第17:共闘
モルトに対して衛兵が一斉に剣を向ける。
「騎士団長、ご自身が何をしているのかわかっておいでですか?」
「・・・ああ。理解している。私は彼らの未来も救いたい。」
そう言ってモルトはジャックたち反乱軍の一団を見た。
「もう私は迷わない。」
「そうですか、それは残念です・・・では、反乱軍と共に死んでいただきます!かかれ!」
衛兵が一斉に斬りかかるが、モルトは軽く捌いていく。
モルトは自分の後ろにいた、自分の直属の部下たちに向けて語りかける。
「お前たち、勝手な行動をしてすまなかった。だが、私が願うのは皆が幸せな未来だ。それには彼らも含まれている。・・・お前たちにも、自分たちの意思で決めてほしい。相容れぬなら・・・私はお前たちでも切る!」
モルトがそういった瞬間、部下たちは一斉に剣を抜いた。
(やはり帝国は裏切れないか・・・)
モルトが応戦しようと剣を構えたその時、彼らは一斉に胸の帝国印を切り取った。
「!?」
「これで我らも同罪です、モルト騎士団長。いや、元騎士団長。」
「俺たちはあなたの志を尊敬しております。どこまでも・・・お供いたします。」
「共に帝国と戦いましょう!」
「お前たち・・・」
モルトの部下たちは彼の日頃の行いをすべて知っていた。
彼が帝国の今を嘆いていること、無実の罪の者を助けていることを。
いつか来るその日のために、皆気持ちの準備はしていたのだ。
「貴様らも裏切るのか!」
衛兵の一人が吠える。
「モルトさん、ご命令を!」
(私は本当にいい部下に恵まれたようだ。)
「・・・モルト隊に告ぐ!反乱軍と共に帝国を打ち倒すぞ!」
「「うおぉぉ!」」
モルトの檄に一斉に呼応し、モルト隊は衛兵と戦い始める。
モルトは素早くジャックの側に駆け寄り、自分の手持ちの回復薬を手渡す。
「遅くなってすまなかった。そして・・・共に戦うのを許して欲しい。」
「フフフ・・・・・・遅いんだよバカ野郎。」
ジャックは笑いながら応えた。
モルトの評判はずっと知っていた。
そして、目の前で同胞を救われた。
受け入れることは、そこまで難しいことではなかった。
手渡された回復薬を一飲みし、ジャックは叫んだ。
「同胞たちよ!モルト隊と共にここを突破するぞ!」
「「・・・おおぉぉ!!」」
反乱軍はモルト隊を素直に受け入れた。
彼らの中にもまた、モルトに救われたものも少なくなかったのだ。
「早速で悪いが、あんたに頼みがあるんだ。」
「どうしたんだ?」
「リーダーを助けに行ってほしい。俺が行きたいところだが、リーダーから代理頼まれてるんでね。」
「!?・・・わかった。私が行こう!」
「頼んだ。」
こうしてモルトはガイアのもとへと走っていった。
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ガイアSide
ガイアは途中までボーガンを圧倒していた。
様子が変わったのは、ボーガンがデーモンポーションを飲んでからだった。
「オレ・・・ガ、サイ・・・キョウ・・・ダ・・・」
デーモンポーションを飲んですぐ、魔力量や筋力は確かに上がったのだが、ボーガンの眼は瞳が消え白くなり、呂律もはっきりしなくなった。
それどころか、唸り声をあげながら味方も襲っている。
「おい!ボーガン止めないか!私たちは味方だぞ!」
「ガア・・・ア・・・」
「どうなってるんだ!やめろぉお!」
衛兵、反乱軍相手が誰であろうと見境なく襲いだした。
(一体何が起こってる。デーモンポーションの情報にここまでのはなかったはず・・・)
ガイアは目の前で起きている光景に理解が追い付いていなかった。
(ボーガンの鱗の色、紫だった。あれはリザードマン本来にはない色だ。つまり、何か肉体を帝国にいじられていたということだ・・・まさかそれとデーモンポーションが作用したのか!
・・・考えてる場合ではない。あれを止めないと!)
ボーガンが衛兵に襲い掛かるところに割って入る。
ボーガンのパワーは先ほどまでとけた違いになっており、ガイアの全力を弾き返せるほどになっていた。
バキィン!と攻撃が弾き飛ばされる。
「ちっ!なんてパワーだ!」
「ガイ・・・ア・・・」
ガイアは魔法の詠唱を始める。
「ー炎よ!唸れ!ー”炎津波"」
ガイアから炎が広がり波になってボーガンを一気に押しやっていく。
「ギ・・・ガガ・・・ア・・・」
ボーガンは身動きが取れなくなっている。
しかし、ダメージはありそうだが倒すには至っていないと見ただけで分かる。
(やはり私程度の魔法ではダメか。)
「おまえ!反乱軍がなぜ助けた!」
「今はそんな場合ではない!あれはなんだ!止める方法は!」
「そんなこと我々にもわからん!何も聞かされていないのだ!」
(この場で私が勝てなければ全滅だ・・・)
ガイアの手に力が入る。
(正面からの力押しでは勝てない。)
そう考えたガイアは衛兵を指揮していた者に提案をする。
「お前たちは反乱軍よりよっぽど魔法が使えるな。なら奴を足止めしてくれ。そこに全力をぶち込む。」
「貴様!反乱軍の分際で何を命令s」
「今はそれどころじゃないだろ!」
「・・!?」
ガイアの本気の咆哮に、衛兵たちはたじろぐ。
「奴を止められないと、両軍全員全滅だ。」
「・・・・・・いいだろう。だが、今回だけだぞ。」
「それで構わない。」
衛兵にすぐ命令が下った。
使えるものが一斉に魔法を詠唱し始める。
「ありったけの魔力をぶつける!チャンスは一度だぞ!」
「十分だ!」
ボーガンが炎の波から抜け出そうとしたその時、衛兵たちに寄る魔法が一斉に放たれる。
火、水、雷、氷など様々な属性が入り乱れる。
「ガアア・・・グガ・・・」
「いけい!」
「これで終わらせる!」
ガイアは両手で武器を持ち、渾身の力を込める。
「闘気活性!巨人斧撃!」
斧が闘気で一回り大きくなり、ガイアの全力で斧を振りぬく。
ボーガンが魔法を食らいながらも応戦しようとする。
ズガァン!という音とともに、ボーガンの腕が飛び、体に大きな切り傷が入った。
(浅くなったか!)
ボーガンの抵抗により、ガイアの攻撃は若干ずれた。
結果、体を真っ二つには出来なかったのだ。
(だが、これでは戦闘を継続できまい。)
そう思った矢先、ボーガンの折った傷口がじわじわと再生し始める。
「再生能力・・・これほどなのか。」
「・・・くそう!もう魔法は撃てないぞ!」
(私ももう闘気活性で消耗しすぎた・・・次は打てない・・・)
ガイアたちは半場諦めていた。
ボーガンの体の傷がみるみる再生されていき、回復し終えようとしたその時、急激にこちらに接近してくる人影が見えた。
「止まっているなら問題ない。・・・流水天衝剣!」
その人影が誰か視認できたときには技が放たれていた。
その人物は高速でボーガンに詰め寄った。
激流をまとった剣が首元に当たり・・・ボーガンの首が宙を舞った。
いくら凄まじい再生力を得ても、死んでは発揮されることはない。
胴体だけになったボーガンの再生は止まり、そのまま体は地面に倒れた。
「あんたは・・・モルト騎士団長か。」
「元騎士団長だ。帝国はさっき辞めてきた。」
「ハハ、そりゃちょうどよかったよ。」
モルトとガイアが握手を交わす。
すると、衛兵たちが次々に武器を捨てだした。
「・・・どういうつもりだ?」
「ふん。我々はもう魔力も残っておらん。この状況にモルト騎士団長までそっちについては、我々が負けるのも時間の問題だ。無駄な犠牲を出す気はない。それに・・・あんたには命を救ってもらったからな。」
「・・・ありがとう。」
「勘違いするなよ!私は別に帝国を裏切るつもりはない。ただ、部下にも家族がいる。不要な犠牲を出したくないというだけだ。」
「ああ、わかってるよ。・・・あんた名前は?」
「・・・ギル=サンダースだ。」
「しかと覚えたよ。」
ギルとガイアは握手こそしなかったが、お互いに顔は笑っていた。
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ジャックSide
ジャックは城門間近に来ていた。
いよいよ乗り込むぞと思ったその時、凄まじい光が放たれると同時に城門が吹き飛んだ。
凄まじい爆発と衝撃波が襲い掛かってくる。
「な、なんだこれは・・・」
反乱軍たちはその場にとどまるので精いっぱいだった。
衝撃が収まってから皆体勢を立て直す。
城門のあった場所には土煙が待っている。
徐々に煙が薄れていくと、そこには一人だけたっている人影が見えていた。
今回で反乱軍サイドは決着です。
予定よりかなり膨らんでしまいましたが、書こうと思っていたことはきちんと入れられたと思っています。
一応ボーガンが暴走した経緯については、第4章の敵役とつながってきますので、ここでは言及しないでおきます。
理由は用意してあります。
まあガイアの予想は当たっているんです、そういうことです。
最後の城門の下りで予想できた方もいると思いますが、次はキーラの戦いを描きます。
徐々に城の中へと駒を進めていく感じですね。
キーラVSブリッツ、決着ははっきりイメージできていますが、どう思っていくのかがとても大事だと思っています。
丁寧にしっかりやっていきますので、お楽しみに。
今回も読んでくださった方々ありがとうございました。




