ワシントン2日目
ワシントン2日目
日本時間は土曜日の夜だがこちらは土曜日の朝、コーディネーターの2名が日本側の4人の部屋を廻りまずは1階のラウンジへと集まるように伝達していく。
【いよいよですね】ルミナス
【ああ、セキュリティーに引っかかると面倒だから、光学迷彩は発動したまま棚の上に載っていてくれればいいよ】
【かしこまりました】
昨日、日本側の3人が俺の部屋へと集まっていた時、ルミナスには光学迷彩を発動させたまま棚の上に座って待つように促した。
特にばれるような感じは無かったので、そのまま見学していてもらったのだが。
索敵レーダーでホテルの周りを探った所やはり10人規模でUSA側のエージェントがホテル周辺を見張っており、夜間このホテルから外へと出るのはアメリカ側の不信感を買ってしまうのは確実、まあ特に用事もなくホワイトハウスへ忍び込もうとも思わないのでホテルでおとなしくしていたのだが。
それに一応大統領の居場所だけは分かるように食事の時ビーコンだけは取り付けさせてもらっておいたので危険を冒す必要などない。
彼女は間違いなくホワイトハウスにいて、多分執務室と会議室を数回行ったり来たりしている事だけは分かっている。
荷物をデイバックに入れてホテルのロビーへと行ってみるとすでに全員が待ち構えており次の指示を待つ状態。
「これからむかえがきま~す」コーディ
「車に乗ってもらうわ」ジェシカ
朝食はどうやら連邦政府の庁舎で摂るらしい、時刻は朝8時ちょうど。
ホテルの玄関から外へ出ると昨日のリムジンとは違い、RV車が2台ホテルに横付けされていた。
3名ずつが2台に分乗し、SPが1名ずつ乗り込んできた、さすがにガタイのでかいSPが乗り込むと威圧感は半端ない。
勿論全員サングラスを着用している。
「GO」SP
SPが乗り込むと運転手に出発の合図をする。
ホテルから約3分、この距離を移動するのに車はいらないと思うが、何が有るかわからない銃社会のアメリカ、下手すると途中でテロリストに拉致されてそのままホワイトハウスに乗り込まれると言う可能性もないとは言えない。
車はホワイトハウスの横にある連邦政府の建物の横に付けた。
SPに促されるまま一行は連邦政府の庁舎へと入って行く。
この庁舎の中にもコーヒーショップが有りまずはそこへと通された、どうやらここで朝食をとるようだ。
選択したのはアメリカンバーガーとミルクティ―、朝食を取り待つこと20分、ようやく次の場所へと移動する。
そこは同じ建物の中にある会議室であり、中に入ると楕円形のテーブルと椅子が14個、そしてプロジェクターが設置してあった。
すでに数人が席に着きプロジェクターをチェックしながら技師らしき人物が話し合っていた。
そこへこの会議の責任者らしき人物が挨拶に来る。
「ウエルカム」トッド・スチュアート
「彼は連邦政府の高官です、そして今日の進行役も兼ねています」ジェシカ通訳
「ああよろしく」岩田
目の前のテーブルにはすでに数人がタブレットを操作したりスマホで連絡を取ったりしている人が数人。
そしてそこへ大統領と補佐官が2名現れた。
「グッモーニン…」大統領
「おはようこれから我が国最大の秘密会議を始めるわよ」ジェシカ通訳
「秘密って」内海参与
(大統領は割と気さくな人なのかもしれない)
大統領がテーブルの真ん中に、そして両隣には補佐官が、さらにその両側には2名の専門家と言う形。
こちらは俺の隣に岩田さんそして三田さんと内海さんその隣にコーディとジェシカが座った。
まずは惑星間転移装置の現在の進行状況と技術的なチェックからだった。
基本的には転移装置のチェックはすでに双方の国の研究所で開発者の間でのやり取りを見れば分かることだが。
要するにそのデータの信憑性を再確認したいと言う所だろう。
その話には俺として言えることは無いのだが、要するにうまく行かない所を見つけてはいちゃもんを付けたいと言う所なのだろう。
そのたびにオタクの研究者が無能なのでは?と言って返すと憤慨しては席に着くと言う繰り返し。
そして何度かの質問が俺に対して行われると、ポーカーフェイスで返答する。
「データに関しては手心も何も加えておりません、いち 高校生である私に責任を問われても対応できません、むしろ私にそれを聞いてどうします?解決策を知っているとでも?」
それこそ情けない話だ、知っていたとしてそれを話せと言うならばそれ相応の対価を払うのが筋である。
どこかの修士課程を終えて博士号を3つぐらい下賜してくれると言うなら話さないこともないが、まずそれはあり得ない話。
転移装置の話が1時間でようやく終わり、次にハッキングアプリの話になると研究者からは質問漬けにされた。
どうやって作っただのどうやって宇宙戦艦からデータを取っただのと言う話。
何とかそれらをうまく躱しながらアプリの使用方法を伝授してやると研究者は確認を取るためにリモートで他の専門家とやり取りを始める。
「このアプリでどうやって宇宙船からデータを入手したのですか」通訳
「たまたまですが宇宙船の近くに移動して彼らの宇宙船の輸送ポートが開いたときにその通信波長に潜り込みました」
「ザワザワ…」
「危険なのでは?」通訳
「そうでしょうね、でもそうしなければ私も私の町も破壊されていたでしょうから」
嘘を交えながらハッキングアプリの信憑性を後押しする、確かに真下にいて攻撃ロボットにやられないと言う可能性はかなり低い、普通ならばそんな場所で命を懸けるなんてありえない話だ。
誰もが逃げるであろう場所で俺がどうして立ち向かったのかを聞きたいのだろう。
そして実際にハッキングアプリが使えるのかの検証が始まった。
実はすでに彼らは検証を終えていたりする、それはリリーさんの情報からもアメリカでアプリを使用して特定の部署へ侵入しデータを取得するテストが行われていますと、報告されたからだ。
【すでに5回ほど国の重要機関にハッキングのテストを行っております】
【それで結果は?】
【3つが成功で2つが失敗に終わっています】
【失敗したのはなぜ?】
【セキュリティシステムによるオートプロテクターが作動しました、新しいパッチを導入すればその2か所への侵入は可能になりますがあえてそのことは告げなくてよろしいかと思われます】
【なんで?】
【2か所のうち1か所はペンタゴンでもう一か所は核ミサイル基地へのアクセスだからです】
パッチをする、更新すれば又ハッキング可能になる、ではなぜ2か所には入れなかったかというと。
以前すでにリリーさんがハッキングに成功しており、慌てたサイバーテロ担当者がハッキングされたことをもみ消した後、駆除ソフトを強化したためだ。
すでにその対応も宗助のスマホに入っているアプリには導入済みだが、アメリカ側に渡してあるのは古いバージョンと言う事で、自衛隊が持っている物と同じものである。
「このアプリはよくできていますね、称賛に値します」通訳
「ありがとうございます」
「ですが重要な機関へは侵入できなかったようです」通訳
「侵入できなくて良かったですね」
「ファイ?」
「どうして侵入できなかったことが良いのでしょう?」通訳
「重要な施設へ侵入できたら私はハッカーの仲間入りをしてしまいます」
「あなたはハッカーでは無いと?」通訳
「違いますよ」
クスッ!
このやり取りであちら側からクスッと笑い声が漏れる。
どうやらどこかでアメリカンジョークが含まれていたようだ、だがハッキングの実験が重要施設で失敗していたのは逆に良かったと言うのが俺の本音だ。
あらぬ疑いを掛けられて重要人物に超(超重要人物)が付くのは避けたいところだ。
「ではこのアプリをバージョンアップしてさらに強力なハッキングを掛ける事は可能ですか?」通訳
「…」
「呂方君」岩田
「条件次第では可能なのではと思います」
映画で見たようなハッキングはマニュアルが多い、その都度自ら入力して侵入を試みる、リリーさんのアプリはそれを自動化したバージョンと言える。
セキュリティーと言うのは通すと通さないの2択であり、重要な場所にはいくつもの関門が有るのと同じこと。
だがそれらのセキュリティーを一発で解除することもできるのは誰もが知っている事だ。
それは開発者のコードを打ち込みセキュリティーの無効化を行う事。
わざわざ時間をかけて関門を通過するなんてことをしなくても開発者のコードを見つけてソフトを解除してしまえばいいだけの話。
まあそうなると又違うアプリが必要になるのだが、リリーさんが作成したのは通常のハッカーが使用するソフトをさらにコンパクトにして使い勝手を良くしたバージョンだと言える。
それでもかなりの高性能であり、侵入さえできればかなりの確率で機密事項を入手することができてしまう。
「分かりました、ハッキングアプリは今後あなたが開発者として我が国に登録します」通訳
「後程契約書を作成しましょう」通訳
どうやらハッキングアプリは正式にアメリカで採用するようだ、後でしっかり契約書を読んでからサインすることにしよう。
そうしないと彼らの事だ、悪用されたときにアプリの開発者に責を負う形になっていてはとんでもないことになる。




