていなかったのだろう。
そんな中で資源を探すために送られて来た宇宙人は持っていた知識を使い地球人達と一緒に生きていくことを選択した。
自らが持つ超能力は彼らが生きるための要だったに違いない。
うまく地球人に交じりその中で地位と権力を身に付け徐々に支配層へと昇って行く。
そうやって時代の節目を乗り越え現代まで命をつないできた。




