表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/505

女の武器

女の武器


呂方愛菜の練習を見学していたエンヨウホは、本日知り合いに付き合う形でここ横浜メルディの練習場に来ていた。

練習試合とはいえ、横須賀メルディの2軍とU18との試合にはその方面の学生や監督が数人訪れており将来性のある選手を見学していた。

エンヨウホの友人である高脇久美(18)は同じ学校の女子サッカー選手でありチームの主力だった、すでに3年と言う事で引退になっているのだが、時期主力選手となる後輩を選出するように監督からのお達しで本日忙しいながら友人と共に練習試合を見に来ている。


「久美ちゃんめぼしい選手いた?」

「さすがに2軍とはいえレベルが高いわね」

「そうかな~、U18のあの子なんかいいんじゃない」

「どの子?」

「少し小さめだけど動きは一番いいと思うわ」


出場選手の名前欄を見るとそこにはMF背番号11呂方愛菜、本来FWになりたかった愛菜だがFWの選手は数が多いためポジション的に中盤を攻める選手枠がたまたま少なかった。

そしてなぜか11番が空いていると言う幸運が彼女をMF11番という場所へと押し上げていた。


「なんで11番?」

「おかしいの?」

「一応11番はFWが多いのよね」

「もしかして両方できるからなのでは?」

「それはあり得るわね…」

「それだけ優秀なのかもしれないけど、どうするの?」

「当然次期主力選手として推薦のオファーはするつもりよ」


練習試合が済み呂方愛菜の実力派A判定を付ける、他にもDFディフェンスの選手も数名

選んだが、呂方愛菜のフィジカルはやはり一つ抜きんでていた。

午後4時、練習試合が終わりグラウンドを片付けると挨拶をして解散となる。

クラブのグラウンドを借りている為、施設内のシャワーやサウナを使えるのだが、呂方愛菜は何故か他の選手や監督に挨拶をすると荷物を持ち一足先に帰宅する様子。


「あの子帰るのかな?」

「少し話してみる?」

「そうしよう」


呂方愛菜は足早にグラウンドを後にする、本日用事があるからだ。

それは先輩とのデート、先輩とはいえ相手は女子でありもちろん元サッカー部の先輩。

木部祐未キベユミ17歳身長173センチ体重50kのスレンダー美女だが、話すと分かるその声はハスキーでありまるでズカの男装のよう。

だが彼女は結構乙女だったりするが、どうしてもその外観にあこがれる女子は少なくない。

しかも木部パイセンは愛菜をかなりかわいがってくれていた、そんな先輩にあこがれサッカー部で活躍し続け現在に至る。

午後5時半からその先輩とデートの約束があったから、愛菜は先にクラブのグラウンドを後にしたのだ。


「ねえ貴方ロホウさんだよね?」

「はい 何か御用ですか?」

「え~と…」

「貴方県立Y高に来る気ない?」

「え?」

「ヘッドハンティングってやつよ」

「あ~今のところ進路はTK高校に行こうと思っていますが」

「マジ!」


その返答ですぐにわかってしまう、東京で3本の指に入るスポーツの盛んな高校。

すでにその一つから愛菜はオファーをもらっているのだ。


「残念」

「そうなんだ、まあいいわでも他にも来てるんでしょ」

「はいN大付属からもお誘いが来ています」


そうなると無理に誘う意味はなくなって来る、愛菜がそこまで有望だと母も兄も知らないのだが、周りはそういう評価を彼女に下していたりする。

わざわざ練習試合の様子を見に来ていたが、さすがに有望な選手はほとんど進学先が決まっているのが現状だ。


「ありがとう分かったわ、ガンバってね」

「失礼します」


そういうと呂方愛菜は走り去ってしまう。


「残念だったね」

「仕方ないわ」

「今日はありがとう付き合ってくれて」

「いいえ私が付いて行くって言ったんだし、そういえば久美ちゃんこの後用事あったんだよね」


高脇久美も実はY・マリンズからオファーをもらうほど優秀だったりする、自分の高校の次期主力を選出することも大事だが、それより自分の進路のほうが大事なのだ。

久美はこの後地元のクラブの説明会を受け、2軍の強化訓練に参加する予定。


「そうなの、この埋め合わせはまた今度ね」

「そんなの構わないわ、頑張ってね」


そう言うとエンヨウホこと円陽子は友人と別れ駅から電車に乗り込む、そう呂方愛菜を尾行するためだ。

南部線に乗り込み乗り換えは1回、ホームに付くとやはりまだ愛菜は電車を待っていた。

そしらぬ顔をして同じ車両へと乗り込み、チラ見をしながら後を付けていく。

(この時間だと彼氏とデート?でもシャワーも浴びていないからそれは無いか…)

呂方愛菜の待ち合わせ場所は地元のスポーツクラブ、先輩の木部も同じスポーツクラブの会員。

(スポーツクラブ?)

駅前の集合ビルの2階には全国展開しているスポーツクラブが有り、その中に愛菜は入って行く。

(見張るには向かいのファーストフードか…)

中に入るには料金を払いワンデイ会員となって2千円からの使用料を支払う必要があるが、それは避けた方が良いだろう。

一度会っているので顔がばれているし、そこまで付いて行くとストーカーに間違われる。

まずはだれと会うのか愛菜の人脈を知ることが先だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ