CN(レイラン)
CN
そのテクニックは先ほど見た通り相手の欲望を助長させる、それは一種の超能力と言えなくもない。
ちなみに彼女達はそういう能力を訓練で身に付けているが、円陽子が持っている能力は先天性のものだと言える。
操心武功、特に女性が修行した武術であり一種の踊りに近い、後に太極拳の分派になった女子御用達の武術武功。
まれにその達人の中には指の動き、目の瞬きだけで敵を魅了し勝利に導くと言う強者もいたと言う。
彼女はそうした一族の末裔であり、生まれながらにその資質を持っていた。
だが彼女はその武術を教わったわけでは無い、レイランとなるための訓練は受けたが元々の素養が彼女には初めからあったのだ。
「ママ帰ったよ~」
「おかえりなさい、今開けるわね」
駅から数分歩いた場所にある高級マンション、今までそこへ入る宗助の友人たちは感嘆符を連発したが、今日訪れた妖艶な女子高生は高級マンションを見てもさほど驚く様子もなく愛菜の後に付いて行く。
「きれいなマンションね」
「あ そう思います?でも来年引っ越すんです」
「そうなの?」
(と言う事はデータに有った写真の新築ね)
「あいちゃんで~す!」
「おかえりなさいませ、愛菜様」
愛菜は音声と指紋のセキュリティーを解除すると、玄関では母が出迎えていた。
「おかえり、お友達も一緒なのね 確かお洋服が汚れたとか、すぐ洗濯機に入れるからだしておいて」
「初めまして円陽子です」
「まあ キレイな子…」
何故か火花散る、それは何故か、多分本能。
母は円が男の敵だと本能で感じていた、だからと言ってこの場で拒否はできないのだが警戒は怠らない。
【宗ちゃん、アイちゃんが連れて来た女子高生要注意かも】
【なに?】
【映像見てみて】
【あ~綺麗すぎるね】
【でしょ、アイちゃんのお友達ならほとんどスポコンだもの】
【あとで接触してみるよ】
【え?それはまずいんじゃない?】
【なんで?】
【百合ちゃんに悪いわよ】
【リリーを仲介して接触しようと思うけど】
【ああ それならいいわよね…】
【母さんそれ おせっかいだと思うよ、今日百合ちゃんとアイリーンは挨拶してるし。向こうのお父さんにも会ったからね】
【そうなの?】
実は家具選びの最中にアイリーンとその父親に会ったことは直接母には言っていない。
多分百合ちゃんもそのことを母には告げていないのだろう、特に問題は無いと思っていたのだが、後で母にこのことで文句を言われるとは思わなかった。
【まあいいわ、じゃあ後でなにかあったら知らせてね】
【そうする】
「どうぞ」
「お邪魔します」
「あたしの部屋で待ってて」
愛菜は自分の部屋へと円を通す、明りの下で見てみるとかぶったジュースのせいで制服の白いブラウスは黄色く変色していた。
「わー染みになっちゃったね、ついでだからシャワーも浴びちゃう?」
「いいの?」
「大丈夫 大丈夫!」
そして風呂場に連れていかれたのだが、何故かそこには呂方宗助がジャグジーでくつろいでいた。
何故そうなったのか?もともとこの時間は宗助が風呂に入る時間帯であり、先ほどの母とのやり取りの間、すでに彼はジャグジーにいたのだ。
そして愛菜は一応確認したはずなのだが彼女は脱衣所に何も衣類が無かった事を確認し、そこには誰もいないものだと思っていた。
そこへ円は通された、白いブラウスやスカートは籠の中へと入れられブラとショーツも次々に籠の中へ。
そしてシャワールームのドアを開けると、その中へ入って行く。
たまたま中は水蒸気にあふれ遠くまで見る事は出来ずジャグジーのジェット水流の音で宗助にも誰かが入って来るとは思わなかった。
シャワーを浴びた後、円は側に置いてあるシャンプーを手に取るとジュースのかかった頭髪を洗い出した。
この時間帯、宗助のジャグジー使用時間は結構長い、円は頭を洗いそして体をボディシャンプーを使い丁寧に洗い出す。
そして10分が経ち、円も風呂へと入って行く。
そして湯舟に身を沈め、独り言のように言葉を発する、それは円にとっては大失敗だった。
「全くこんなに頭から濡れるなんて…スパイも楽じゃないってーの!」
「そういえば橋本さんはどうやってターゲットに近づくんだろう?ふ~~」
「それはどういう事?」
「え?あ!」
「スキルロボ」
【全く…どうしろって言うんだよ…】
【とりあえず情報を見て見ましょう】
【頼む】
宗助はジャグジーに身を沈めていたが一応注意は怠らなかった、だがどの段階で出て行こうともニアミスは避けられないことを知り、光学迷彩機能を発動させ彼女が移動するのを待っていた。
するとその口からとんでもない言葉が発せられるとは宗助も思わなかったのだが、それよりもその裸を見てしまい宗助はその処理に困ることに。
【CNのスパイですその名称をレイラン(玲蘭)というそうです、本名燕陽鋒、身長170センチ体重52kB86W57H83県立Y高校3年生、母方の出身地が中国福建省、父が日本に帰化しています、彼女自身は母の帰京の際あちらで特務兵として認定を受けています。その見返りはお金と名誉、そして未来永劫の地位です】
【そこまで美味しいんだ、それじゃ美人な女子は引き受けちゃうよね】
【彼女は18歳なんだろ?】
【中国の軍部の位置づけははっきりとはわかりませんが、彼女が中国に亡命したならばかなり高い地位に推挙されるはずです】
【その代わり自由は無くなると思うけど、若い時は後のことなど考えないからな~】
【宗助様どうせなら逆に鹵獲してしまった方が良いかもしれません】
【逆?】
【もともと彼女は宗助様を鹵獲するために来ております、失敗すれば他のエージェントが次々と送られてきます】
【それは又面倒だな…】
【それならば彼女に絞って活動を許可したように見せかければ面倒な後続はカットできるのでは?】
【でもどうする?】
【記憶の中に宗助様の写真とそれを見た彼女の印象がありました、彼女は40%興味を抱いています、彼女の鹵獲計画は最後のHまでOKと言う意思を表示しています】
【マジか…これ以上面倒事を増やしたくないのだが、そうしないともっと厄介になるのか むむむ…】
【恋と愛を25%の割合で合成、アイリーン様と同じように愛情レベルを50%に設定、シュチエ―ションタイプを1にします】
【シチュエーションタイプって?初めて聞いたんだけど】
【恋愛のタイプです1は一目ぼれです、2は会う回数による+要素で変化、3は百合奈様やアイリーン様と同じ助けられたことによるシンデレラ・ナイチンゲール症候群、4はなんとなく一緒にいる空気のような愛情・幼馴染です、5は腐れ縁離れたくても離れられない親子のようなタイプ】
【要するに1が一番強い恋心で5になるとそれほど強く愛情を感じていないと言う所?】
【はい但しこの設定は始めだけです】
【どこから仕入れたの?そんな設定、いやそんなことはどうでもいいが】
一応まだ光学迷彩を使用したままで彼女の体を湯舟に沈まないように肩を押さえている。
目の前には豊かなふくらみと綺麗な顔が有り、目のやり場に困ってしまう。
勿論少し目をずらせば湯舟の中に長い脚とその他が見える事だろう、だが今はそれどころではない。
「まどかさん洗濯物洗っておくわね」母
【かあさん彼女の着替えも用意してあげて】
【分かったわって!え?】
【宗ちゃんどこにいるの?】
【もちろん浴室だよ】
【何しているの!】
【勘違いしないで、もともと俺が入っているところにこの子が入って来たから出られなくなったんだよ、もちろん光学迷彩で見えなくしてあるから】
【それでこれからどうするの?】
【どうもしないよ、彼女CNのスパイだから】
【やっぱり!】
【なんだ?母さんも知っていたの?】
【だって一目見て敵だって、いいえなんとなく似た者同士って感じで、よからぬ考えを持っていそうなそんな感じがしたのよ】
【それってかあさんもよからぬことを考えているってことじゃん】
【あら?そんなことないわよ~】
【まあそれは置いておいて、彼女はCNのスパイでレイランっていう鹵獲専門のエージェントだって】
【一応俺の事を好きになってもらう事にして、他のエージェントを防ぐように命令しておくから】
【インラン?そうちゃんそんなこともできるの?】
【玲蘭だよレ・イ・ラ・ン、そうしないと大変でしょ】
【そうだけど私にはしないでよね】
【しないよ、したら面白くないでしょ】
【あら?そうかな~それならいいわ、じゃあ着替え持ってきておくわね】
【ありがと】
(なんだかな~)
その後、彼女の目の位置に仮想カメラを仕掛けてからロボ化を解く。
「あれ?眠っちゃった?」
その後彼女はジャグジーへと進み約7分ほどジェット水流を楽しんだ。
俺はと言うと光学迷彩を使用したまま脱衣所へと出るとタオルを纏い水分を拭きながら自分の部屋へ、通路でおまけのニアミスに会う。
そこには百合ちゃんがトイレへと来ていた、そして言葉を発せずに顔を手で覆い真っ赤になってトイレ内へと駆け込む。
(なんだよ、おれ何か悪いことした?)
(〇×▽…びっくりした、見ちゃった宗助君の体)
俺は自室へと戻ると何事も無かったかのようにくつろぐ。
【百合奈様の反応はいい感じですね】クリスタル
【何がいい感じなの?】
【今後進む方向性としてはちゃんと相手の体に対して興味があった方がよろしいかと】リリー
【君までそういうこと言う?】
【女の子もHなことは考えますよ~】ルミナス
【そうですよお兄ちゃん】キャンディ
【は~?】
【今後女子への対応は少し複雑になりましたね】
【それは仕方ないでしょう】
【もてるのはいいことです】
【それにしても円陽子氏は美人ですね】
【俺が普通の社会人なら一発で鹵獲されるだろうね】
【やはり興味があるじゃないですか】ルミナス
【正常な17歳なら当然でしょう】リリー
【宗ちゃん私のトレーナー上下貸しておくわね】母
【有難う】
部屋で髪を乾かし部屋着を着てタブレットをを操作しながら時間をつぶす、円陽子が風呂から出てリビングに行くタイミングを見計らう。
余り早く出て行くと余計なニアミスが発生し収集が付かなくなる。
俺は少し経ってからリビングへと向かうと、そこには妹と先ほど風呂場でニアミスした円陽子がソファーに座っていた。
「あ お兄ちゃん」
「えっと こちらのきれいな子は?」
「え~と」
「こんにちは円陽子です、今日愛菜さんに助けていただいてお邪魔しています」
「ああ そうなんだ初めまして僕は呂方宗助、愛菜の兄をしていますよろしく」
「か カッコイイ!」
「え?どこが?」愛菜
「あ ごめんなさい初めて会ったのに失礼だったかな~」
「いや あの は~?」
「はいコーヒー、円さんはウーロン茶ね」
「ありがとうございます」
「愛菜さんにこんなカッコイイお兄様がいるなんて」
「どこが?」
「アイちゃん宗ちゃんは結構モテるのよ~」
「そうなの?まあそういえば外見は悪くないけど、なよっちい感じがするじゃん」
「は~?」円
「違うの?」
愛菜の美的センスは少し偏っている、彼女のカッコイイは、かの有名なサッカー選手であり、基本的にスポーツしないオタクなど範疇外なのだ。
つまり顔は関係ないと言う事になるのだが、そういう先入観を抜きにして考えれば宗助はかなりモテ顔の部類なのを妹は知らない。
「アイちゃんのカッコイイはサッカーバリバリのAクラス選手でしょ」母
「当然でしょ!」
「あ~スポーツしていないと除外される恋愛観なのね」円
「円さんはこんな感じが好みなの?」
「顔は好みだし、体の線もジャストマッチ、普通オタクなら少しぽっちゃりしていたりするのに、本当のオタクなら頭もそれほど良くないはずよ」
彼女の先入観も少しずれていたりする。
「円さんお兄ちゃんの事詳しいね」ジト目 愛菜
「え?そうかな~」
それからはなぜこうなったかを愛菜の口から語られる。
だがその後はどうするのか、円陽子にとっては計画通りであり呂方宗助を虜にする完璧なチャンスが訪れる。
「じゃあ今夜はどうするの?」
「泊って行けば?」母
気が付けばすでに夜の10時近い、いつの間にかソファには百合奈まで座って成り行きを見守っている。
女子4人いや3人か若干名一人は女子とは言えない、と男子一名。
父は今日残業になると言う事でアーバンを護衛に出してある、ボルドーがアイリーンの護衛だ。
宇宙人2名は今日の買い物を総合的にチェックしている、彼らは母星へと帰ってからの事を考えているようだ、宗助にもこの時間帯2人で話し合う事があると告げて部屋にこもっている。
父は今夜、残業を終わらせその後飲み会、休日出勤だと言うのに彼は付き合いが良すぎるのが難点だ。
まあこの土日に新宿で2回目のプレゼンをやるので仕方のない話。
一応護衛を任せたアーバンには先日のことも有りかなり危ない状況にならない限りは手を出さないように言ってある。
もしそのような状況がある場合は事前に知らせてくれるはずだ。
「泊って良いのですか?」円
「宗ちゃんの部屋でいいんでしょ」母
「ダメです!」ゆりな
「ダメ!」愛菜
「じゃあアイちゃんの部屋で決まりね」
愛菜の部屋にもクイーンサイズのベッドが有り部屋の中も8畳くらいある、布団の買い置きも増やしたので誰の部屋で泊っても大丈夫なのだが、それが波乱の一夜になるとは思わなかった。




