しつこい奴ら
しつこい奴ら
自衛隊員の一人石神祐樹は先月の辞令で赤坂本部付になった若手の隊員だ、年は三田陸尉と同じく27歳だが彼はキャリア組ではなく高校卒業後に入隊した。
だがその活躍は目覚ましく、各種特別技能も得ておりすでに現在は二等陸曹まで位を上げた。
現場のたたき上げの中では若手のホープだ、そして無類の宇宙好きでもあった、ちなみに彼は宇宙飛行士になるためにNASAにも申請書を送っている。
(特にこの家族には変わったことはなさそうだな、もうすぐ定時報告か)石神
だがこの日呂方家を見張っていた組織は2ついた、その一つがどこから嗅ぎ付けて来たのか過去にこの土地を手に入れようとしていた高利貸しの部下、そしてもう一つは日本に近くそしてUSAと同じように宇宙人の攻撃を受け被害を被った第三国、しかもその国は今でも世界一の人口を誇っている。
彼らは何処から嗅ぎ付けたのか?思い当たるのはリモート会議だろう、あの晩各電気メーカーの研究者が数人、そして大学の教授が参加していたが。
民間の研究所、特にAI関係は現在他国の研究員も数人在籍していたりする、そこには産業スパイもいないとは限らない。
しかも惑星間転移装置などと言う荒唐無稽な装置が本当に存在するのならばどこの国でもそのデータは手に入れたいと思うのは当たり前のことだ。
何処から漏れたと言うよりいつかは漏れると思って良い、しかもすでにそのデータはその国のお偉い人にまでわたっていると思って良い。
そして当然のことながら人物特定が済み、家族環境まで調べられて、さらにここ数日は見張られていたりする。
だが宗助にもそれら第三国のスパイがどこの国かどの組織かと言う事までは把握できてはいなかった。
まずは高利貸しのグループ、呂方家を尾行と言うより木下百合奈をターゲットにしていた彼らは呂方美土里の伝手で弁護士が間に入り全ての借金返済が完了したのだが。
本来の借金総額は300万円、そこに利息を違法に付けて1千万円を返せと迫って百合奈から家屋敷だけでなく保険金まで奪おうと計画していたのだから、その差額は5千万以上になる。
それを横から出て来た呂方親子に妨害されたとなれば、ただで済まそうと言う人は中々いないだろう、しかも平気で嘘をつき弱者から金をむしり取ろうと言う輩だ、黙って引き下がる事などありえない。
もちろん彼らもバカではない、このひと月呂方家を調べ上げた家族構成や家庭環境そして財力等々。
するとそこには木下家よりおいしそうなお金の臭いがするではないか。
だが相手は弁護士を軽く雇えるお金持ち、しかも家やマンションを何軒も所有しているのだから。
やれることと言えば呂方家に取り入って不動産の数軒をだまし取ることぐらいなのだが。
それにはソフトで行くかハードで行くかの2択が有る、以前のように脅して言う事を聞かせるにはかなりのリスクがついて回る、それならばこれから建てる家にまつわることで介入し、騙しこもうと画策した。
但しどう言ってこちらの土俵に相手を引き込むか、作戦を練っている所だ。
木下家の家から数十メートル離れた空き地に車を停めると、仕掛けて来た監視カメラの映像を見ながら考える。
車には3人の男が乗っていた2人は百合奈をさらってAVに出演させようと画策した4人の中の2人、もちろん悪徳金融会社の部下である。
そして1人はその会社の部長であり彼らの上司、腕には金色の時計を付け服装も派手な一見ホストと見間違いそうな男だが、その道では彼はかなりのやり手だった特に人が嫌がることを探すのはだが。
「お前ら前回の失敗を帳消しにするにはどうしてもあいつらを騙して、金を取らないといけねえのは分かってんだろうな!」
「へい」
「家を建てるってことは、造園師かそれとも園芸プランナーか、後は家具屋という手もあるな」
「家電製品の紹介って手もありやすぜ」
「前のようなさらって脅してはもうできないからな」
「あともう少しだったんですけどね」
「おめえがにがしたりしなけりゃな」
「す すいやせん」
「まあそれはしかたねえ、だがさらに上の金持ちが目の前にいるんだその金をこちらに回してもらう事ができれば前のマイナスもすぐ帳消しにできる、まずはどうやってだますかだな」
監視カメラの映像を見ながら、悪徳金融会社の社員らはターゲットを百合奈一人から呂方家へと変更したようだ。




