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水着のCM

水着のCM


製薬会社の顔となってから早くも1か月が経つ、すでにマネージャーからは次の仕事を入れてあると言われ、今日は葉山まで来ているのだが…


「近藤マネ、もしかしてこれ着ないとだめなの?」

「ごめんね~飲み物のコマーシャルだと思っていたら違ったみた~い」近藤


請け負ったのは飲み物のコマーシャルと言われていた、海なのでもしやと思っていたのだが、実際には車のコマーシャルであり水着を着用して撮る予定だった。

本来ならば水着のコマーシャルは受けないはずなのだが、どうやらマネージャーとディレクターの間で密約が取り交わされている様子。

製薬会社の顔となったアイリーン、そこの紹介という触れ込みで飲み物のコマーシャルを請け負ったはず。

せいぜい制服か濡れたTシャツを着るぐらいまでだと思っていたら、目の前にはTバックとやや小さめの水着が数点、今回の仕事はかなりきわどい水着を着なければいけないようだが、それはできない相談だ。

すでに11月になり砂浜は晴れていても肌寒い、一度請け負ってしまえばそれを途中で断ることなど駆け出しのグラビアアイドルならば拒否することなど出来はしない、但しこれが正当な契約だったらの話だ。

アイリーンが通っている高校はキリスト教系の少し校則が厳しい女子高だ、今の事務所も学校に誓約書を数枚書かされようやく許可をもらっている。


「でもこの水着来てコマーシャル撮ると高校は退学になりますよね」

「そ そうなるかな~」近藤

「近藤さん貴方わざと受けたんじゃない?」

「そんなことないわよ、でも水着着るただけでギャラ1本よ1本(1千万)」

「その代わり大学も高校卒業も無くなるんだけど」

「何々~ここまで来て拒否るって事?」ディレクタ―

「あ 小林ディレクター!」

「この話お断りさせていただきます」

「おいおいそれじゃ約束が違うでしょ~」小林

「アイリーンわがままは言わないでよ」近藤

「我がままじゃないでしょ、私の将来がかかっているのよ絶対水着は着ないわ」

「近藤チャ~ん約束違うじゃな~い、どうすんのよこれ」

「すいませ~ん少し待っていて下さい、その間に話を付けますので~」


近藤マネージャーはUSSJに入社して今年2年目のマネージャー、アイリーンの担当になったのはつい最近だ、少し同期との差が開いたため早く大きな仕事を取って成績を上げたいと思っているのは知っている。

そして最近欲しい物を買い過ぎてカード残高はマイナス300万、小林ディレクターとは事前の話からアイリーンと契約できれば100万のバックマージンを出すと言われ嘘をついて契約を了承していた。

近藤裕子(36歳)一般人、USSJで4社目、Z大学卒業後広告代理店で4年勤務その後食品会社の事務を経てUSSJへと入社したが、性格は少しいい加減であり見た限り誠実な感じではなく所長もまだ様子を見ている最中だ。

加藤所長にはドリンク剤のイメージキャラクターだと言って仕事を取って来たと話しており、現在崖っぷちのアラサー独身。

(ここで蹴られたら借金返せないじゃない、くそガキが~わがまま言うんじゃないよ)

アイリーンはスマホを取り出し事務所にいるはずの所長へと電話を掛ける。


『もしもし所長』

『どうしたの?』

『ドリンクの宣伝と言う事で今日葉山まで来ているんですけど、自動車の宣伝で水着を着ないといけないらしいんです』

『水着?なんで?そんな話聞いてないわよ』

『断っていいでしょうか?』

『いいわ私が話を付けるから』

『はい』


元々アイリーンは将来有望なタレントでありSVRサバイバーでもある、彼女の父が水着のコマーシャルなど了解するわけがないし、それを通してしまうとSVRのUK本部から大きな雷が落ちる可能性もある。


『それで近藤!お前何時から嘘ついて仕事取るようになった!』

『え?そんな私も知らなかったんですよ~』

『嘘をつくのは止めな、お前は首だよ今日までの給料は払ってやるから明日から来なくていい、小林ディレクターに代わって』

『はい小林です』

『初めに言ってあるはずです、うちの売れっ子であるアイリーンの肌を見たければ最低1億出せないと契約は無効だから』

『そりゃないですよ~もう10人規模で撮影隊呼んでるんですよ』

『だからなに?』

『裁判になりますよ』

『受けて立つがなにか?』

「じゃ私、帰ります」アイリーン

「え?ちょちょっと待って水着じゃなくても良いですから~」

「いや信用できません、帰らせていただきます」


アイリーンは撮影現場から徒歩で歩き出す、ここは砂浜ではあるが近くにはホテルや民家が幾つか見える。

ここまでは電車とタクシーを使い来ている為、この場所から移動するにはタクシーかバスに乗るしかない。


「おまえのせいであたしは首だよ!」

「そうなんだご愁傷さま」

「くそ~、責任とれ!」

「グヘッ!」


後を付けて来た近藤マネがアイリーンに殴り掛かって来たと思った、2人の距離は2メートルもない。

近藤はアイリーンより身長は低いが外見はかなりファットであり、その肉付きの良い腕で殴り掛かられればアイリーンの方が怪我をする可能性が高い。

だがそんな心配は無用だった、直前に近藤は足を滑らせたのか顔面から道路へとダイブした。

砂浜ならばまだましだったのだが、すでに道路脇を歩いていたアイリーン。

追いすがる近藤は倒れ込みそうになり手を着いたのだが間に合わず、その重さを片腕ではさせきれず顔面強打。


「だ 大丈夫?」

「ぐえ~~~許さないから!」泣


助けようと手を差し伸べるアイリーンだが、それを無視して殴り掛かろうとする近藤。


「パチン!」

「ウギャ!」

「な なに?」


目の前に差し出された近藤の手が目の前で何かに弾かれる。

アイリーンも念動力を少しは使えるがせいぜい鉛筆を少し動かすことぐらい。

さすがに目の前で起きたこの状況が怖くなりその場から立ち去ることにした。

後に残されたのは顔面強打で鼻血を流す近藤、転んだのもその手を払ったのも自分ではない。

それは分かっているがそこに何かがいたのだけはアイリーンにも分かっていた。

(何?何かいた、誰かの超能力?)

朝8時、本日は晴れているが気温は少し低めだ、11月18日呂方宗助は今頃ワシントンにいる頃、まさか彼が手を下せるわけはない。

何故か呂方宗助の事が頭に浮かんだが、足早に歩きながらも少し気になり後ろを振り返る、まだ近藤は道路に手を突き立ち上がる様子はなさそうだ。

手を取れば彼女の考えが分かったはずなのだが、その手前で何者かに手を払われた。

何かがいるのだけは分かった?それはうっすらと見えた小さな影、まるで手のような五本指に見えた小さな黒い影、近藤の手とも自分の手とも違う、位置的にその場所に手の影はできないはず。

怖くなったアイリーンはその場から早く立ち去ることを優先した、どうやら近藤を攻撃した者は彼女を殺すまではしないようだ。

だからと言ってその何かが自分を襲わないと言う確証は無い。


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