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一夜が明けて

一夜が明けて


昨夜のことはすでに過去の記憶になった、好きな男の子と共有した隠し事。

その内容は多分自分一人で抱えるには難しいことなのかもしれない、だがすでにもう一人 彼の母親が全て受け入れているのが百合奈の不安を和らげてくれた、自分はより深く信用されて仲間になった喜びの方が大きい。

そう感じながら手に入れた不思議なスキルを使い、洗い物をしながら脳内通信で宗助と話をしている。


【それで宗助は何もしなかったの?】母

【お母さん、それ以上はちょっと…】百合奈

【もう百合ちゃんもだけど宗ちゃんもビビりなんだから、だって宗ちゃんは洋子ちゃんの全裸を見ちゃったのよね】

【そうなんですか!】

【あ まずかったかしら…】

【…】


母から昨日の秘密を聞きすぐに宗助への単独通信へと切り替える。


【宗ちゃん】

【何?】

【昨日洋子さんの裸を見たって本当?】

【…】

【女の子のは・だ・か】

【仕方が無かったんだよ、まったく母さんはやってくれる】

【分かった、今度見せてあげる】

【何言ってんの!百合ちゃん飛躍しすぎだよ】

【だって~】

【百合ちゃんはそのままでいてくれないと僕は逆に困るんだけど】

【だって見たいんでしょ】

【いや興味はあってもそれは自然にそうならないと俺は嫌なんだ】

【じゃあまだ見せてあげない】

【え!】

【やっぱり見たいんでしょ?】

【百合ちゃんあまり僕をからかわないでよ】


椅子に腰かけたままじっと百合ちゃんの後姿を追っていた、多分俺の顔は真っ赤になっている事だろうロボ化しても顔色の変化はすぐに止められないようだ、特に意識していない時は尚更。

百合ちゃんは後ろを向いて洗い物をしているのでその顔色は分からない、だが流れてくる感情は俺をからかって楽しんでいる様子だ、ちょっと前までは怒っていたのに。

まさかこんなことになるとは、百合ちゃんにROBO化の事を話すのは少し早かったかもと後悔している。


《主どうしました?》

《何でもないよ》


俺の隣には平太と朱里がいて逆の席には愛菜と洋子さん、愛菜のサッカー話に洋子さんは何とか付いて行っているがどちらかというと話に乗り切れていない。

そして向かいの席には昨夜遅く帰ってきた父が、またもや新聞を開いて目を背けている。


「中々昨日の酒が抜けないな…うちの会社の株価はと…」


父は昨日も若い女性にまとわりつかれ、何とか振り切ったのを知っている。

護衛に付けたアーバンの映像には電車の中できれいな女子が父によりかかり眠ろうとしているのをとっさに避けていた。

勿論その美形女子は狸寝入りを決め込んでいたのも分かっている、そして昨日洋子さんの脳内に有った情報から彼女もレイランだと分かった。

全く女子大生まで使うとは、だが逃げ足は父の方が上回っている為、失敗して舌を鳴らして去って行く女子大生の姿が何とも言えなかった。

(失敗したからと言って舌打ちは興ざめだよな…美人なだけに)


「そろそろ行くかな」

「じゃあ駅まで一緒に」宗助

「あ~じゃあ洋子さんを送っていって おにい」愛菜

「いいわよ、見送りなんてしなくても良いから」ようこ

「どうせだから途中まで一緒に行きましょう」ゆりな


円陽子こと燕陽鋒は何故かバツが悪そうだ、昨日の記憶があいまいなことも有って。

今後どうするか決めかねているような感じ、自分がどこまで宗助の情報を掴んだのかがはっきりしないと言う表情。

でもこのシチュエーション、彼女の計画内では順調なはずだと思いたい。

それは宗助側から見れば楽観的な見方だが、結果がどうなるのかは彼女が上に伝える情報でかなり変化するのを忘れてはいけない。


「行ってきま~す」愛菜

「行ってきます」父

「行ってきまーす」百合奈

「それじゃ」

「お邪魔しました~」洋子


あわただしくペントハウスのエレベーターに5人で乗り込む、何事もなく一階のエントランスへ到着したが、その間の会話は女子達のみが勝手に話している。

特に百合ちゃんはわざとそれもこれ見よがしに明るく話している、まるで洋子さんの記憶を確かめるように。


「洋子さんって彼氏とかいないんですか?」

「え~いないわよ」

「そうなんだ」愛菜

「そんなにきれいなのに?」百合奈

「そうかな~」


何故か洋子は俺をチラ見する、百合ちゃんの会話は洋子さんの考えている事をじわじわとえぐって行く。

宗助の事は好きになったが、だからと言ってすぐに寄りかかり鹵獲しようと、今は考えていない。

スキルを使いどこまで記憶を操作したら、どういう反応を見せるのかは俺にもあまり分かっていない事だった、百合ちゃんはわざとその反応を引き出している様だ。

有難いことだが同時に女子のことが怖いと感じる、百合ちゃんはできるだけ敵に回さないようにしないといけないと感じた。

まるで母2号という感じ、その言葉で反応を見て相手の気持ちや行動を測っていく。

俺は百合ちゃんにそんな機能を植え付けた覚えはないのだが…


「宗助君もそう思うでしょ?」

「え?何が?」

「おにいに聞いても無駄ですよ~、それじゃ私はこっちだから」愛菜

「またね~アイちゃん」洋子

「バイバイ」


中学校は道を挟み反対側へ行くのでここからは4人で歩き出す、父はすでに俺たちの話にあまり関せずに歩いている。

それよりも昨日のような女子が何時カマを掛けて来ないかとビクビクしている様子だ。

すると案の定、駅前に昨夜の女子大生が人待ち顔でいるのが見えた。

片手にはスマホを手にしてなにやら文章を高速で入力している。

(なんであんたがいるのよ)

(うまく行ってる様子じゃない)

歩きながらスマホを操作しながら情報を伝達し合っている、目の位置に取り付けたカメラには2名のやり取りがSNSを通じて表示されるので丸わかりだ。

(それで今日はどうするの?)

(私は一度学校へ行くわ、次は今度の土日にアタックするわ、そっちは?)

(このおじさん逃げんの早いんだよね、あたしも今日から宗助君に変更しよっかな~)

(まちなさいよ、こっちはうまく行っているんだから横から変なことしないでよね)

(え~あたしも若い子の方がいいな~)

(じゃあ土曜日は私がやるから日曜日は譲るわ)

(了解)


目くばせをすると女子大生はそのまま駅の中へ、当然のことだが2人は俺たちが乗る方向とは別な電車に乗って行く。


「それじゃ宗助君有難う 又ね」

「バイバイ」


そして俺と父そして百合ちゃんは電車に乗り込むとようやく父が重い口を開いた。


「あの子は何処の子なんだ?」

「Y高校の3年だと言う話だよ」

「あの美貌は高校生とは思えないな」

「パパさんもそう思うのですか?」

「いや百合ちゃんといるからもう免疫ができたが、宗助も気を付けた方が良いぞ、最近きれいな女の子に寄って来られて私も困っているんだから、まさかモテ期なんてことは無いだろうけど」

「父さん、きれいな花には棘があるって言うのはすでに確認済みだよ」

「宗ちゃんなんのこと?」


そういいながら俺の横腹をつねって来る、(痛い)まさか…ロボ化同士だと相殺?いやそんなはずは無いと思うが。


【宗助様同じロボ化された体はニュートラルになります】

【マジか…そうなると精神汚染されたときは困るな、対策は練っておこう】

【かしこまりました】

「それじゃ 父さん気を付けてね」

「宗助もな、百合ちゃんもまたね」

「はいお仕事頑張って!」


やや混みあっている電車から降りると何時ものように通路を移動する、改札でクラスのいつものメンバーと合流し学校への道を歩いていく。

本日の尾行は新人が担当しているらしい、後で岩田さんに聞いておこう。


「おはよう変わりはないか?」米田

「おはよう米田君」百合奈

「おはよう変わりはないぞ、それよりテストはうまく行きそうか?」

「今度のテスト勉強はばっちりだ!」

「おはよう 米田本当かよ」東山

「ああ、やまはしっかり張らしてもらった、カギは現国だな」

「いや 物理が今回やばい」

「あ そういえば物理は今回新しい先生が担当になったんだよな」

「坂上先生でしょ」ゆりな

「おはよう皆」委員長

「おはよう」

「坂上先生って教育大だっけ?」宗助

「おはよう、なになに」金田

「新任の坂上先生だよ」

「坂上紀香、28歳独身、B85W62H88」米田

「なんだよそのデータ」金田

「さいてー」委員長

「坂上先生彼氏はいるみたいだぞ」

「そんな情報仕入れてないで勉学に励まないと赤点喰らうぞ!」宗助

「いやテストの傾向は先生の情報に繋がるんだぞ」米田

「昨今は先生用のテストのネタがちゃんとあるって話も聞いたな」東山

「そうなのか?」金田

「毎回違う問題を作るのは大変だろう」東山

「確かにそうだが」金田


まあそのネタが数千以上あれば山を張るのもなかなか難しい、担当科目の先生の出題傾向が分かればどういう出題の選択をするかぐらいは分かるかもしれない。

だがそれで確実に点数を取れるのは50%ぐらい、一番はやはり数千ある問題と答え全部を丸暗記しておくのが一番だ。


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