惑星リズ再び
惑星リズ再び
カラオケボックスには1時間程度いてほとんど歌などは歌わなかった、彼女は多分今日の事は日常の一部としか感じていない事だろう。
相手の内部情報をこんな形で得るのは良い事とは言えない、それを改ざんするのもできれば避けた方が良いのは分かっている。
脳をロボ化し情報を操作できてしまう今になってもそれは変わらない。
午後5時を過ぎ俺はアイリーンを駅まで見送ると、何かあった時にはSNSで連絡するように言って別れた。
多分今夜にも連絡してくるだろう、だが俺は今夜3時間の予定で再度惑星リズへと行く事にしている。
現地の超越者集団がどの程度なのか、そして彼らを仲間にできるのか?マンションに戻ると俺は今夜2回目のテレポートに行く事を母に話した。
時刻は9時を廻り、家族はそれぞれの趣味や勉強と言った作業をこなすべく自室へと戻る。
俺はアイリーンと別れた後コンビニで携帯食を纏め買いしておいた。
それらをデイバックに詰めて今夜決行する2回目のスターテレポートの用意をする。
【そうちゃんそろそろ行くの?】
【母さん】
【気を付けてね】
【ああ 今回はリリーも連れて行くから大丈夫だよ】
【なんか心配になって来たわ】
【じゃあコバルトを話し相手に置いていくから】
【分かったわ、又帰ってきたら知らせてね】
【ああそうする】
今回は3時間、但し場合によっては朝方までずれ込む可能性もある、惑星リズに住む超越者達と接触してどうなるのか?まあ今なら何とかなると思ったからこそ冒険することにしたのだが。
リリーを連れて行くので、それだけでも危険性はかなり薄れるのではと思っている。
【まずは公園まで移動しよう】
【かしこまりました】
リリーをデイバックに入れて自室から近くの公園へ、もちろん監視カメラで公園に誰もいないことを確認したうえでテレポートする。
今回はカモミーメイトを10個購入したので、単純に10回は空間転移ができる。
まずは公園までで1つ、そして公園からはサイクロンエンジンを使用して成層圏まで移動し次に月面までテレポート。
月から惑星リズへとやって来ることに成功した、その間わずか20分。
【相変わらず荒廃した世界だな】
リリーにそう話しかけながらデイバックからリリーを取り出す。
【超越者たちのコロニーはここから1k程度前方です】
【OK行ってみよう】
今回も座標は同じ場所に降り立つことにした、座標を決めておけば必ず同じ場所に転移できることも確認できた。
そして前回仕掛けたギガエアクリーナーもしっかり作動していることも確認できた。
【ついでに追加のギガエアクリーナーを別な場所にも設置しておこう】
【かしこまりました】
超越者たちの住む地下コロニーへと行く道筋、機械の残骸を見つけてはギガエアクリーナーを設置していく。
そして1k進んだあたりで大きな建物の残骸を見つけた、そこは壊れている建物だが明らかに誰かが片付けた跡がある。
そしてその中へと入っていくと床とみられる場所には丸い蓋のようなものを見つけた。
【ここから入るのか?】
【そのようですね】
丸い蓋だが手で開けられるような隙間は無い、彼らは念動力で開けることができるわけで、その力は宗助にはない。
だがロボ化の力を使えばその蓋を開けることはそう難しくはない。
【この蓋は鉄が含まれているようです、電磁石を使いましょう】
そういうとリリーは自分の手に電磁石を作り出し蓋に手を当てると、いとも簡単に蓋が吸い付きその中が露になって行く。
【宗助様どうぞお入りください】
【有難う】
どう考えても蓋の大きさはリリーの10倍以上はある、この星の重力が地球の0,7倍と言う事もあり100k近い蓋でも70k程度と言う事になる、だとしても相当な重さだがリリーさんはそれを軽く持ち上げている。
俺が中へと入ると蓋を持ち換え器用に縁へ腰掛けると穴へと飛び降りると同時にパスっと音がした。
「パスッ!」
穴の中は当然だが光がさしているわけでは無いので真っ暗だが、ロボ化による暗視スコープを設定してあるため、それほど目が見えないわけでは無い、俺とリリーは穴の中を奥へと進んで行く。
穴は最初の4メートルほど縦に進みそこからは大きく広がり人が通れる高さが有った。
勿論その穴は徐々に管のような形状に変わり、奥へ奥へと続いている。
【宗助様超越者の調査員とみられる生命体が近づいてきます】
【待とう】
【かしこまりました】
距離はそう離れていない前回の時も彼らは電磁波か何かを読み取り自分たちが住むコロニーの安全を確保するために調査を行っていた。
今回も多分同じだと思われる。
《又か、今回も何もなければいいが…》
《そこで止まれ!》
《だれだ!》
《落ち着いて聞いてくれ、俺は敵じゃない》
《どこにいる!》
《遠く離れた場所だ》
近くにいるとは言えない、言えば彼らの超能力で攻撃されるかもしれない。
姿は光学迷彩を使用して見えないようにしてはいるが、其れだっていつ見つかるかはわからないのだ、できるだけ自分の居場所を分からないように接触する、彼らの使用しているテレパシーのチャンネルを利用しコンタクトを試みる。
《粛清部隊か?》
《いいや違う、俺は他の星からやって来た》
《他の星だって!》
《なぜ我々の言葉が分かる?》
《君達 いや侵略者達かな、やつらの船から君たちの世界を知ることができた、その知識を使って言葉を覚えたよ》
《お前も超能力を使えるのか?》
《ああ俺は他の星の超能力者》
《どうやってここまで来た?》
《超能力を使って来た》
《信じられない》
《信じなくてもいい、だが俺の話は聞いておいた方が良い》
《粛清部隊じゃないと言うなら姿を見せろ》
《それはできない、お前たちの中には俺を簡単に殺せるものもいるのだろう》
《…》
《図星だな、まあ仕方ない話か…》
《あ~やめておいた方が良いせっかく作った地下道がつぶれてしまうし、俺にはそういう攻撃をしても死なないような力が有る、それに今回は攻撃するために来たわけじゃない》
テレパシーを使用すると相手の思い浮かべた映像がたまに流れて来る、特に感情が高ぶったりすると抑えていた思考があふれだす。
彼の状態は戸惑いながら目の前に現れたピンチをどうしたら躱せるのかを考えている。
そのわずかな思考の変化により一瞬だが洞窟の破壊というイメージが宗助にも感じる事が出来た。
《では何をしに来た!》
《この星を武力から解放する為に来た》
《ふふふ・そんなことができるならすでに俺たちがやっている》
《試してみたのか?》
《ああマザーのいる中央管理ステーションへ侵入するところまでは行けたがな》
《ああそういう場所が有るのか、なるほど》
《お前、なんだその記憶は?》
《だから他の星から来たと言ったはずだ》
《信じられん》
テレパシーの波長を合せて地球の情報を映像で伝えてやった、そこには緑の大地と青い海そして簡素な構造物。
この星では数百年前に失われている風景、そして宇宙戦艦が地球を攻撃している映像。
《そうか、それは残念なことをした、だが俺達にはどうすることもできない》
《できるとしたらどうする?》
《できるなら我々もそうしたい》
《俺は今回、君たちと接触し話す事が出来ればと思ってやってきた、なにせ地球からここまでは100万光年離れているからな》
《宇宙船でか?》
《いや俺の超能力で来た》
《は~~?》
《なんだそんな、本当なのか?》
《宇宙船で来たのなら電磁波はもっと強力なはずだろ》
《だが生身でこの星の地上には出られないはず》
《そういう能力なんだよ俺の力はね》
《信じられん…》
《どうする?話を聞く気になったか?》
《うむむ》
《あ~俺はそんなにこの星にはいられないんだ、いろいろ用事があるもしすぐにお前たちと話ができないのなら次に来るまでに話し合っておいてくれ、この星を機械から解放したいならな》
《え?もう帰るのか?》
《そうだ100万光年を俺は一瞬で移動できる、だがそれは俺の能力の一つでしかない》
《ああそうだ、これも情報の一つだ》
俺はそう伝えると10か月後に地球を攻撃した宇宙戦艦が帰還と同時にこの星のマザー率いる超能力者達を攻撃すると言う情報を流した。
《本当か!》
《まあそうでなければ俺がこの星に来る理由もない》
《その話が本当ならどさくさに紛れて奴らにひと泡ふかせることもできそうだ》
《俺としては2度と地球を攻撃してこないようにできればいいだけだ、もちろん君達超越者が同じように地球を攻撃するなら容赦はしない》
《そうかまるで刃が立たないのか…俺たちはそれが嫌で逃げて来たのだからそちらの星へ攻撃しようとは思わない、だがその情報だといずれこの星は住めなくなるのは明らかだな》
《あ~そのことだが、今俺の能力でこの星の浄化作業を進めている》
《な なんだと!》
少しアルファとベータとの戦闘シーンも見せてやった、確かに超能力者が100人規模で攻撃してくれば俺のロボ化でも対応できるかはわからないが。
フィギュアのロボ化を進めて行けば数十人を相手に戦う事は可能だと言える、それに敵を背後からロボ化し記憶情報の改竄もできるのだから。
マザーと言う器械を使わなければ他の星を攻撃し続けることも無くなるが、それには彼らの星がこれからも住めるように、作り替えることも考えておかなければ。




