第23話:ハヌの予想
ハヌSide
最初に違和感を感じたのは、私に剣が当たったときだった。
私は天才だ。
こと魔法に関しては読み違うなんてもってのほかだ。
赤髪の女の魔法は完全に私の魔法で相殺していた。
剣の勢いもたかだか知れている。
私の水の羽衣を破るなどありえないはずだった。
しかし、こいつの剣は威力こそほとんどなくなっていたが私に届いた。
あり得ない、それが率直な感想だった。
完全に相殺できるはずだった。
私の魔法にぶつかった後、威力が上がったとしか考えられなかった。
調べてみたい、私はそう感じて戦いをスタートすることになった。
しばらく戦ってみて、やはり剣が当てられた理由が見当たらなかった。
この赤髪の女は特に弱いからだ。
残りの2人はなかなかに見どころのある者たちだ。
黒髪の女はいい魔力をしている。
魔法も多彩だし、反応もいい。
鍛えれば相当な魔術師になるはずだ。
私の複合魔法を前にして、自ら割って入るなど根性もある。
違う出会いかたをしていたら、弟子に取りたかったとも思う。
男の方はなかなか素早い。
うまく風魔法を利用しているらしく、見たところ無詠唱のようだ。
攻撃目的ではないと言え、なかなか高いレベルで扱えている。
また、思慮深い目をしているところからも、おそらく3人の中でも聡いのだろう。
少し動きが直線的なのが実にもったいない。
まあそれは鍛えればいいだけのこと。
赤髪の女は最初こそ興味深かったが、その後は全くである。
確かに私の魔法を避けはしたが、そもそもあの程度の魔法で私がやられたと思ったのか、視界が悪い状態で不用意に近づくとは愚かである。
咄嗟の反応もほかの2人に比べると遅い。
そして、味方がやられたらこのざまだ。
顔いっぱいに恐怖の色を浮かべて、抵抗する意思すら見せない。
なんとも情けない限りだ。
殺していいならいの一番に殺してる。
ただまあ、ここまで怖がってくれていると情報は聞き出しやすい。
吐かせるのはこいつで決まりだ。
男を殺そうとしたら突然魔力の増幅を感じた。
目を向けると赤髪の女だ。
先ほどまでよりもはるかに高い魔力になっている。
それに、私が魔法でえぐった肩口が癒えている。
奴らに回復魔法を使った形跡は見られなかった。
では回復薬か?
いや、そんなものは飲んでいなかった。
それにあの目。
赤い目が光り輝いている。
魔力の増加、傷の回復、目の赤い光・・・間違いない、こいつはデーモンポーションを飲んだと確信した。
確かにさっき最初に出した1本を拾われていた。
迂闊だった。
そうこうしているうちに赤髪の女がこちらに向かってくる。
早い。
先ほどまでよりも明らかに速度が上がってる。
身体能力向上もしているのだ、当然だろう。
私は剣を顔だけ避けた。
多少の傷は回復するから問題ない。
吹き飛ばされた先で赤髪の女と相対する。
今しがた食らった攻撃はすぐに回復し始めてる。
長期戦になるが、元の実力差までは覆らない。
多少大変だが殺すつもりでやればいいだけだ。
おかしいおかしいおかしいおかしい!
何もかもがおかしい。
奴はただ実力が上がっているだけじゃない。
明らかに私より一段だし、回復力も異常だ。
思えばデーモンポーションなど飲んでいるはずもない。
出会い頭の攻撃で既に違和感があったのだから!
私としたことが予想を完全に誤っている。
そんなことあり得ない。
・・・一番最初からこいつに感じた違和感、それと今の現象を結びつけるものは一つしかない。
そんなこと考えられないが、それ以外もまた考えられない。
絶対にありえない、そう思ったが思わず口から出ていた。
「・・・お前・・・まさか魔族なのか?」
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レイアSide
ハヌに対して戦う宣言をした後、私は今までの比ではない自分自身の動きに少し困惑していた。
(体が明らかに軽い、それに力強い!)
「螺旋昇斬!」
「”雷陣閃光”」
私に向けて雷が広がて光線のように突き刺さる。
しかし、多少しびれるが痛みまでは感じない。
私はそんまま突き進み、強引に切りつける。
「ちぃ!」
彼女は腕で強引に私の剣を受け止める。
しかし、今の私には腕ごと切り落とせるパワーがあった。
彼女は片腕を失うがすぐに回復が始まる。
その間休まずに、反対の手で攻撃を仕掛けてくる。
「”水破圧弾”」
手の平からすさまじい速度で水が発射される。
見える速度ではあったが、完全に避けきるのは不可能だった。
肩口が切れるのを感じる。
血も出てる。
でも、アドレナリンの影響か痛みはそれほどじゃなかった。
私は攻撃を受けながらハヌに突っ込んでいく。
(今までよりも速度も上がっている気がする。)
片腕とはいえ彼女が魔法を詠唱する間もなく突きを繰り出す。
「ハッ!」
「くそっ!」
彼女は思わず魔法を出していた手で受ける。
手の平に剣が突き刺さり止まる。
すぐに横薙ぎに切り替えようとする私に、叫びながら魔法を放つ。
「舐めんじゃんぇぞ!”雷咆哮”」
口に光の珠が現れて、私に向けて放たれる。
真正面からそれを受けた私はそのまま壁まで吹き飛ばされた。
「ぐっ!」
さすがに背中がジンジンする。
でも、魔法の威力は思ったよりも高くなかったみたいだ。
私は背中の痛みを我慢しながら、立ち上がる。
顔を上げて彼女を見ると、冷静だった彼女の額に汗が見える。
(死ぬ気になったら通用してる!いける!)
そう思った矢先、彼女の口から衝撃的な言葉が聞こえた。
「・・・お前・・・まさか魔族なのか?」
仕事の忙しさと体調の悪さで思うように書き進められていません。
構想自体はできていますので、私に必要なのは書く体力だけです。
必ず書ききりますので。
多少遅くなって待っていただけると幸いです。
一応Twitterには今日UPできそうかどうかぐらいは載せるように努力はしています。
努力は・・・
おそらく読んでくださってる方々が今まで思っていただろう予想をハヌが突きつけます。
これが正しいのかどうかここでは明確には言いません。
すべては4章に繋がっていくんです。
ただ、これがレイアには大きなくさびとなって、心の引っ掛かりにはなります。
すっきりするまで時間がかかることになりますが、その時間=彼女の悩む時間だと思っていただけたらと思います。
そろそろハヌ戦も決着です!
最後はもう決まっているので、びしっと決めてもらいましょう!
今回も読んでくださった方々ありがとうございました!




