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もしも強さを数字で見ることができたなら  作者: 角刈りチーズ
第5章 最強の証明編
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第4話:マクスウェルの名

ラーシェンSide


魔王様が勇者オオトモに敗れた。

しかし、驚きはなかった。

オオトモが登場して以降、魔族は負け続けだった。

四冥魔将のバロムとゴリアテは好戦的だったため、早々に打ち取られていた。

私とダビドは元々戦いが好きではなく、なんとか戦争以外での解決をと考えていたら、いつの間にか生き残っていた。

最終決戦と題して魔王城に集められた時も、やる気があったかといわれたらそうでもなかった。

私は迷宮の魔眼(ラビリンスアイ)という魔法が使える。

一般的なものというよりは、私個人の特殊技能に近い魔法だ。

有機、無機関係なく、その物が見たであろう景色を追体験できる。

目がないものも例外ではない。

この力のおかげで、私は戦う前から勇者オオトモたちの実力を知ることが出来ていた。

確かに魔王様は強いが、勝つのは難しいだろうと思えた。


勇者一行は魔王様を倒した後、魔族を蹂躙しなかった。

彼らは戦意を持たないものに刃をむけなかったのだ。

(魔族も皆がこういう考えなら、また違った未来があったのかもしれないな・・・)

もはや後の祭りではあるが、違った未来を少しうらやんでいた。

残された魔族は散り散りになった。

結局悪行を働き殺される者、ひっそりと森の奥地で生活する者、人間に化けて普通に生活する者など様々だった。

私は迷宮の魔眼で多くを見ていたこともあり、それを実際に体験したいという思いが強くなっていた。

人間に混じって生活するようになった。


そこからは本当に様々な仕事、生き方をした。

人の世は短い、私は赤ちゃんの時期も老人の時期も経験する必要がないため、どんどん新しいことに挑戦出来ていた。

子供には興味本位から化けたことがあるが、あまりうまくいかなかった。

不思議なもので、子供たちは私に違和感を感じるのだ。

完璧な魔法で化けているはずなのに、第六感とでもいうのだろう、実に興味深かった。

そんな私があるとき教師という仕事についていた。

伊達に数百年生きていない私の知識量はすさまじく、また迷宮の魔眼の影響で現状の情勢にも非常に詳しかった。

あっという間に有名講師になっていた。

ただ、定住するのはリスクが高いと思っていたので、あくまでも非常勤、さすらいの講師として活動していた。

いつしか教師から賢人、賢者の生まれ変わりだという人もいた。

すると、その名を聞きつけた人物からとんでもない仕事が舞い込んできた。


「ペンタクルス王国王子の家庭教師に君を雇いたい。」


魔族にとってはペンタクルス王国は因縁の相手だが、それから数百年以上経過している。

そんな気持ちは全く沸いてこなかった。

むしろ興味が勝っていたのだ。

さすらいといっても王族を教えるなどやったことなかったし、当代の王子は優秀だともっぱらの噂だった。

詳しく話をきくと、王子は優秀故に家庭教師を試すところがあるという。

そして、ことごとくそれに不合格しているというのだ。

知識量はもちろん、対応力も必要になってくると。

そんな時にさすらい人である私のうわさを聞きつけたということだった。

一人で旅をする、それにはあらゆる障壁が立ちはだかることが多い。

その対応力が使えるのではないかということだった。

(王族の家庭教師をこんな素性のよく分らないやつに頼むということは、結構切羽詰まってるんですね。)

人間と共に長く暮らす間に私もずいぶんと優しくなった。

放っておけなくなったのだ。

私は期限付きげOKをだし、王子の家庭教師をすることになった。


ペンタクルス王国王子ゴア=オーシャン、実際に会ってみると驚いた。

とても8歳とは思えない凄惨な顔つきをしており、目に力があった。

(さすがは王族といったところですかね。)

この時私は暢気に構えていた。


ゴア王子は噂通り優秀で、私が教えることはあまりないように思えた。

おすすめな本と多少の質問ぐらいで、進んで勉学に励んでいるし、なにより8歳のレベルなんて当の昔に超えており、大人顔負けの学習をしている。

また噂と違い私を試すようなことをしなかった。

その点についてはすっかり肩透かしを食らっていた。

(これならば別に私でなくてもよかったのではないか?)

そんなことを考え始めていた。


家庭教師になってから1年過ぎようとしたころ。

契約がそろそろ切れそうな時だった。

ゴア王子が中庭で読書をしているとき、急に私に話を振ってきた。


「ローエン、お前は最後までそうやって過ごすつもりなのか?」

「はて?王子のおっしゃられている意味が解りませんが。」

「もうすぐお別れだからはっきり言おう。僕が気づいてないとでも思ってるのか?お前・・・人間じゃないだろ?」

「!?」

「構えなくて。もうずいぶん前からそうじゃないかと思ってるから。」

「なんと・・・」


(子供には違和感を感じられることは今まであったが、よもやここまで言い切られるとは・・・)

頭の切れる子供の怖さをまじまじと痛感させられていた。


「・・・王子のお察しの通り、私は人間ではありません。いわゆる魔族です。」

「魔族か。まあそうじゃなければ隠す必要もないな。名は?なんというんだ?」

「・・・名前など久しく名乗っていませんね。魔族の頃はラーシェンと名乗っておりました。」

「ラーシェン・・・聞いたことがある気がするぞ。」

「ええ、そうだと思います。」

「・・・・・・!!魔王の配下にそんな名前の魔族がいたはずだ!」

「正解です。」

「これはまたずいぶんと有名人なんだね。」


ゴア王子は冷静に話を進めていく。

緊張していたこちらがばからしくなるほどに、淡々と事実を受け入れていっていた。


「あまり驚かれないんですね。」

「なにが?」

「魔王の側近ですよ?人類の侵略をもくろんでいるかもしれませんよ。」

「お前はそんな奴じゃないよ。それぐらいわかる。」

「魔族を信頼するのはあまりいいことではありませんよ。」


ゴア王子がどうして自分のことを信頼に足ると思ってくれたのかわからないが、悪い気はしなかった。


「一つ聞きたい。どうしてお前は人間とかかわる生活を選んだんだ?」

「・・・正直に申しますが、よくわかりません。」

「わからない?」

「はい。・・・最初はほかのものと同じ、興味しかありませんでした。しかし、まじかでそれを見て、かかわっていく中でそれだけの気持ちでもなくなっていると思います。人間の寿命はどんな種族よりも短いです。でも、みな他の種族にも負けない命のまばゆきをしています。そうですね・・・もしかしたら私はそれを美しいと感じているのかもしれません。」


人間と共に生活するようになってから、楽しく過ごしてきているつもりだった。

その根幹の部分、なぜそれをしたいと感じているのか、そこを深く考えたことが思えばなかった。

ゴア王子に問われていま改めて考えると、自分は人間たちの命に輝きを見るのが好きなんだと思う。


「僕も同じだよ。父上や母上、この家の使用人たち、民たち、みなが幸せそうな顔をしているのが好きだ。」

「良きお心だと思います。あなたはきっと良き王になられるでしょう。」


現にゴア王子は優秀なだけでなく、王としての心持も立派であった。

弱きを助け、悪しきを許さない。

8歳にして体にまとう風格は、良き王になることが約束されていると感じさせていた。


「お前にそういわれるとうれしいな。でも・・・僕は欲張りなんだ。」

「といわれますと?」

「僕は人間以外の種族にも幸せになってほしいと思っている。・・・もちろんお前やその仲間にも。」

「・・・それは随分と欲張りですね。相当険しき道かと思います。」

「ああ。僕1人だと難しいだろう。だから、ラーシェン・・・家庭教師の期間が終わっても、僕のもとで働かないか?」

「これはまた酔狂なご提案ですね。」

「いや、現実的な提案だよ。お前の持っている知識、経験は人間では絶対に得られないものだと思う。どんな側近よりも頼りになると思うな。それに今言っただろう。お前やその仲間も幸せにしたいと。そのためには、魔族の視点や意見はぜひとも聞いておきたい。」


ご冗談をと言いかけたが、ぐっと言葉を飲み込んだ。

(この1年見てきたどんな表情よりも真剣なお顔ですね。・・・それだけ本気の思いということですか。)

人間の子供の愚かな発想、普段の自分なら間違いなくそう思って取り合わなかったはずだ。

しかし、事前に自分を理解しようとしてくれたからなのか、心のどこかで同じ思いがあったのか、はたまた悠久の時間を生きる自分からすると一瞬の人間の命の間だけだと思ったのか。

私はこの提案を受け入れる気持ちにになっていた。


「後悔なさりますよ?」

「だったら僕はそれまでの王だったということだ。」


私は王子の覚悟と心意気をかった。

その後ゴア王子は私を側近として登用したいと王に進言した。

当然優秀とは聞いていたものの、貴族でも何でもない私の登用に王を含め周りは難色を示した。

しかし、王子は頑として譲らなかった。

むしろ焚きつけたのだ。


「それは彼の能力をご覧になってからおっしゃってください。」


これが王子の口癖だった。

私は王子の心意気に応えた。

討論、戦闘技術、知識、そのどれもで周りを黙らせた。

こうして私は正式に王子の側近となった。


「これからはお前も貴族の仲間入りだ。家名を付けないといけないな。」

「王子のご希望に沿いますよ。」

「自分の家名だぞ・・・なら、お前の全能さにぴったりな名前がある。マクスウェル。・・・今日からローエン=マクスウェルと名乗るんだ!」

「マクスウェルですか・・・承知しました。」


(元素の大精霊ですか。私には過ぎた名ですな。)


その後、ペンタクルス王国はゴア王が即位する。

1人の側近が宰相として設けられた。

その名を「ローエン=マクスウェル」、稀代の名君を支える天才としてその名を世界にとどろかせることになる。

2つに分けようかなって思いましたが、分けても中途半端になるんで分けませんでした。

文字数意識して、変なところで切るのは本末転倒だなと感じました。

自分の中で切がいいと感じるところまで、書ききらせていただきました。

大筋は決めていたんですが、細かいセリフとかが決めきれず時間がかかりました。

もちろん今はこれでいいと自分の中で納得したから、これで書いています。

ローエンをこういう立ち位置にして戦わせるかどうかは、初登場時点では決めていませんでした。

そういうパターンも頭にあったけどぐらいな感じです。

結局私も欲張りなんですよ。

生まれさせたキャラクターみんなに生きてほしいと思うので。

物語をあげたくなります。

これがきっと連載とかなら省く部分があるんでしょうが、ここは投稿サイトです。

そういうルールに縛られないのもまた良さなんじゃないかなと。

描きたいだけ描く、それがまたいいところだと思っています。


一瞬の過去編でしたが、すぐに現代に戻しますよ!

とんでもない魔法食らった直後ですからね。

少しダイムサイドの視点も入れておかないと、指輪のことが?なママになるんで、ダイム視点で1回進攻しようと思っています。

しばしお待ちください。


今回も読んでくださった方々ありがとうございました!

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