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もしも強さを数字で見ることができたなら  作者: 角刈りチーズ
第3章:帝国戦争編
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第22話:諦めない

「デーモンポーションの魔力あってこその複数詠唱だ。すげぇだろ?」


ハヌはにやにやしながら問いかけてくる。

(さっきの槍も雷属性も含んでいたし・・・無茶苦茶だよ。)


「ハヌ=ラチェット・・・あんたノーフェイスか。昔そんな名前の天才少女がいたが、国を追われたはず。」

「いや~私も有名人だったからな~ハッハッハ。知ってくれてるとは嬉しいねぇ。・・・こいつはうれしいこと言ってくれた礼だ。受け取りな。」


そういってハヌは両手の球を目の前で合わせる。


雷光水波(ライトニングウェーブ)


カッと白く光り一つの大きな球になる。

ハヌはそのままそれをこちらに向けて放つ。

光りの球はハヌの手を離れてすぐ広がり、私たちを飲み込むほど大きな円になって迫ってくる。


「やばそう・・・」

「同感だ。」

「ー水の神の加護があらんことー”水神城壁(ウォーターキャッスル)”」


サクラがそう唱えながら一歩前に出る。


「サクラ!」


地面に手を置くとそこから一気に水が噴き出して城の形を形成していく。

しかし、ハヌの魔法に比べて遅すぎた。

城が完全に形成されることなく、途中の段階でハヌの魔法と激突する。

ハヌの魔法から雷撃が一気に伝わり、サクラを襲う。


「きゃああぁぁぁ!」

「サクラぁ!」


サクラの魔法が途中であり、ハヌの魔法の威力も相まって、凄まじい衝撃波が水の城を超えて伝わってくる。


「ぐうぅ!」

「だめだ、持たない!」


私とジムは壁に向かって吹き飛ばされて、そのままたたきつけられる。


「がはっ!」


衝撃の大きさはすさまじく、背中がじんじんしてとてもじゃないが動かせなかった。

(な、なんとかしないと・・・サクラが・・・)

サクラは電撃を受けて、体からプスプスと煙が上がり焼けたのが見てわかる。

意識を失っているようで、そのまま前に倒れ込んでしまった。


「おいおい、さすがに死んではいないよな?」

「サクラ!」


私は叫ぶが反応がない。

たまらずジムの方を見た、顔は真っ青になっていて絶句している。


「3人いるんだし1人ぐらい死んでもいいんだけどな。まあこの子はいい魔力もってるし、実験に協力してもらうよ。」


ハヌが今まで見たことないほど、不気味に笑う。

そのあまりの迫力に、背筋がゾクリとする。


「抵抗されるのは嫌だし、腕と脚は切り落としてもいいな。」

「!?」

「・・・やめろおぉ!」


ハヌがそういった瞬間、ジムが飛びかかった。


「安い挑発に・・・かかりすぎなんだよ!雷龍光(ドラゴンサンダー)


ハヌがそう唱えた瞬間、雷が龍の形になりジムに襲い掛かる。

ジムは相当動揺したのか真正面から突っ込んでいたため、もろにそれを食らう。


「ああああぁぁぁぁ!」

「・・・ジム!」


ジムが体からプスプスと煙を出しながら倒れ込む。

サクラ同様電撃で体が焼かれて気を失ったようだった。

(そんな・・・二人とも・・・やられちゃった・・・)

エルフの祝福を受けて強くなった自覚はあった。

しかし、その自分たち3人がかりでも勝てない圧倒的な力に絶望した。

ハヌが私の方を見る。


「あんたはこないのかい?ヒヒヒ」


そういわれても足が動かなかった。

えぐられた肩の痛みを感じないほどに、私は恐怖に圧し潰されかけていた。


「見どころあると思ったけど、期待外れ。まあ情報は聞き出しやすそうだねあんた。・・・じゃあ男の方はいらないな・・・悪いけど死にな。」

「!?」


そう言ってハヌは手をかざして魔力を溜める。

(このままだとジムが・・・ジムが死んじゃう・・・)

思えばベック=ランドールの時もそうだった。

私たち3人はボロボロに負け、そして殺される寸前だったのだ。

それをダリアさんが助けてくれた。

しかし、今回は勝手が違う。

ここは帝国で、誰かが来てくれる可能性など皆無だった。

キーラさんもあの焦り方からブリッツ=ライトで手一杯のはずだった。

誰も助けには来てくれない。

絶望的な状況で、目の前で友達が殺されそうになっている。


私の頭に師匠との最後の訓練のことが思い出される。

あの時私は「死ぬ気で来い」といわれて全力だった。

着地なんて何も考えない、全力の攻撃をぶつけた。

絶対に1撃入れる、強い気持ちで挑んだ。

だから、師匠に届いた。


エルフの祝福のことが思い出される。

あの時私は諦めなかった。

絶対にできるって信じてた。

自分を育ててくれた師匠のために、信じてくれた仲間のために。

だから、自分に打ち勝てた。


ベック=ランドールとのことが思い出される。

あの時私は殺される寸前だった。

2人は自分たちも危なくなるのに・・・助けに入ってくれた。

見捨てて報告する機会を待つこともできたのに、絶対に助けるんだって、私のために本気だった。

だから、私はここにいる。


・・・私は諦めることを止めた。

(何があっても、私は必ず勝たなくちゃいけない。)

地面に落ちた剣を私は再び握りしめた。


剣を手に取った私はハヌに向けてダッシュした。

出来るかどうか、そんなことはもう考えていなかった。

私が2人を救う、私がこいつを倒す。

私の中にあるのはそれだけだった。

肩の痛みも背中の痛みも感じない。

ただ、目の前の敵を全力で切るのみだった。

こっちに気づいたハヌが驚愕の表情を浮かべる。


「お前!それは!」

「天翔突!」


ハヌが何か言ったが、私には届かない。

ただただ最速で相手に当てる、私の意識はそこに集中していた。

ハヌは体をひねって避けようとするが、肩口を捉える。


「っ!くそっ!」

「破っ!」


剣先からの衝撃波と共にハヌが吹っ飛ぶ。

地面を転がりながら、飛ばされていく。

勢いが弱まったところで、すぐに立ち上がり体勢を整える。


「お前・・・やっぱり・・・」

「来い!・・・私が2人を守る!」

当初の構想から、いろいろ物語を進めていく中で大きく変化があった回です。

正直ここまでボロボロにするつもりもなかったですし、レイアも気持ち強くガンガン立ち向かう予定でした。

ただ、ここまで物語を書いていて、彼女には明確なきっかけが足りなかった。

私はそう感じてました。

だから、ランキングも2人より下げていたつもりです。

今が、ここがそのタイミングだと思います。

ようやく主人公が主人公になるときです。

レイアを初めて、思いっきり暴れさせますよ!

あと、ここで第4章につながる設定を一気に回収する予定でもあります。


昔の後書にも書きましたが、やっぱりサクラを痛めつけるのは抵抗があります。

最近元気に動かしてあげてなかったんですけど、好きなキャラゆえに出てくるときは大活躍してほしいんですよね。

なかなかそうもいかないですが・・・

でも、活躍の機会はあるので、その時に思いっきり動かしてあげたいと思います。


今回も読んでくださった方々ありがとうございました。

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