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アイリーンの思考

アイリーンの思考


駅前のファーストフードから出るとそこでこの日は解散した、但し一人はしつこく俺について来ようとしている。


「ごめんなさい呂方君」

「いやいや国生さんが謝ることでは無いでしょう」

「そう言ってくれると気が楽になるけど…」

「でもなんでついてくるのかは説明してほしいのですが?」

「え?嫌だった?」

「理由さえわかれば、本日はこの後することないので少しならば付き合いますけど」

「あ そうよね、呂方君の事を知りたくてもっと話したくて、こんな理由じゃダメかな?」


そういいながらもじもじするアイリーン、この時点で彼女は他の事務所の仲間とは別行動しており、前回のようなサングラスと帽子をかぶり、トコトコと俺の後ろをついてくる。

この劇場の最寄駅は自分が住む町から1駅と言う近さのため、彼女を振り切るのは帰って面倒だ。

それならばしっかり話を聞いてやって、満足させてからおかえりいただいた方が後々よろしいような気がする。

(逃げると追いかけてきそうな子っているよね)

次の駅で俺が降りてもそのままついてくるし、時折話ながらいろんなことを質問してみる。

家の事家族の事学校の事、アイリーンは俺の質問にしっかりと答えて来た。

リリーによる事前調査と照らし合わせても嘘はついていない、まじめだ真面目過ぎる。

これでは俺が少し嘘を交えて答えているのがなんだか後ろめたい気がする。


「呂方君って眼鏡をかけていたんでしょ?」

「ああ、よくわかったね」

「事務所から渡された写真には眼鏡をかけた呂方君が写っていたから…」

「多分古い写真じゃないかな」

「そうなんだ」


そうしていつの間にか俺は自宅マンションへと駅からの道を歩いているのだが、まだ彼女は付いてくるようだ。


「え~と国生さんは何処まで付いてくるつもりなのかな?」

「…私迷惑かな?」

「もし逆の立場ならどうする?」

「困るかな…」

「自分が同じことしてるっていう自覚はある?」

「あるわ、でも止められないの」


そう言うと泣き出してしまった。


【宗助様彼女はナイチンゲール症候群、もしくはシンデレラ症候群にかかってしまった様子です】

【なにそれ?】


調べてみれば分かるが、助けてもらったり助けてあげた人に一目ぼれして、相手の事が忘れられなくなってしまう事を言う。

一種の恋愛初心者のヒート症状である、この場合相手の熱が冷めるまで待つしかないのだが。

彼女の場合一応芸能人の卵なのであまりこういう状況が続くのはよろしくない。


【恋の病です】

【ああそうなんだ、で相手が俺なわけね】

【モテモテですね】

【悪い気はしないがそれじゃまずいんだよね】

【彼女の脳をロボ化してみては?】

【それは まずくないか?】

【恋の部分に対して代替情報を付け加え、宗助様の事を一段下げた位置にランクを下げてみてはいかがでしょう】

【恋愛対象から親しい友人って形にか?】

【はい】

【記憶の改竄かいざんはできればしたくないんだけどな】

【ですがそうしないと彼女は自分で自分を追い込んでしまう可能性がございます、一度彼女の情報を見てから判断しても遅くは無いと思いますので、とりあえずロボ化して恋愛情報を手に入れて見ましょう】

【それには彼女に触れる必要があるな】

【家はまずいですよね、では漫画喫茶かもしくはカラオケはいかがでしょう?】


リリーからの提案に俺は乗ってみることにした。


「国生さんこれからもう少しお話しするためにカラオケBOXに行こうと思うんだけど良い?」

「うん」


即答だった、別に自分の家でも良いのだがそうするとそこには母も百合ちゃんも妹もいるし、それに朱里も平太もいるだろう。

そこへ連れて行くのはまずいと言う事だけは分かる。

俺は目の前にあるカラオケ屋に入ることにした、一応自衛隊員の方は尾行しているがカラオケ屋はスルーしてその奥の喫茶店の窓際に座って見守ることにしたようだ。

さすがにカラオケ屋に入ってしまうのは公務中でも問題が有るのかもしれない。

カラオケ屋さんのフロントで時間利用のシステムを聞いて開いている部屋へと通される。


「高校生学割おひとり様30分450円となります、フリードリンクはいかがいたしますか?」

「じゃあつけてくれます?」

「お二人様フリードリンク学割入りまーす」

「こちらへどうぞ」


促されるままカラオケボックスへと通路を進む、通されたのは4人用の普通の部屋だが、TFTプラズマ液晶画面は100インチと言う大きさ。


「お飲み物はこちらのグラスでお飲みください」


そしてキャンペーンの説明を受け、やんわりお断りしておく。


「それじゃ本題に入ろうか」

「…私じゃダメですか?」

「何?ああ彼女にして欲しいってこと?」

「うん」

「さっきもみんながいる時話した通りだよ、今はそういうことをしている暇が無いって感じかな」

「そうなんだ…」

「君だってそうでしょコマーシャルに出るくらい有名になって、これからTVにも出演するんでしょ」

「うん、そうなるかもしれない」

「じゃあなおさら恋愛を進めるのは止めておいた方が良いよね」

「宗助君には他に好きな人はいないの?」

「その質問には答えると君は悲しくなると思うよ」

「それはどういう?」

「僕は特定の人を好きになると言うより女性に対しては全員好きになる可能性があるからって答えるよ」

「じゃあこないだ学園祭にいた百合奈っていう子のことも?」

「そうだね彼女の事も、もちろん君の事も好きだと言えるよ」

「そうなんだ…じゃあ桃の事も?」

「同じだよ、僕に対して敵視したり貶めようとしたり悲しませようとしない限り僕は女性の味方だから」


これではアイリーンにもどうすることはできない、独り占めできないのだから。

無理に突き進めば嫌われてしまう、そうなれば元も子も無くなってしまう。


「それよりほかに僕に聞きたいことは無いの?」

「え…」

「この間の気絶したのは僕の心を読んだからでしょ」

「分かっちゃうんだ…」

「だって全員が何らかの超能力持ちだと言う事は、その力を使用して僕に攻撃を仕掛ける可能性が有ると言う事だよね、そのために君たち2人をよこしたのだから」

「攻撃なんてしないわ、確かに探れとは言われたけど…」

「それでどこまで知ってしまったのかな?」

「宗助君が救世主だってこと、もう何人か助けている事、億万長者になる事」

「他には?」

「ほか?」

「そのぐらいならいいや、でもそれ以上は聞いてこないんだね」

「知りたいけど全部を知って拒絶されるのは嫌だから…」


多分彼女は昔相手の事を知りそれを話したときに怖がられた過去が有るのだろう。

確かに自分の考えを相手に読まれて、先手を取られればその相手からは遠ざかっていく可能性は高くなるだろう。


「もう一つ質問だけどなんで気絶したの?」

「…私の能力以上の情報は得るのが難しいみたい」

「一度に沢山の情報は得られないってこと?」

「そうなの」

「ふ~ん」

「宗助君って大学はどうするの?」

「僕は理工系の大学に進もうと思っているよ」

「そうなんだ…」

「そうだ、宇宙人ってどう思ってるの?」

「あの映像から見ても僕らとそう変わらないと思っているよ、だから君がその子孫だとしても嫌ったりはしないから安心して」

「ありがとう」


そういうと俺の手を握って来る、多分彼女は肌を触れているだけで安心するのだろう。

彼女の能力を知る者は彼女に近寄ろうとはしなくなるのだから、それは彼女を拒否するのと同じことに繋がるのかもしれない。


【彼女の脳をロボ化しました、一部の情報を手に入れました】

【どう?】

【彼女を仲間にしてしまった方が良いかもしれません、宗助様が命令すれば彼女は嫌とは言いません、そのぐらい好きになっています】

【そうなると彼女自身の未来を変えてしまう事になるよね】

【そうなりますね】

【データの変更はどの程度まで可能になる?】

【宗助様を好きになっている部分がかなり大きいようです】

【そうか…ではその半分を信頼と友情に書き換えられるか?】

【やってみます】


この間アイリーンは目を伏せて宗助の肩に頭を乗せている、脳の一部をロボ化している最中は彼女の意思はこちらから話しかけなければ夢の中にいる状態になる。

話しかければ母にロボ化したように脳内通信で話しかけることが可能だ、だがそうなるとその事象を彼女に説明しなければいけなくなる。


【完了しました、愛情100%から60%へ20%を信頼20%を友情へと思考性を書き換えました】

「あれ?ごめん私眠ってた?」

「あ~大丈夫、疲れちゃったんだね」

「昨日まで定期公演の練習してたから」

「そうなんだ」

「なんか宗助君に話してすっきりした、もし私にして欲しいことが有ったらいつでも言ってね」

「それはHなことも含めてって事?」

「…それはだめ…って、なんでそんなこと言うの?」

「ごめん、意地悪しちゃった、嘘だよそんなことは言わないから、これからも良い友達でいよう」

「うん」


何時かは話さなければいけなくなる、だがそれはそうなってからでも遅くはない。

今はこの子には普通に暮らしてほしい、もちろん百合奈にもそう思っている。


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