アイリーンの勘
アイリーンの勘
【ご主人様SNSにアイリーン嬢からコールが入っています】
【ん なんだろう】
せっかく届いたフィギュアにロボ化を適用して悦に浸っているところだが、彼女を無下にするほど俺の心は呆けていない。
アーバンからの報告で少しは分かっていたが、やはりその後どうなったのかも知りたいところだ。
タブレットを取り出すと素早く起動させてSNSスーパーボイスを立ち上げる。
画面右上に赤い点滅が燈っている、これは連絡くださいのサイン。
指でタップすると映像入り音声会話設定の許可画面が立ち上がる、彼女はどうしても俺の顔を見ながら会話したいようだ。
『国生さんこんにちは、どうしたの?』
『あ 宗助君やっと出た!』
『何かあった?』
『うん ええとね…』
『恥ずかしいこと?』
『そ そうじゃないんだけど、今日仕事のはずがキャンセルになって』
『ふ~ん』
『それがね、普通のコマーシャル撮りだと思ったら水着だったの』
『それって卒業するまでまずいやつ?』
『そうなの、今それを受けちゃうと高校卒業も大学推薦も無くなっちゃうから』
『そうなんだ、今は何処にいるの』
『現場がうちの家からそんなに離れていなかったから、今は家にいるわ』
『無事に帰って来れたんだね』
『無事って、別に危険な事なんかないわよ それより聞きたいことが有るんだけど』
『何?』
『宗助君何かした?』
『何のこと?』
『そんなわけないわよね、私の事見張っていたりしないわよね』
『まさか、そんなことできるわけないし、でも危険が迫った時には助けてあげられたら良いなとは思うけどね』
『そうなんだ、気のせいかな…』
(助けに来てくれたらうれしいな)
『何かあったの?』
『うん、少しマネージャーともめて叩かれそうになったんだけど、相手が見えない何かに叩かれて…怖くなって逃げてきちゃった』
『そうなんだ、大変だったね』
【ご主人様申し訳ございません】アーバン
【今回は不可抗力だよ、次回からはもう少し様子を見てから行動しよう】
【かしこまりました】
『もしかしたら宗助君が能力で助けてくれたのかなと思ったんだけど…』
図星もいいところだがそれを聞かれてそうだよとは言えない、まさかずっとストーカーしてるなどとは言えないし。
アーバンが行っているのは情報収集するための尾行であって、彼女を危険から守る役割も担っているのだが、はたから見ればストーカーと変わらない。
失敗は今後に生かせばいい、今回は少し手を出したのが早かったと言う事だけ、次回からはもう少し危険が迫ってから助け舟を出すようにすれば良い、何事も経験が必要だ。
『もしかして僕に助けてほしかった?』
『そこまで図々しくはないけどもしかしたらって…』
『そうなんだ…』
『そういえば昨日父から連絡が来て、宗助君に会いたいって言ってた』
その話は俺の心臓を少し刺激した、確かにお付き合いしているわけでは無いが、彼女の父はUKのサバイバーであり、今回アメリカに行く事は彼らにも伝わっているはず。
彼女のステディという形より超能力者として情報を得たいと言うのが本音だろう。
『そうなんだ、別に会っても良いけど』
『ほんと!じゃあいつにする?』
『うれしそうだね』
『え?そうかな~♪』
タブレットに映る彼女の笑顔はとてもうれしそうに感じた、まあそれは仕方のないところ。
いくら先日彼女の記憶を操作したとはいえ、俺への愛情を全部なくしたわけでは無く80%を60%に下げただけで彼女の心はまだ宗助を好きでいることに変わりはない。
『お父さんも忙しいんでしょ?』
『そうでもないみたい、明日から長期の休暇に入るみたいよ』
『そうなんだ…』
『だからその期間ならいつでも予定組めるけど、どうする?』
『それならばやはり土日に予定…』
そこまで考えてふと約束を思い出した。
【宗助様超越者達との約束は12月の中頃ですので来週ならば予定を組めます】
【分かった】
『今度の土日で予定を組んでくれれば大丈夫だと思うよ』
『分かった相談してみる、じゃあ日程と時間が決まったら又連絡するね』
『了解』
惑星リズへ行くのは再来週以降になる12月の期末試験の最中になるが、予定では土日に行く事を考えている、それは母の都合も考えないとならなくなったからだ。
本当ならば自分とフィギュア3体で行くのが一番余裕がある布陣ではないかと思うのだが。
連れて行くと言ってしまった手前今更だめだと言えば当然のことながら母は拗ねてしまうか、もしくはこの先の願い事は全て却下され、日々の生活もままならなくなってしまうだろう。
それと問題なのは母と一緒に平太と朱里を連れて行くかどうかも考えておかないといけない。
超越者たちが彼ら2名を見てどう思うかも知りたいし、逆に朱里達が彼らを見てどう思うのかも知っておかないと、これから共闘することも考えると彼らの顔合わせは必要な事なのではと思う。




