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大統領とリモートで接見

大統領とリモートで接見


軽装甲車はいつものようにマンションの手前で止まると宗助を下ろし去って行く。

索敵アプリでは近場100メートル以内には怪しい人物の影を表示する事はなかった。


【おかえりなさい】

【ただいま】

【どうだった?】

【今晩リモートでUSAの大統領と話すことになったよ】

【あらら】

【話してみたい?】

【そうすると2人の甥っ子の事も話さないといけなくなるわ】

【早いうちに惑星リズに行って危険要素を取り除かないと】

【責任重大ね】

【うん、まあ今日は大統領と話すと言っても大したこと話せないから】

【分かったわ、宗ちゃんに任せるわ、じゃあ先にお食事用意するわね】


エレベーターの中で母と脳内通信で会話する、問題はデータの取引だけで終わるかどうかという所だ。

あまり向こうを怒らせてしまえば元もこうも無い、だが甘く見られてもいけないと思う。

相手が高校生であり17歳だと言う事は知られている事、だが世界を相手にしても正義を貫く覚悟だけは負けてはいけない。

食事が終わり、木下さんと少し話して自室に戻るとノートPCを立ち上げる。

すでに8時を回り、後は大統領との会話を待つばかり。


『グッモーニンエブリバディ』

『グッモーニン』

『それではこれからアメリカ合衆国大統領ジャクリーン・ジョンソンと日本の高校2年生呂方宗助君との会談を始めます、ナビゲーター及び通訳として内閣参謀 内海登也 同時通訳ジェーン河野 内閣官房長官 城石祐樹 USA大統領補佐官 カービン・クリントン 尚、呂方宗助君には陸上自衛隊岩田幸造君が同席します』

『お話は双方の通訳を介して同時に行われますが、できるだけ分かり易くはっきりと発音していただけるようお願いいたします』内海

『分かりました』

『イェス』


そこからは同時通訳でゆっくりと話し合いが始まった、まずは昨日の誘拐騒ぎに対しての抗議。


『呂方宗助君のお宅にそちら側のエージェントが来た事が判明しております』

『オーソーリィ…』

『大変申し訳ない、私の命令を聞く前に要人確保として行動を起こしてしまったらしい、誠に残念です』

『日本側としては2度と同じようなことをしないでいただきたいと呂方君も言っています』

『ソウ ン イェス…』

『分かりました2度と同じ過ちは犯しません、ですが呂方さんの情報大変重要であることは変わりません』

『呂方君の安全は我々自衛隊が保証します、もちろん日本の内務省を上げて24時間体制で呂方君を保護しますので、そちら側の警備はいりません』

『え~とよろしいでしょうか』呂方

『USA側は何を知りたいのですか?』

『フォワット?』

『…』通訳


宗助が核心の話をしようとしたためUSA側は少し戸惑っている、もちろん聞きたいのは転移装置の話だが、もう一つはどうやって宇宙船から情報を抜き取ったかだ。

通訳のジェーンさんは大統領から耳打ちされてゆっくりと話し出した。


『あなたはどうやって手に入れたのでしょうか?』通訳

『特殊なアプリを使用しました、もちろんそれは私が開発しました』

『オ~』

『…』

『その情報が欲しいのです』通訳

『岩田さん自衛隊からアプリの情報を出すことは可能ですか?』官房長官 城石

『可能です』

『…』

『ワレワレUSAはそのアプリの情報が重要だと感じています』通訳


確かにハッキングアプリ自体は、リリーが作成したもので通常の使用状況下であれば、どんなPCやセキュリティーもあっという間に解除可能だ。

但し宗助が敵の宇宙戦艦で使用した時は敵のバリアに自分自身を同化してから行ったため、アプリ自体にバリアを透過する力までは付帯していない。

まあバリアも100%ではないので探せばどこかに穴が有り、そこから侵入してハッキングすることはできなくもない。

奴らの宇宙船が攻め入った時は時間が無くてすぐに宇宙船を乗っ取るため最短でコンピューターを乗っ取る方法をとったが、時間を掛ければあのアプリを使用して侵入することは可能だ。

宇宙船から地上侵略用のロボットへは無線が通じていることを考えれば、その電波に乗じて侵入できなくはないのだから。

そしてアプリの譲渡の話が済むと今度は残りの情報の話へと進んでいく。


『…』

『ここからは我々も知らない情報を聞けると言う話ですが?』通訳

『良いですか?』宗助

『どうぞ』通訳

『宇宙船から得た情報ですが人口子宮のデータを手に入れました』

『リアリー?』


勿論ここからは大統領も補佐官もびっくりしていた、顔つきがまるで変わるのを見たからだが。

勿論その情報は医療系システムには大きな進歩をもたらす話、単純に人口子宮と言ってもそこだけで利用する話ではない。

研究が進めばメディカルキューブ(医療カプセル)への転用が可能だ、要するに今している手作業の医療行為が発展すれば機械任せのオート治療ができてしまう。

勿論そこからコールドスリープへと技術を進める可能性まで考えられてしまう、これもまた地球規模で医療進化が進む可能性のある情報。

それを聞いてUSA大統領は、この場で判断することが難しくなって行った。

結果としてどうなったかというと、考えられた一番面倒な状況へと陥っていく。


『呂方宗助さんのUSAへの招待を考えています』通訳

『そうなりますか?』

『…』

『情報を渡しただけでは済みませんか?』

『…』

『ぜひ招待しなければならないと思います』


この話の間、岩田さんは目を伏せて少し笑いをこらえている、まるで俺がどんどん深みにはまっていくのを楽しんでいる様子。

そこで俺も一つ提案してみることにした。


『そちらへ行くには条件が有ります』

『イェス…』

『どうぞその条件をお話しください』通訳

『そちらへは自衛隊の飛行機で岩田さんを含めた自衛隊隊員数名を護衛として付けていただくこと、そして日程は来月の半ばで進めてください』

『…』通訳

『イェス…』

『分かりましたそのように計らいましょう』


俺が岩田さんを巻き込むとその顔には面倒くさそうな顔が浮かび、俺はその顔を見て少し気持ちのもやもやが晴れたのを感じた。

それから約30分合計2時間ほどの通訳を介した話し合いは終了し、向こう側の3人が退席し、日本側だけの数人が残って話を続けることになった。


『呂方君、それ 人口子宮って本当なのか?』城石官房長官

『本当ですよ』

『信じられん』

『言っておきますがデータが有っても装置を作れるかはわかりませんよ』


人口子宮のデータだが、それ自体は和訳していないのでそれを解析して実際に同じものを作るには数十年の研究が必要になるのは間違いがない、リリーに頼めば1年で作成可能なのだが、それをしてしまうと又ややこしいことになる。


『来月又出張か…』

『あれ?岩田さん嫌ですか?』

『あ いや別にいやでは無いのだが…』

『もしかしてお子様?』

『あ~一応753なんだよね』

『大丈夫ですよ多分』


753、10月の終わりから11月にかけて土地の氏神様に子供の健康をお祈りをするのだが、もちろんその際には写真を撮ったり食事会をしたりもする。

ちょうど11月の半ば頃なのでその日程はかなり微妙な感じになる、だが岩田さんは断ることができないだろう、なにせ国の重要案件なのだから。


『もしだめなら部下の方でもいいですよ』

『そうしたいところだが、そうも行かないんだよな~』

『僕はどちらでもいいですけどね』


多分自衛隊の上層部では岩田さんが俺の専属になることで話が付いているのだろう。

まあそこに対して異論はない、公務員というのは季節で部署の変更や交代が多い職種でもあり彼もいずれ昇進すれば俺に付き合う事もなくなるだろう。

だがUSAへ行き一仕事終えれば海外特使としての経験を買われ昇進することも考えられる。

瞬時に私事と仕事を頭の中で天秤にかけてしまったのかもしれない。

彼の頭の中では愛する妻の困り顔でも浮かんでいるのか、もしくは幼い子供の笑顔なのかは分からないが、一応彼もエリートであり順調に昇進しているのは俺にでもわかる。


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