定期発表会
定期発表会
愛菜の試合はその後、次の3回戦で負けてしまいみんなで応援に行ったのだが2対3、しかも3点目はPKを決められて惜しくも敗退と言う形になっていた。
「泣くな、あれは仕方ない」
「そうよあいちゃん頑張ったんだからね」
「よしよし」ゆりな
「悔しい」へいた
「…」
「うえ~ん」
《超能力を使えれば…》朱里
《絶対だめだぞ!》
《はい分かっています》
全国中学校都大会ベスト8と言う成績は良い成績を上げたと言うしかない、前回は2回戦敗退だったのだから。
それに彼女は休んでいる暇もなく次は所属するクラブの試合が来週の日曜日にあると言う。
中学の大会が終わると今度はクラブの試合と言う事で、しかもクラブの試合はアンダー18と言う形になり実力が無いと試合にも出られない。
一応愛菜はMFとして登録されており攻撃のかなめで登録されている。
勿論中学校の方も同じポジションだ、彼女の攻撃はかなりテクニカル足さばきは中学生の中では断トツにうまく、彼女を止めるにはレッドカードを覚悟して止めに行かなければならないくらいだ。
だが相手のDFも今回はうまかったと言える、そう愛菜はよくやったが愛菜のチームのDFが相手より弱かったのが原因だろう。
全体のレベルが高いのでほんの小さなミスと集中力の差が出た試合だった。
この日は残念会、試合の帰りに父と合流し焼肉屋さんで妹をねぎらった、泣きながら肉を頬張る愛菜には笑えた。
次の日、俺は某劇場へと足を運んだ。
そこでは本日定期発表会と言うのが行われている、そして今俺の上空10メートルをアーバンリリーが飛行中。
劇場の中には入らず入口の屋根で待機してもらう事にしてある、アーバンには発表会終了と共にアイリーンの尾行をお願いしてある。
そういえば読者の皆さんにはロボ化の不思議の一つであるエネルギーの話はまだしていなかった。
俺自身は普通に食べて飲む普通の人間であるのだがスキルとしてロボ化というギフトを授かったと言う形だ。
そして彼らが動くためのエネルギーがどこから生まれているのかという指摘が当然のことながら生まれてくるはず。
この部分はさほど難しい話ではないのだが、先に説明された惑星間転移にかかるエネルギーと照らし合わせていただければ説明がつくだろう。
いや、わからんって?簡単に説明すると彼女らロボ化したとしてもエネルギーはいらない。
いるのは最初にロボ化した時のみ宗助のスキル使用量として消費される。
その消費量は3体で120カロリー、そう1体だと40カロリー前後、惑星転移で100kカロリー=100,000カロリー。
これは空間に対する使用量と見ていい、30センチのフィギュアは30×10×10センチという立方体に収まる。
200×200×180センチ=720万立方センチメートルの空間転移で100kカロリー消費なのだから、30センチフィギュアは3千立方センチメートル空間転移の2400分の1、つまり100kカロリーの2400分の1カロリーという計算だ。
使用したスキルの後は?もちろん各種蓄電システムによる自動エネルギー補充装置がそれぞれのフィギュアに設定してある。
これらの設定は50センチリリーをロボ化した後で宗助とAIリリーが話し合って作り出した機能と言って良い。
敵の宇宙戦艦から得られたエネルギー補充システムは10以上に及ぶ、中には宇宙線からエネルギーを得る装置や温度差からエネルギーを補充するシステムもあり、それらをスキルで作り上げフィギュア達に取り付けてある。
【君は発表会が終わったら彼女を尾行してくれ】
【かしこまりました】アーバン
USSJの定期発表会には30人以上の所属タレントが出演している、その中には有名なタレントや俳優が所属しており。
劇場の椅子に座り周りの観客と一緒に目の前の舞台を観覧していると、この事務所の歴史が垣間見れる。
勿論代表の加藤さんも参加しており後半の部では演劇に参加している。
今期の舞台は(損も得も何もない)という、語りでつづられた現代物、特別な衣装などは無く必要なのはセリフと表情だけ。
それだけに感情がうまく出せるかが役者一人ひとりの才能にかかって来る。
終わった時には観客全員が拍手喝采だった、アイリーンもただのモデルと言う枠では無いと言う演技をしていた。
まだ少し荒い感じはしたがこれからが楽しみな一人だと見に来た人たちには思わせただろう。
全体で3時間近くの発表会ではあったが、前半は所属タレントの自己紹介と今後の意気込みそして得意なダンスや歌。
後半は先ほどの演劇で締めくくった。
そして加藤代表の挨拶が終わると何人かは壇上に上がり花束を渡す、もちろん俺はそんな用意も何もなく観客席に座り目の前の光景を見ているだけ。
(確か終わったら外で待っているように言われていたな)
壇上から出演者全員がお辞儀をしてようやく今期の定例発表会が終了した。
劇場の外に出てベンチに腰掛けると外の様子を窓越しに眺める、ここは公園を含めた複合施設らしい、劇場と斎場そして美術館が広い敷地内に点在する。
俺が暮らす街からは一駅なので割と近い、もっと都心の劇場でやるのかと思ったが。
よく考えてみると都心でこの広さの劇場だと借りるのも結構大変だと言う、都心から少し離れた劇場ならば料金も安く交通の便もそれほど悪くないと言う。
USSJの定期発表会が終わると午後からはどこかのバレエ教室の発表会が入っていたりする、この劇場は中々繁盛しているようだ。
「おまたせ」アイリーン
「あ~そうすけくんじゃん」もも
「やあ久しぶり」
「へ~」
桃はどうやらアイリーンが俺とうまくやっていると思っているらしい。
「何 変な勘繰りはやめてよね」
「じゃあまだなの?」
「何のはなしよ!」
「エヘッ」
そこに事務所所属のタレントが数人やって来る。
「桃ちゃんこの人だれ?」
「こちらは呂方宗助君」
「呂方宗助です」
「私は森山胡桃」
「お だれ?」田川隆起
「アイちゃ~ん誰~れこの子?」新木守
寄ってきたのは3人ほどの新人タレント、女の子は少し暗めではあるが先ほどの舞台ではかなり迫真の演技だったと記憶している、多分女優志望なのだろう年代は同じくらいかな。
そして男性が2人、共にティーンと思われる。
【森山胡桃16歳、高校1年昨年女優のオーデションでグランプリ受賞、昨年のHTKドラマで初出演、1年目の新人とは思えない演技で今季注目の新人です、HOLY学園1年生】
【田川隆起19歳、ダンサー志望某劇団へとオーデションに向けて特訓中、少しチャラいが悪い奴ではない、タレント養成学校へ通っている】
【荒木守17歳不思議ちゃん、言葉使いは女子の為女装男子として売込中、LGBTQジェンダー、すでに公言している為現在は普通に対応している、HOLY学園2年生】
【解説有難う】
【どういたしまして】
「え~と彼は呂方宗助君で、え~と」
「アイリーンの彼氏ドゥえ~す」桃
「な なにいってんのよ~」
桃にそういわれて真っ赤な顔をするアイリーン。
「なんだって!俺と言う男がいるのにゆるせん!」
「りゅうちゃ~んそれは違うわよ~、アイちゃんは あんたの事が嫌いでは無いってだけよ~」まもる
「ごめんねうるさそうな2人で」くるみ
「はあ…」
「それよりこの後どうすんの?」もも
「あたしは…」アイリーン
何か言いかけてアイリーンは俺の顔を見る、言いたいことは分かる俺と2人になりたそうだがこの状況から抜け出すのは少々しんどい。
かなりの言い訳を用意しなければいけない可能性がある、それならば全員でどこかゆっくり話せる場所へと移動した方が楽だ。
「ファミレスかファーストフードの店にでも行こうか?」
そう言ってアイリーンの顔を見ると、即笑顔に変化するが周りの人間の顔は当然俺達についてくるのは確実とでも言うかのように、ももから追加の一言。
「じゃあ駅前のもぐバーガーに行こう」もも
「行こう行こう」俺とアイリーン以外全員が声をそろえて同意する。
劇場から歩いて10分駅のロータリーの向かい側にファーストフードの店が有り2階に上がれば中で食事ができる。
この日は特に用事があるわけでは無いのだが、SNSで昨晩アイリーンから発表会の後で話があると言われており、まあその話に付き合ってみようと思っていたが。
この状況では彼女の話はできそうもないことぐらいは俺も想像がつく。
「奥の椅子確保~」もも
「トイレ行くとき面倒よ」胡桃
「そん時はそん時だよ~」
前回会った時は桃がここまで騒々しいやつとは思わなかったが、多分これはキャラ付けなのかと思われる。
「で呂方君だっけ、君アイちゃんの何?」りゅう
「だからアイリーンのステディだって言ってんじゃん」もも
「おまえにきいてね~じゃん」りゅう
(う~~)
そして2人でにらみ合うがアイリーンは俺の顔を見てるだけでしゃべらない。
「あんたたち2人うるさいわよ」胡桃
「そうよ~本人達から聞けないじゃな~い」まもる
「一応言っておくが俺はまだ彼氏になっているわけでは無い、だが彼女がそうなりたいのならば拒否はしないが俺は男女の交際をするつもりは無いよ」
「ちょい待ち、それってどうゆう事」もも
「そのまんまだよ、俺はあと数年、お友達でいたいと言う事だ、それは他の女性にも同じことを言える、これで満足か?」
「お前それでも男かよ!」
「なんだあんたは俺をくっつけたくないんじゃなかったのか?」
「あ…いや そういうわけじゃ」
「俺にはまだ恋愛なんてわからない、だから友達として付き合うなら良いけどそれ以上は期待すんなって事しか言えないと言う事だ」
「はい終わり、バーガー食べんぞ~」もも
「まあ当然の答えよね」胡桃
「胡桃ちゃんは結構知識人だね」宗助
「分かる?」
「ああその落ち着きは新人とは思えない」
「あんた良いね」
「そう?」
「くるみちゃん取らないでよね」
「いやそういう問題は先に解決してるよね」
「友達のみってことでしょ~」まもる
この中でアイリーンの話したいことが聞けるとは思えない、まあどうせ話と言うより何かと理由を付けてデートに誘おうと言う魂胆が見て取れる、それに彼女の超能力でさらに細かく情報を得ようと言う考えもあるのだろう。
だが目の前にいるアイリーンを見ていると今は情報を得ると言うより俺の側にいたいと言う願望の方が強いように感じる。
勿論それはやんわりとお断りしておきたい、面倒ごとの匂いがプンプンしてきそうだ。
すでに面倒なことになっているし。
「もしかして~この子もサバイバー?」まもる
さすが能力者の集まりだ、勘なのかどうかは分からないが不思議ちゃんでタレント活動している守は核心を突いてきた。
「だってこないだ所長が言ってた人でしょ~」
「あ~それについては俺は今のところ地球人としか言えない」
「まもるちゃんこの人は地球の能力者みたいよ」もも
「なんかあるとは思ってたけど~そうなのね~」
「もしかして君ら3人もサバイバー」
「え?」胡桃
その言葉で3人は桃の方を見る。
「ああごめん言ってなかった、彼には個人の能力は話してないけどそれ以外はほとんどばれてる」もも
「じゃあアイリーンと桃は…」
「あたしらは先日呂方君と会って話したから」
「ふ~ん」
「そっか で君の能力は?」りゅう
「それは言えないかな」
「じゃあ俺も言わない」
普通言わないだろ普通は、まあ話しているうちに彼らの能力はばれていくだろうけどね。
「所長からは呂方君が宇宙船を撃退したって聞いたんだけど」くるみ
「え~この子がそうなの~」まもる
「俺は信じねえ」りゅう
「あんさ~別に信じるも何もないんだよ、言ったとこで信じる奴はいないだろうし」もも
「あたしたちがそれを信じるのは自分もサイバーだってことが分かっているからよ」くるみ
「彼はメシアよ、私たちの立ち位置に重大な影響を与えることができるわ」アイリーン
「はあ…アイちゃんの話はそれっばっかり」もも
「もしかしてその話をするために俺を呼んだの?」
「だってみんな信じないんだもん」アイリーン
「それを信じたら逆にやばい奴だと思わない?」宗助
「あはは、そういえばそうかも」もも
「信じるのは分かるけどそれでどうしろってことになるわよね」くるみ
「もしかして皆、所長から全て聞いたわけじゃないのか…」
「ああそうかも」もも
「話して構わないなら少し話してもいいよ」
「何~なんのおはなし~」まもる
そこからは嘘も交えてやんわりと今までの経緯を話して聞かせた、もちろん自衛隊に話したことがほとんど。
硫黄島でのことや今自分と一緒に宇宙人が暮らしていることは伏せることにした。
「というわけだけど…」
「アイちゃんは全部知ってるんだ」胡桃
「全部と言うわけじゃないわよ」
「ふ~ん」りゅう
「ホントの話なの~?」まもる
「じゃあ又あの宇宙戦艦が近いうちに来るのね」胡桃
「ああ、それでハッキングしたデータを元に今、日米で惑星間転移装置を開発しているところだよ」
「ほんとに奴らと戦って勝てないのか?」りゅう
「彼らは念動力と言う超能力を持っている、しかも全員が能力持ちだ1トンもの力でやられたら普通の人間は敵じゃない、こないだのアメリカの映像は見ただろ?」
「ああ、まるでハリウッド映画の様だった、あれ嘘じゃないのか?」
「嘘なら楽なんだけどな」
「それで自衛隊が見張っているわけなんだね」もも
「でも転移装置ができたとしても奴らを撃退できないだろ?」
「ああ無理だろうね」
「じゃあどうすんだよ」
「それを俺に聞かれてもなんとも言えないのだが」
「又ハッキングして送り返すしかないんじゃないの?」胡桃
「こないだのロボットを積んだ奴ならばそれで済むかもしれないが、宇宙人が大挙して乗り込んだ場合はそれじゃすまないと思うよ」
「17か月か、それは奴らが地球に又宇宙戦艦でやって来るまでの期間か、そして奴らが宇宙船を送り込む前に奴らの星へ行って阻止すると言う寸法だよな…」
「でも相手が超能力者じゃ成功率は1%にも満たないんじゃないの?」くるみ
「俺には何とも言えない」
「それにしては落ち着いているわよね君は」くるみ
「そうか?」
「もしかして防ぐ手段が有ったりして」もも
「う~ん相手が念動力の持ち主でその数が一人なら軍隊でも対応は可能だが、数十人以上となるとお手上げだね」
「ところでサバイバーの中には奴らに対抗できそうな能力持ちはいないの?」
「攻撃性に特化したサバイバーは日本にはいないわね」くるみ
「あたし達はほとんどが防御か思考タイプよね」アイリーン
「おい!」りゅう
「あ ごめん」アイリーン
どうやら田川と言う若者は攻撃系の超能力持ちではないらしい、彼がダンサーだと言う事から運動能力系の超能力の可能性が見えてくる。
「そうか…」
「奴らに対抗する手段を持つサバイバーはいなさそうだな」
「残念だけど私たちの知る範囲内にはいないわ」
「君達の両親は?」
「う~ん、どうだろ~」
「昔はそういう人もいたそうだけど、今は聞かないわね」
サバイバー、地球に里帰りした宇宙人も千年ぐらい前ならば超能力もかなり強い者もいたらしい、だが普通の地球人と交わるうちにその能力はどんどん失われて行っている。
その代わり念動力のみに特化していた超能力も今では違う能力を複数有している場合が多くなっていると言う。
まあ親からも力を使わないように注意されているので、自分の持つ能力を強化しようとは思っていないと言う所か。
だがこれからはそうはいかないと思うのだが…
「君達は今の能力を強化しないのか?」
「強化しても戦闘には使えないわよ」もも
「…」
「俺は仕事と言うか舞台で使うから昔よりは使えるようになったけどな」
「あんたは良いわよね、運動系だから」もも
「まあな、結局俺の能力はばれてしまいそうだな…」
「でもどんな能力でもいざという時使えるようにしておいた方が良いと思うけどね俺は」
「そういえば呂方君の能力ってハッキングなの?」
「それは話せないよ、そうだともいえるし違うともいえるから」
まさか直球で質問されるとは思わなかったが、あまり変な受け答えをしてしまうとどんどん誘導尋問につかまって行きそうだ。
しかも俺以外は全員が敵と言う感じがする、アウェイで一人で戦うにはこの状況には無理がある。
【リリー】
【宗助様どうかなさいましたか?】
【今夜又惑星リズへ行こう】
【かしこまりました、帰りにサイジョイかカモミーメイトを購入しておきましょう】
参った、仲間に引き入れる事が出来そうなサバイバーが今の時点ではいないに等しい。
確かに俺の能力を使えばサバイバー達は複数の能力持ちになるので、即戦力へと変更は可能だが。
だからと言って宇宙人とすぐ戦えるかどうかは又別な問題だ。
特に日本人はスポーツ、特に武道を練習していない限り戦闘に関しては素人ばかりだ、それなら自衛隊員の方がまだ見込みが有る。
【前途多難だな】
【宗助様諦めてはそこで終わります】
【ああ、まだ他にもいるはずだし、中には自分の能力を明かしていないサバイバーもいる可能性もある】
【これで彼らとの接点も増えたことですし、うまく行けば何名か向こうで戦える仲間を増やせるはずだと考察します】
【ああ、まだ答えを出すには早いな】
5人のサバイバー達を相手に何とか自分の能力をごまかし、そして彼らの能力を考察することには何とか成功した。
え?何も分からなかったって?いやいや隆起君は運動能力に対する超能力だと言う事が分かったし。
全員が記憶能力や読唇能力などの超能力が有り、それらの分野では優れていると演劇を見た時既に分かっている。
だから俺が完全記憶と言っても彼らは納得するはずだが、俺の場合それだけでは宇宙船をハッキングできる能力とは説明ができない。
だから今回は彼らに自衛隊に話した事と同じ説明はしないことにした。
能力持ち達にうかつなことは言えない、特にお姉言葉で不思議ちゃんを装っている守はどんな能力か想像がつきにくい。
代表の加藤さんのことも有るので、できるだけ注意しながら発言していたが発言数の数や受け答えで分かったのはそのぐらいだった。




