待ち構えていた
待ち構えていた
無事調印が終わると俺たちはホワイトハウスを後にした、持って来たUSBは用意された高級そうな鍵付きボックスに入れられ、SPとみられる男性2名に渡されるとどこかへ持って行ってしまった。
そして俺たちは昨日宿泊したホテルへと戻って来た、本来ならばあと何日か滞在してゴルフ場やら博物館やらを見て回るのだろう。
だがそれは次回日本の首相がこの地に訪れた時まで取っておいてもらう事にして、俺達4人は明日帰路に就くことになっている。
「それでこれから今日はどうします?」三田
「夕食ですよね」
すでに昼は過ぎて夕方の6時と言った所、連邦事務所で3時間アメリカ側の担当官や研究者とのやり取り。
その後すぐにホワイトハウスへ移動して約4時間以上、重要書類の精査と調印式さらに記念写真の撮影。
いつの間にか昼も取らずに各種契約を進めたのはアメリカ人にしては異例な事だった。
いや もしかしたら向こうは交代で昼食を摂っていたのかもしれない、度々席を外しては入れ替わっていたのは分かっていた。
勿論日本人は昼飯を食べなくともあまり気にはしないが、大柄なアメリカ人が腹を空かせない訳がない。
それでも目が離せないぐらい特別な事なのではと感じていた、なにせ初めて映像で宇宙人を見た最初の地球人と言っても良い、一応表向きはだが。
確かにサバイバーならば宇宙人の末裔なのだから、それほど珍しくもないだろうと言われればそれで終わりだ、過去に訪れた宇宙人がいない訳じゃないが証拠としては初めての事だろう。
何百何千年も経ってサバイバーの子孫から見れば、先祖の顔がこんなだと言うのを知っている子孫はいないと言って良い。
宗助以外に現在リアルで宇宙人達の様子を知る者はいないのだから、そういった部分からも貴重な映像と言える。
「あ~皆さん今日はホテル内のレストランでディナーを取ります」ジェシカ
「そうなんだ」宗助
「そうなの?」コーディ
どうやら昨日のステーキハウスは大統領からの命令でわざと外部のレストランを指定されたらしい。
だがそれを知らされていなかったジェシカは本日のディナーはジェシカがコーディネートすると言う形になったらしい。
(あなたねー彼はすでに大統領の友人と同じ扱いなのよ)英語でジェシカ
(ヤー確かにそうだね)コーディ
どうやら我々に対する扱いを2ランク上げることにしたらしい。
「とにかく一度部屋に戻りましょう」三田
「そうだな」岩田
「それでは1時間後7時にお呼びいたします」ジェシカ
だが自分の部屋へと戻るとそこには宗助に用事のある人物が別口で俺の事をお誘いしようと待ち構えていた。
最初から分かっていたことだった、ホテルの部屋取りがバラバラで階数が全員違う。
待ち構えていたのはいつぞやの拉致未遂事件で宗助に邪魔された人物だった。
「やあ待っていたよ」不審者
「日本語上手ですね」
「そりゃ日本で活動するのが長いからね」
「それで僕になんの用でしょうか?」
「半月前どうやって我々の仕事を邪魔した?」
「こうやってですよ」
光学迷彩を発動し目の前から姿を消すと同時に目の前にいたガタイの良いアメリカ人と俺の後ろにいたもう一人の脳にロボ化を適用する、2人共に夢の中へと旅立つと同時にその場で倒れ込む。
俺は音が出ないように目の前の1人を倒れないように支えると、もう一人の方は光学迷彩で潜んでいたルミナスがゆっくりと床に寝かせる。
【下僕化ですか?ご主人様】ルミナス
【いや、記憶の改竄で済ませようと思う】
【でもそうするとまた同じようなことをしなくてはならないのでは?】
【いや下僕化しても彼らの行動を把握しきれない、彼らも日本についてくるなら別だが、俺が日本に帰ってしまえば彼らの行動までは管理できないからね】
【そういう事ですかなるほど】
記憶の改竄だけなら宗助に関わらないようにするだけで済ませられるが、下僕にすれば彼らの行動によって遠いアメリカで事件が起きた時、将来とんでもないことに発展する可能性もある。
瞬間移動でここまで来れなくはないが、すぐに対処するのは難しい。
【一応彼の情報を見てみよう】
【かしこまりました】リリー
そこには以前呂方家に侵入しようとして無効化されたグループの上役の情報。
彼はCIAのエージェントであり元グリーンベレーの曹長、先日呂方家に来たエージェントのいわゆるリーダーだ。
彼の下に20人からの部下がいて、その中にはコーディも含まれていたりする。
【やっぱり】
【どこまで記憶を改竄しますか?】
【呂方家の情報は終わった仕事にして、現在は俺がアメリカ滞在中のボディガードとして派遣されたことにしよう】
【もう一人の方は?】
【そっちは部下の様だから命令を同じくボディガードにしておけば大丈夫だろう】
【かしこまりました】
勿論この間の記憶は無かったことにしておくことも忘れない。
そこへ何も知らなかったコーディが部屋に入って来る。
そしてドアを背にしていた俺の後ろからそのごつい腕で羽交い絞めにしてきた。
「ホワッツ!フリーズ!」
「彼は君の上司?」
(おいおいマジかよいきなりチョークスリーパーか)
コーディは俺の首に腕を回し締め上げようと力を入れるが、もちろん彼の力ではロボ化した俺の首を締める事は出来ない。
ギギギュ
「ノーウェイ?」
【スキルロボ】
【データ改ざん、2度とこのようなことが無いように変更して置いてくれ】
【かしこまりました】リリー
俺の足と同じ太さが有りそうな極太の腕で首を締められていたのだが、もちろんロボ化した体には何の影響もない。
そのまま置いておいても多分苦しくもならないのだが、逆に彼の腕に締め上げた時の傷跡が残ってしまうだろう。
すぐにコーディにもロボスキルを適用し命令を書き換える、そしてすべてが終わると全員を起こす。
「ヘイ ウェイクアップ」
「ン…」
「アーユーマイボディガード?」
「ヤー ファッツハップン?」
(なにがあった?)
「それはこちらが聞きたい」英語
「君達は俺のサポートとして来たのだろう?」
「ああ、確かにそうだ」
「じゃあ部屋を調べても何も無かった、そうだよな?」
「ああ確かに何も無かった」
「それじゃあ部下を連れて警備の仕事に戻ってくれるかな?」
「イエスサー」
(英語)
本来の命令は人知れず俺を拘束して彼らの本部又は支部へと連れて行きそこに監禁して情報を吐き出させると言う計画だったのだが。
それらの作戦はこのリーダーが全部命令していたようだ、中には薬物投与による自白強要を含む拉致監禁計画のデータが有り、もちろんそれは彼一人の判断だ。
彼は宗助がどうやって自分達を撃退したのかを知りたかったと言う所だろう。
リーダーはジャミル・ポートン43歳、軍を退役後CIAから引き抜かれすでに10年が経つ。
現在は20人の部下を持つ軍隊で言えば少佐に当るベテランだ、そして最近請け負った任務が俺のせいで失敗した。
部下に問いただしても要領を得なかったので直接他の部下を指揮し今回の行動に出たと言う所。
(全くこういうことが無いように人口子宮のデータを出すことにしたんだけどな…)
【2度とするなと言っておいたのに】
【今回は彼の独断だと思われます】
【そうか…このおじさんが元凶みたいだからこれで問題は無くなったと思いたいけどね】
【明日には帰国しますので大丈夫だと思います】リリー
その後3人は俺の部屋からすごすごと出て行き自分たちの持ち場へと戻って行った。
その間約20分、俺は彼らが出ていくと部屋の中を一通りチェックする。
勿論、隠しカメラやマイクなどが仕掛けられているかをチェックするためだ。
「やっぱり」
【計3つ仕掛けてありましたね】
隠しカメラには偽のデータを入力して置く、そして音声の部分は聞き取れないようにすれば完了。
夕食時になり何食わぬ顔でコーディが現れた時はツッコミを入れてやろうかと思ったが止めておいた。
(コーディネーターのコーディじゃ無かったんかい!)
喉まで出かかったのは言うまでもない。




