USSJ(ユニバーサルスーパーサバイバージャパン)
USSJ
手を引かれるがまま連れて来られたのは事務所の中にある応接室、と言っても部屋は衝立があるだけで事務所はワンフロアのためそこかしこに机とPC、そして書類が置かれていたりする。
中には現在2名の職員が電話をかけている最中でアイリーンを見ても挨拶だけでそれほど驚く様子もなかった。
「ここで座って待ってて、すぐ戻ってくるからね」
「ああ はい」
そういって彼女は絡めていた手をゆっくりと外しながらおれの顔をまっすぐに見て事務所の外へと出て行った。
手を離すのが名残惜しそうなそんな感じだった、そして数分すると彼女と一緒に妙齢の女性が一人事務所の中に入って来た、この女性も過去にどこかで見たことがある。
【加藤綾子42歳2人の子持ち、現在別居中USSJの現経営者であり彼女の父は有名な俳優、加藤郷 彼女自身も女優で現在も女優として多数のドラマや映画に出演しているが夫の不倫騒動により事務所の運営を自分ですることになった、前は夫が運営を任せられていた、ちなみにお子様も子役としてデビューしておりこの事務所に所属しています】
【解説有難う】
【どういたしまして】
「ごめんなさいね忙しいところお呼び立てして、私がUSSJ主任の加藤綾子です」
(なんで主任なんです?)
小さい声でアイリーンがツッコミを入れる。
(社長とか所長って言うとなんか偉そうだから嫌なのよ)
「あ、ごめんなさい」
「いいえ、それより本題に入りましょう」
軽く挨拶をすると今回のスカウトの話へと入っていく、何故か加藤さんの横にアイリーンも座り、目の前の椅子には美麗な女性2人が面と向かってこれから俺に尋問すると言う形になって行く。
「それでご用件は?」
「まずは内の事務所へのお誘いが建前なんだけど、本当に知りたいのは今回の騒動にあなたがかかわっていると言う話は本当なのかどうか、それとあなたの能力を知りたいわ」
「やっぱりそこですか」
「ええ、無理にとは言わないわあなたの能力は私達には分からないし、言いたくないとも思うから」
「加藤さんも能力者ですか?」
「え?」
「もう情報が入っていますから」
「あら…」
「仕方がないわね、でも私も自分の能力は言いたくないのよね」
「それは分かりますよ僕も言いたくないですし」
「分かったわ、アイリーンからは宇宙艦隊を引き帰らせることができると言う希有な能力を持っていると言う事は分かっているから」
「それは否定しませんよ、宇宙人の末裔が地球にいることも分かっている事ですし」
「やっぱりあなたもうちの事務所に所属してみない?」
「それはお断りしておきます」
「即断なのね」
「今僕にはしなければいけないことが山ほどありますので」
「宇宙がらみの事?」
「そうです」
「危険が迫っている?」
【心臓の鼓動が跳ね上がりました】
「やっぱり、正誤判断能力かな質問したことに対して嘘をつくのか正しいのかを判断する能力」
【冷や汗を感知しました湿度60%】
「なんでそのことを…」
「多分僕には加藤さんと同じとは言わないですが同等の能力を持っていると言っておきます」
「多重能力者なのね、あなたは…」
「そうかもしれませんね」
加藤綾子の能力は質問した内容に相手が嘘をつくかつかないかを特定する能力、その力で相手の嘘を見抜く。
そしてもう一つの能力は…
「私の事務所にいれば必ず有名になれるわ」
「アシスト能力もあるのですね」
「…」
【心臓が約2秒止まりました】
「すごいわね、なんで分かったの?」
「秘密です」
「私の能力は大きく分けて2つ一つは嘘を見抜く能力そしてもう一つは今言ったアシスト、でもアシストと言ってももう少しおおざっぱなんだけどね」
「ラッキーとか幸運、それとも危険回避かな」
「ああ~もうそれ以上言わないで」
「すみません、調子に乗り過ぎました」
「だからあなたのサポートを完璧にこなせるわよ」
「すみません、僕は僕自身でそれをできますので」
「そ そうよね、アイリーンあなたも何か言ってよ」
「今 私にふりますか?え~」
「大丈夫ですよこの事務所には所属しないですができる範囲で協力はしますし」
「いいの?」加藤
「だってそう言っておかないと又色仕掛けしてきそうですし」
アイリーンの顔が一気に赤くなる。
「そ それはごめんなさいね、一応ほどほどになら色仕掛けも有りで頼んだことは確かよ」
「やっぱり、それでは一応僕の近況も少しお話しておきましょう、全部と言うわけには行きませんがそのうち分かる事ですから」
そこからは今自衛隊とのやり取りで話せることをかいつまんで2人に話す、惑星間転移装置そしてハッキングアプリの話、これを話さないとつじつまが合わないので彼ら超能力者にはいずれ知られてしまう事なので話しても問題は無いだろう。
そして放っておけばあと17か月で又宇宙戦艦群が地球を攻めに来ると言う話も。
「本当なの?」
「ええ、なので先日も首相や大統領ともお話させていただきました」
「首相って相川総理?」加藤
「ジャクリーン大統領?」アイリーン
「はい、ちなみに今も自衛官の護衛の方がこの事務所を見張っていますよ」
駅からこの事務所まで付かず離れず先日会った岩田陸尉の部下である高月若葉さんが尾行しているのは確認済みだ。
「もしかして自衛隊、いや内閣調査室にもばれていたりする?」加藤
「はい、ここの事務所の存在も裏の事も今は知られていますね」
「バレテ~ラ」加藤
「プッ」アイリーン
まあ事務所としてはすでに老舗と言って良いぐらい有名なわけで、この事務所が宇宙人がらみと言っても普通の人は笑って聞き流すだろう。
俺だって1か月前までは全く知らない事だったのだから、だが今は全てを知り今後の事を考えなければいけないと思っている。
「まあだからと言って何もしなければ何も起こらないでしょうし」
「私達宇宙人の末裔にとってはあまり悠長に構えていられないのよね」
「ああ そうかもしれませんね、彼らと同類に見られたらたまりませんから」
「そうなのよ、だからあなたから話を聞きたかったのだけど」
「日本の場合それほど危険視されていないですよ、自衛隊に知られたのも最近になってからみたいですし」
「そうなんだ」アイリーン
「それはそれで複雑な心境ね…」加藤
「まじめに仕事してきたと言う事じゃないでしょうか?」
「うん 真面目よね」アイリーン
「わかったわ、このことは私から本部に伝えておくわ、又話が聞きたくなるかもしれないけど」
「呂方君とは私が連絡とります」アイリーン
「そ そうまあそういう事なら事務所に引き入れるのは返ってマイナスになるかもね」
宗助がUSSJに入れば宗助自体が宇宙人の末裔と言うレッテルを張られてしまう可能性がある、そうなれば宇宙人の末裔が宗助を懐柔しようとしているとも取られるだろう。
と言う事は今後、当局の監視の目が強くなり通常の仕事にも支障をきたす可能性がある。
「分かっていただけて良かったです、ああそうだ他の事務所から引き抜きが来たらここの事務所の名前使わせてもらって構いませんか?」
「え、他にオファーが来ているの?」
「例えばの話ですよ、まだそういう話は来ていませんので」
「そ そうなのね、それならぜひ、いやどうぞついでに宣伝していただければありがたいです」加藤
「所長!」
「だって首相に大統領よどっちが上かなんて言ってられないわ、もしかしたら仕事が舞い込む可能性もあるのよ」
「あはは、今は何とも言えませんが」
それは無いとは言えない、特にUSAは来月行かないといけない訳で、そうなれば宇宙人がらみの話を向こうの研究者や関係者と話さないといけない、そうなれば話はどんどん広がっていく可能性もある。
できるだけそうならないように進めていくほかないのだが…
【どんどん忙しくなりそうですね】
【リリー、だんだん面倒くさくなってきたよ】
【宗助様がなさらないのであれば私が代わりましょうか?】
【まじで…いやそれは最後の手段だな、でもそうかAIに自動操縦させることも可能なんだ】
【今更な話ですが、今ならかなり宗助様に近い行動を執れますよ】
脳の機械化、そしてナビゲーターのAIとして自立行動できるリリー、そのまま運用すれば自身が眠っている間にリリーが代わって仕事をこなすと言う、24時間頑張れますか?頑張れますよ!が可能になるのだ。
「それじゃ、お話もここまでね、又何か聞きたいことが有ったら連絡するわ」
「はい」
「ん、アイリーンあなた今日は練習じゃないの?」
実は事務所主催の定期公演はアイリーンも出る予定なのだが、そのリハーサルや練習は3階のレッスン場で行われている、もちろん加藤所長も先ほどまでそこにいて練習を見ていたのだ。
「いいえ私は本日呂方君のサポートと案内が有ります」
「練習は?」
「明日は必ず出ます」
その様子からアイリーンが少し嘘をついてると感じていた所長だが、あまり彼女を厳しく縛っても良い結果は生まれないと思ったのか。
今日は目を瞑り彼女の行動を大目に見ることにした、それは目の前にいる少年がアイリーンの鹵獲作戦にも動じないほど考え方がまっすぐだと感じたからだ。
(この子、なんだろうアイリーンがまるでお子様という感じね)
顔つきそして行動、落ち着き払った仕草や適切な言葉などどれをとっても役者が1枚どころか2枚も上手な感じがする、女優としても活躍してきた加藤は、これならば2人を放っておいても間違いなど起こりはしないと考えるに至った。
「分かったわ、好きにしなさい」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ宗助君を送ってきますね」
「ではまた」
宗助も軽くお辞儀して応接室から立ち去ることにした、当初思っていた人達とはかなり違っていたなと感じながらも、実際に会って言葉を交わしてみて今は安心している。
よく秘密組織と言えば融通の利かない首領が手下をこき使い無理難題を押し付けたり、悪だくみばかりをしていたりと言う先入観があったからなのだが。




