一方恋敵の2人は
一方恋敵の2人は
どちらも最初は牽制するかのように黙っていたが、やはりアイリーンの方から口火を切った。
俺とアイリーンパパが話している間、店内を歩きながら女子2名は家具を触ったりしながら移動して行く。
「この間はどうも」
「いえいえ私は何もしていないですよ」ゆりな
「あなたは宗助君の彼女なの?」
「あ~それは私にもわからないわ、彼はモテそうだし私の他にも思いを寄せている人はいるんじゃないかな~」
「そうなんだ…」
「国生さんも高校生なんですね」
「ああ そうなのよ来年卒業するんだけど」
「じゃあ1コ上なんですね」
「できればもっと早く宗助君に会いたかったけど、これだけは仕方ないわ」
「好きになっちゃったんですね」
「あなたもでしょ?」
「そうですよ私も彼が大好きです」
そう言って百合奈はにっこりと微笑む、その顔はまるでマリア様の微笑だった。
「やっぱりあなたもそうなんだね」
「何がですか?」
「能力者は能力者に惹かれるのよ」
「意味が分かりませんけど」
「彼が超能力を持っているって知らない訳じゃないんでしょ」
「知っているような 知らないような?」
百合奈は知っているが自分の目の前で起こった宗助がらみの不思議なことは心の隅へと追いやっていた、それが彼にとって一番良いことだと思っていたから。
彼と一緒にいれば又不思議なことが起こるだろう、それを直接彼に聞かないのは彼を困らせたくないからだ。
そして聞いてしまえば彼はそのことに対して秘密を知られてしまった同級生として見るだろう。
自分が秘密を知れば周り回って直接話さなくても、そういう秘密を何らかの方法で誰かに知られてしまう事があり得ると百合奈は思っている。
一度でも誰かに騙され自分の情報を他人に知られて窮地にまで落ちいってしまったのだ。
何時誰がそういうやましい事を考え近寄って来ないとも限らない。
それは同時に自分のせいで彼をも危険に巻き込んでいく可能性がある。
「ショックだな~まさかあなたみたいな子が側にいるなんて」
「それは彼をあきらめると言う事?」
「いいえそれは無いわ」
「そうなんだ…」
「だって多分私が彼と色々したと言っても、貴方は諦めないでしょ」
「したの?」
「し してないわよ!」真っ赤
「かわい~」
「かわい~って…」
「もしかしてこれがライバルってやつなのかな~」
「そうね そうかもね 分かったわ共闘しましょう」
「共闘?」
「彼のそばにあたしたち以外は寄せ付けないようにしようって事」
「それじゃ最後はどうするの?」
「一騎打ちよ」
「それはずるいんじゃないでしょうか?」
「どうしてよ!」
「身長も顔も多分その物おじしない性格も私には無いものだもの」
「そんなことないわ私にはあなたのような包容力もその笑顔もそしてそのはちきれんばかりの胸もないもの…」
「そう?私には少し邪魔なのだけれど、別に国生さんの胸だって小さくはないでしょう」
「女ですもの大きな胸にはあこがれるわよ」
「そうなんだ」
「話しているとどんどん卑屈になりそう…」
「そうなの?国生さんって思ったより良い人で良かったです」
「どういうこと?」
「ほら よく小説なんかだと悪女って外見は良いのにすごい意地悪な人っているでしょ」
「そう? そうって…私悪女じゃないわよ!」
「そうそう 初めて文化祭で国生さんを見た時、こんな人が悪女だったら太刀打ちできないなって思ったもの」
「それは失礼じゃない?まあ性格がひねくれていた場合はあり得るけど私は正義を尊重する人よ」
「やっぱり良い人なんだ フフ」
「何 おかしい?」
「いいな~宗助君うらやましいな~」
「??」
百合奈は自分の人生が決していいものだとは思っていない、だがそれを全て帳消しにするぐらい今が幸せなことも感じている。
宗助の事を好きではあるがそれ以上にうらやましいとも感じている、そして宗助に惹きつけられ寄って来る友人達も。
「私父も母もいないから」
「え?」
「母は私が生まれてすぐ、父はこないだの宇宙戦艦のせいで亡くなったの」
「そ そうなの!」
「うん」
「私あなたが宗助君のそばでうらやましいとしか思ってなかったわ」
「いいの それが私の運命でもあるし、でも今は一人じゃないって感じるから」
「強いのね」
「そうかな~」
「そうよ、あたし達友達になれるかな?」
「え~今更そう思ってしまうとかないでしょ~」
何故かアイリーンは百合奈を抱きしめてしまう。
「友達ゲット!」
「あう!」
アイリーンはハグを何度もしているが、百合奈はこんな風に抱き着かれたのは2度目だ。
しかも同級生でもここまでしてくる子はいなかった、確かに今時の高校生ちょっと進んでいる子達ならばそういう事もしばしばするが。
アイリーンは初めから違うと感じていた、百合奈から見れば彼女は伽話のお姫様と言った雰囲気。
そして話してみるととてもいい子だと判り自分が少しみじめだと感じていたのに、さらにここへきて気持ちを察してなのか、アイリーンからのハグ攻撃がそんな思いを吹き飛ばしてしまった。
思えば父が死んでから自分を抱きしめたのは宗助の母とアイリーンの2名のみ。
自分がまさかこういった行為で幸せを感じられる人だとは思わなかった。




