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もしも強さを数字で見ることができたなら  作者: 角刈りチーズ
第四章:真実と野望編
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第1話:捜索隊結成

帝国との戦争の後、サクラの家でいつものように過ごしていると、ジムが訪ねてきた。


「2人とも久しぶりだね。」

「ジム!」

「戻ってきてたんだね。」


ジムは戦争が終わってすぐエールラインを訪問していた。

私たちに行くときは話していなかったが、後々人づてに聞いていた。

エールラインもゆっくりといってみたい国だったので誘ってくれたらよかったのだが、どうやら個人的な用事だったらしく、誰にも邪魔されたくなかったようだ。

ジムの顔からは充実感がにじみ出ていた。


「これを2人にはもらってほしい。エールラインでのお土産だよ。」


そういってジムは指輪を出してきた。

特に飾り気のない、シンプルな銀色をしたものだった。

ただ、見慣れない魔力を感じる。


「ジム!・・・この魔力初めて見たよ!」

「さすがに気づかれてしまうか。これは連環の指輪というんだ。・・・僕の自作のアーティファクトだよ。」

「じ、自作!?」


ジムの言葉に思わず大きな声を上げてしまった。

アーティファクトを自作するなんて、そんなことが出来るのだろうか・・・

でも、実際に目の前のものをジムは自作したといった。

にわかに信じがたいが、ジムが嘘をつくとも思えなかった。


「エールラインにいるアーティファクト工の話を覚えてるかい?あの人のところにいったんだ・・・で、弟子入りさせてもらったのさ。」

「えぇ!?この短期間で?」

「ジムすごい!」

「まあこれは本当に単純な原理で、正直誰でも作れるようなものなんだよ。でも・・・せっかく初めて作ったんでね。2人がもらってくれたらと思ったんだ。」

「そ、そんな大切なものいいの?」

「僕ももってる。」


そう言ってジムが右手を見せると、そこには同じ指輪がついていた。

(なるほど、それならもらうことへの抵抗がなくなる。)


「で、アーティファクトっていうなら効果があるんでしょ?これにはどんな効果があるの?」

「つけた状態で魔力を流すと、お互いの位置がわかる。」

「ほお!で、その結果どうなるの?」

「いや、それだけだ。」

「へ・・・」


思わぬ肩透かしを食らってしまった。

アーティファクトなんてどれもすごい効果を持つ物ばかりだったので、どうやら私の中で期待値が大きすぎたようだった。


「なんだい?いらないなら返してもらうよ。」


ジムがちょっと不満そうな顔をする。

(今の反応は私が良くないな。)

私はとっさの自分の反応を恥じ、慌てて訂正する。


「記念なものをもらえてすごくうれしいって思ってる。本当だよ!」

「私も!ありがとうジム!3人お揃いだ!」


そう言ってサクラは嬉しそうに笑った。


「ふ~ん・・・なら、よかったよ。」


その反応を見て、ジムも嬉しそうだった。

正直今のはかなりサクラに助けられたと思う。

私は反省しながら、ジムからの指輪をはめた。

試しに魔力を流してみる。

すると他の指輪の位置をなんとなく感じ取ることが出来た。


「なんか不思議な感覚かも。」

「ね!」

「まあこの距離で目の前にいるからね。」


私たちがそうやって笑い合っていると、新しいお客さんが慌てて入ってきた。

ジョシュアさんだ。


「ジョシュアさん!どうしたんですか、そんなに急いで。」

「お前さんたち3人ちょうどよかった。お前さんたちカインとは仲良かったじゃろ?」

「ええ、学校の同級生でしたからね。」

「・・・カインが行方不明なんじゃ。」

「「えぇ!?」」



カイン=ルーカスが行方不明になった。

王国の上層部ではすでに1週間前から話題になっていた話であった。

最初に気づいたのはデルタ騎士団長である。

彼は寡黙な性格だが、仕事ができないわけではない。

部下の顔、名前の把握はもちろんのこと、日々の健康管理、剣術の腕前、得意魔法や課題に至るまでまで完璧に把握していた。

カインが姿を消した翌日、すぐさまデルタはいないことに気づいた。

最初は自分の足で聞き込みや城内の調査を行ったが、すぐにそれでは不十分であると判断しローエンに相談した。

結果、ローエンから即座にゴア王へ連絡があり、国を挙げての捜索となっていた。

誰も気づかず、痕跡もなかったことから相当な手練れであると判断できたため、捜索隊には実力者が選ばれた。

国内からの足跡を辿るためにダイムとジョシュアが、国外から手掛かりを探るためにレンとダリアが選ばれた。

それだけのメンバーが集まって捜索したものの、1週間たっても特に情報はつかめていなかった。

カインが私たちと仲が良かったと知っていたジョシュアさんが、最悪の事態も想定して教えに来てくれたのだった。


「私たちも捜査に協力します!」

「そうですね。カインは友達ですし、我々も聞いた以上じっとしていられません。」

「私もそう思います。」


3人の意見は同じだった。


「気持ちはわかるし、そういうとも思っておった。ただの・・・このメンバーで探しても1週間手掛かりなしじゃ。お前さんたちで何が出来るのかという気持ちもある。」

「それは・・・」


ジョシュアさんの言うことは最もだった。


「だからといって友人を放っておけるほど僕たちは器用ではないです。」

「そう!」


ジムとサクラが食い下がる。

(確かにその通りだ。やる前から決めるのはよくない!)


「何が出来るかわかりませんが、やる前から諦めません。」


私もジョシュアさんに反論した。


「はぁ~・・・やっぱりこうなったかの。ローエンはお前さんたちのその反応まで読んでおるよ。お前さんたちでもう1つ捜索部隊を結成することになっとる。」

「!!」

「やった!」

「ローエン宰相が絡んでいるということは・・・作戦があるから呼ばれたということですね?」

「正解じゃジム。察しが良くて助かる。」


ジョシュアさん言葉に背筋が伸びる。

(でも、毎回予想通りの行動をさせられてるのも悔しいな。)

ローエン宰相の的確な読みが少し怖くもある。


「ダイムが手掛かりを見つけてな。魔族に動きがあった地域が三か所あるんじゃよ。そこを捜索隊が個別に当たるということじゃ。」

「三か所・・・待ってください、まさか我々だけで魔族がいるであろう地域を一つ担当しろってことですか?」

「さすがにそれは・・・」


私がしゃべりかけたとき、ジョシュアさんがそれを制止する。


「心配しなさんな。お前さんたちには一人追加でつく。・・・アーク=バトンと組んでもらうことになっておる。」

「!?」

「それは心強い!」


ジムの言葉にジョシュアさんの顔が一瞬曇る。


「気をつけよ。あやつは悪人だとは思っとらんが、あまりにも謎の多い男じゃ。用心はせい。」

「・・・そ、そうなんですか?」


アーク=バトンはジムがとても憧れている一人だ。

確かにほとんど表舞台には出てこない謎多き人物ではあったが、あんまり悪い印象を持っていなかったので、ジョシュアさんの警戒が異様に思えた。


「わしは奴が何かに参加しているのを先の戦争で10年振りに見た。普段ほとんど姿見せんような男じゃ。ここ最近急に活発になりおって・・・全く無関係と思うには材料が少ないんじゃよ。」

「な、なるほど・・・」

「まあ悪いやつではないと思うがの・・・一応じゃ一応。」

「わかりました。」


こうして私たちは第3の捜索隊として作戦に参加することになった。

アーク=バトンと話せるということで、ジムは少しうきうきしていた。

今回から第4章が始まります。

また引続きよろしくお願いします。

もう気づいていただけたかと思いますが、今回はアークとがっつり絡んでいくことになります。

基本的にはここがこの章で大きなポイントになってくると思います。

アークがどういう人物なのか、切り込んでいきますのでそのあたり楽しみにしておいていただけたらと思います。

ジョシュアは正直ほとんど出てきません。

個人的に使いやすいので、こういう役回りしてもらってます。

あのおじいちゃんキャラっていいですよね。

若いキャラと絡むの好きです。


第4章の名前はかなり悩んで、何回も書き直したんですが、結果シンプルにしました。

あまりに直接的だとそれだけでネタバレになるので、それは避けつつ。

でも、中身ときちんとリンクさせられるようにということです。

個人的には落としどころとしてはOKだと思ってるのでこれにしました。


ジムの弟子入りから作るまでが早いと思われる方がいるかもしれませんね。

まあ番外編からすごい速度できてますからね。

本当にめちゃきちゃ簡単に作れちゃう指輪だと思っていただけると幸いです。

もう折り紙で言うところの折り鶴じゃなくて、紙飛行機レベルですよ。

いや、もっと簡単なやつかも。

私の中で紙飛行機はめちゃくちゃ簡単だと思って例えました。

取り敢えず、3人の友達としてのつながり、そういうためのものだということで・・・ね。

第3章で特にサクラとそういう位置関係にさせたので、ジムサイドからもちょっと追いつかせた感じです。


今回も読んでくださった方々ありがとうございました。

第4章も頑張りますので、楽しんでいただけると幸いです!

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