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もしも強さを数字で見ることができたなら  作者: 角刈りチーズ
第3章:帝国戦争編
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第13話:バルト平原の戦い

ジョシュアSide


バルト平原にて、作戦のキーマンが勢ぞろいしようとしていた。


「お前さんが参加するのは正直意外じゃったぞ、アークよ。」

「おや?何故ですか?」

「いつも他人事みたいな顔しとるからじゃ。お前さんが積極的に何かしとるのなんて、見たことないわい。」

「そうでしたかね?まあ私も平和を願う一人というだけですよ。」


(それでうまくごまかしとるつもりか。)

腑に落ちない返事ではあったが、これ以上突っ込んでも何も出ないことが明白だった。

(アーク=バトン、こやつも実に謎多き男よ。)

アークは基本的に公の場に姿を出すことが少ない男だった。

いつ会っても落ち着きをもっており、あまり自分のことを話さないようにしているのが見て取れた。

最後に姿を見たのは人魔戦争のときで、ジョシュアは相当久しぶりだった。

(正直背中を預けるには心もとないの。)

だが、現状の戦力では贅沢を言ってる場合ではない。

王国内でも最強クラスの戦力であるのは間違いないのだ。

それに少なくとも悪人ではないとジョシュアの勘が言っていた。


「皆さんお揃いのようですね。」

「遅れてすまなかった。」


ダイムがバッカスを連れてやってきた。

バッカスも久々に会ったが、エルフとはすごいものでちっとも年齢の変化を感じない。

今や自分の方が見た目は年寄りだった。

物腰柔らかそうな男だが、すべてを見透かすような聡明さがうかがえる。

エルフの国王に世界最強と謳われる男、相手からしたらとんでもないメンツである。


「作戦としては非常にシンプルにいきたいと思っています。今ちょうど我々のいるこの場所に敵軍を閉じ込めます。バッカスさんの術範囲に敵を集めるため、両翼から後方の追立を私とアークさんで行います。正面を止めるのはジョシュアさんにお願いしたい。」

「ジョシュアには私の魔法で強化をさせてもらう。」

「ぜひともお願いしたいの。さすがに10万の軍を正面からとなれば長時間は無理じゃ。」

「そうですね。なので、私とアークさんは機動力勝負になります。アークさんならできると思って提案してますが、いかがですか?」

「造作もないことです。やりましょう。」

「では、決まりですね。多少の犠牲はやむをえませんが、最小限にしてください。帝国に一泡吹かせてやりましょう。」


---

バルト平原の端に、人影が見え始める。

帝国10万の軍勢が進軍してくる。

ダイム、ジョシュア、アークの3人を先頭に、バッカスが後ろに控える。

4人に気づいたとき、帝国軍に号令がかかる。


「全体!止まれ!」


大軍をかき分けて、一人馬に乗った男がこちらにやってくる。


「我が名は帝国軍総指揮 バルト=サンダースである!そなたたちは王国より派遣されているのであろう!大人しく降伏すれば無駄な争いをするつもりはない!ここを通していただこう!」


(てっきりモルトが総指揮をやってくると思っておったが、知らん奴じゃな。)

ジョシュアは総指揮が見知らぬ人間だったことに疑問を感じていた。

(まさかモルトは帝都に残っておるのか?ブリッツもいたら先頭走るようなやつじゃし・・・こりゃキーラよ、そっちは大変かもしれんぞ。)

潜入組のことが一気に心配になる。

かといってこちらも余裕たっぷりというわけではない。

10万の一人一人は余裕であっても、大群の力をはすさまじいものである。

(ここは確実に勝たねばならん。抜かれては犠牲が段違いじゃ。)


「残念ながらここは通すわけにはいかない。どうしても通りたいなら・・・力づくで通るんだね。」


ダイムが語気を強めて応える。

威嚇の意味も込めて闘気が溢れだしている。

(まあここで引き下がれるなら、そもそもここまで来とらんわな。)


「・・・ッ!こ、後悔するがいい!」


バルトという男はダイムの闘気に若干押されていた。

(ありゃ大したことないの。)

指揮官の力量が低い方が好都合だった。

恐らく、数に物を言わせて来るはずである。


「やつらは蹂躙されるのが望みらしい!たかだか4人、蹴散らせ!・・・全軍突撃ぃ!!」


(ほらやっぱりの。)

ジョシュアはやれやれと小さくこぼした。

10万の軍勢が一斉に向かってくる。


「ー我を守る盾となり、闇を割けー””聖騎士換装(パラディンダイブ)””」

「こ、これはすごいの・・・」


バッカスが魔法を唱えた瞬間、ジョシュアの全身が光に包まれていく。

鎧や盾が光でコーティングされ、聖騎士の証である紋章が浮かび上がってくる。


「しばらくの間ジョシュアの受ける傷は回復する。思いっきり出し切れい。」

「全く・・・何でもありじゃの。」


ジョシュアはありったけの闘気を体に集める。

(失敗は許されん。最初から全力じゃ。)


「闘気活性!”挑発の咆哮”」


があああああああ!とジョシュアが凄まじいうなり声を大群に向けて放つ。

10万の大軍はたちまち目の色が変わり、ジョシュアを凝視しながら突っ込んでくる。

(さあこれで全員脇目も降らずに儂に一直線じゃ。)


「もういっちょ!”大玄武の盾”!」


ジョシュアの顔から血管が浮き出ている。

凄まじい力を消費しているのがうかがえる。

ジョシュアの盾はただでさえ巨大だったのに、元のサイズの倍以上にまで闘気が広がって盾の形を形成している。


「ぬうん!」


ドンという音とともにジョシュアが地面に盾を突き刺す。


「ー大地よ、呼びかけに応えよー”土壁(ウォール)”」


ダイムが呪文を唱えると、ジョシュアの両サイドに巨大な土の壁が地面からせりあがってくる。

ジョシュアの正面に敵軍が集まるようにすり鉢型になっていた。


「長くは持たんぞ!いけい!」


バッカスの魔法によってジョシュアは闘気を練り続けられている。

しかし、大群の突進力を侮ることはできなかった。

アークが事前かけていた風魔法にのって、ダイムと2人で大群の左右に分かれる。

高速で飛び回り、挑発のかかりのあまい者や膨らんでいるものを飛ばしていく。

アークに至っては弓を巧みに使い後方も追い立てていく。

ジョシュアの後ろではバッカスがずっと魔力をためていた。

10万の大軍を止める結界魔法、さすがに時間がかかる。

そうこうしているうちに帝国軍はどんどん一塊に集められていく。

ジョシュアは耐えられていたが、横に広がる土の壁を利用するものが現れた。

土の壁を伝ってジョシュアを飛び越えんとしてくる。

(くそう。儂は動けん!)


「アーク!ダイム!上から抜かれるぞ!」


2人が意識を向けたがとても間に合う距離ではない。

アークの弓が飛んでくる・・・が全員は仕留めきれなかった。

ジョシュアを飛び越えた2人がバッカスに向けて突進する。

(くそう!)

バッカスの詠唱が中断するとその分作戦の時間がかかってしまう。

バッカスが負けることはないと思っているが、自分の止められる限界が来てしまう。

しかし、帝国兵がバッカスに近づこうとしたとき、パン!という音とともに上半身が吹き飛ばされる。

(誰じゃ!?)

うろたえている間に再びパン!ともう1人の上半身の吹き飛んだ。

1人のエルフが走ってバッカスのもとへ駆け寄る。


「後ろは私が引き受けます!」

「・・・アイシャか!」


アイシャはジョシュアたちを信用してはいたが、心配故にバッカスに内緒でついてきていた。

平原のはずれで様子をうかがっていたが、危ないと判断して飛び出してきたのだ。

弓の腕に関してはエルフのみならず、他種族を入れても指折りの名手である。

(いい娘を持ったの!)


「・・・整った。」


バッカスが小さく呟く。


「アイシャ、我が娘よ、ありがとう。」

「父さん!」

「いくぞ!」


バッカスの掛け声とともに、地面に帝国軍を軽く覆うぐらいに巨大な魔法陣が浮かび上がる。

その光に、ジョシュア、ダイム、アークの3人も準備が整ったことを理解する。

一斉に魔法陣の外に飛び出す。


「いけいバッカス!」

「ー異能なる神よ、全てを封ぜよー”次元牢獄ディメンションプリズン”」


バッカスがため込んだ魔力を一気に放出すると、地面に描かれた魔法陣の中央が裂ける。

裂け目から無数の白い触手が伸び、次々に帝国軍を捉え裂け目へと飲み込んでいく。


「なんだこれは!?」

「ひいぃぃ!」


次々と悲鳴が上がり帝国兵は逃げようとするが、触手は止まることなく次々と裂け目へ運んでいく。

1分もせずにすべての帝国兵が裂け目に取り込まれていった。

魔法陣上に生き物がいなくなると、裂け目がゆっくりと閉じていき、そして魔法陣もろとも消えていった。


「何ちゅう魔法じゃ・・・」


思わず声が漏れる。


「・・・彼らはどこに行ったんですか?」

「次元の狭間に取り込まれた。時間も進まない何もない空間だ。向こうから出ることは不可能だろう。」


バッカスはすらすらと答える。

相当な魔法を使ったと思っていたが、それほど疲れているようには見えない。


「随分と余裕そうじゃの?」

「バカを言うな。魔力はほとんど枯渇寸前まで使い切ったよ。」


バッカスが微かにほほ笑むが、確かに少し疲れが見えたように見える。


「アイシャさんも助かりましたよ。」

「無断で参加してすまなかったダイム殿。」

「いえいえ、アイシャさんがいなければ魔法の発動はもっと遅れていたと思います。」

「その通りですね。私の弓でも間に合ってはいなかったでしょう。」


ダイムとアークの2人とも、アイシャの参戦を心から感謝していた。


「後は潜入組次第じゃの。」

「そうですね。」

「バッカスさんは直前までお会いされていたでしょう?うまくいくと思いますか?」

「・・・出来ることは全てやった。後は、彼らを信じるのみだ。」


皆で帝国の方の空を見上げる。

帝国はおそらく10万の軍が敗北したことに気づくのにそこまで時間はかからないはずだ。

(長引けば状況は悪くなるだけじゃな・・・頑張れよ。)

バルト平原の5人は心の中で4人の無事と祈っていた。

2話に分けても良かったんですけど、ここは正直メインの戦いじゃないので簡潔にしたかったんです。

なので、ちょっと普段より長かったですが1話にさせていただきました。

大規模なエリアでの戦闘描写って初めてでしたが、正直めちゃくちゃ難しいです。

そんなに各人複雑な事させていないんですけど、どうしてもターン制のようになってしまって・・・

頭のイメージを言葉にするのってこんなにも難しいのかと再認識しました。

これまだ帝国側に主要なメンバー入れていないので片側の描写で済んでいますが、両方にメインのキャラとか入れると相当大変ですね。

うまく表現する工夫、意識はもっともっと高く持って、いろいろな人をの見ていきたいと思います。


今回バッカスが使用した魔法は今まで出てきている魔法と一味違うものです。

これは現状まだ何も出していません。

今のところ第4章の本当に最後~第5章で出したいと思っている内容です。

それまでこの1回こっきりのつもりです。

基本的には何かの属性魔法が今後も主ですので、ご安心ください。

闘気活性は出すと思いますが、基本的にかなり技術が必要な技

だという位置づけです。

ナンバーズじゃないと使えないイメージですね。

なので、デルタはまだ使えません。

ジョシュアの感じで伝わったかはわかりませんが、使用するのにも時間と体力はかなり使います。

なので、今後バンバン使って、新しい技ガンガン出ます!ってつもりではありません。

そうせずとも、今後戦闘描写が多くなれば必然的に技名は多くなりますので。


本編も長かったですが、後書も長くなってしまいましたね。

今回も読んでくださった方々ありがとうございました。

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