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もしも強さを数字で見ることができたなら  作者: 角刈りチーズ
第3章:帝国戦争編
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第8話:エルフの祝福

バッカスさんに連れてこられた部屋は何もない部屋だった。


「そこに座りなさい。」


促されるまま、中央に3人で座った。


「あれ?キーラさんは?」

「私は実はエルフの祝福を受けたことがあるのさ。だから、今回はパスだよ。」

「そうだったんですか!」

「なら、道中で内容を聞いておけばよかったな。」

「残念ながら、聞かれても教えなかったよ。秘匿だからな。」


キーラさんは少し意地悪そうに笑った。


「さて、手短にいこう。エルフの祝福とは強くなれるものだという認識以外おそらくほとんど知られていないだろう。」

「はい。」

「確かにそれは間違いではない。ただ、全員がなれるわけではない。試練に打ち勝った者だけがなれるのだ。」

「試練・・・ですか。」


そう言ってバッカスさんは小さい巻物を広げ始めた。


「あまりにも術式が長いのでね。事前に書いてある物を使わせてもらうよ。」

「あの・・・どんな試練なのか説明はしてもらえるんですか?」

「いいや・・・私から言えるのは一言だけ。勝て。それだけだ。」

「私も同じアドバイスだな。」

「え?」


質問を聞き返す前に、バッカスさんの魔力が巻物に流し込まれる。

巻物はすごい光を放ちだす。

光りはその場にとどまり、大きな繭のようになっていく。


「健闘を祈る。」


バッカスさんがそういった瞬間、光の繭が私たち3人を包み込んだ。


「え、ちょっと!」


私は目の前が真っ白になった。




あまりの眩しさに思わず目をつぶっていた。

恐る恐る目を開けると、そこは真っ白な空間だった。

何の気配もない、ただただ白い空間。


「サクラー!ジムー!聞こえるー?」


シーンとして返事がない。

声の反響もない、どこまで壁かもわからない世界だった。


「なんなのこれ・・・」


(これが祝福?)

エルフの祝福の中身を聞いていない以上、何が何だかさっぱりわからなかった。

困ったな~と思っていると、目の前に黒い点が表れた。

(・・・なに?)

黒い点はどんどん膨らんでいく。

私と同じぐらいの大きさになると、そこから急に形が作られていく。

(これ・・・人の形になって言ってるよね。・・・それになんか似てない?)

徐々に形が作られていく中ではっきりと分かった。

表情こそないのっぺらぼうだが、体の形は完全に私そのものだった。

自分のコピーが目の前で出来上がった。

(やっぱり、完全に私だ。)

黒い影がゆっくりと動き出す。

私が普段構えを取るときと同じ動きだった。

(そっくりすぎて気持ち悪いな。)

そう思ったのもつかの間、黒い影が切りかかってきた。

いつもの自分のように。


「!?」


バキィン!とっさに剣を抜いて受ける。


「あんたいきなり切りかかってくるとか正気!」


黒い私から返事はない。

それどころか、さらに攻撃を繰り出してくる。


「ちっ!」


キン!キィン!

相手の剣の軌道ははっきりと分かった。

これまでの人生でいやというほど見ている、自分自身の剣の軌道だからだった。


「勝てってまさかそういうこと!?」


(これのどこが祝福なの~!)

レイア、サクラ、ジムの3人の試練が始まった。


---

バッカスSide


「3人とも始まったようだな。」


3人は祝福を受ける部屋の床に並んで寝かされていた。

祝福の間は眠った状態だ。

ただ、容易なものではない。

恐らく成功するにしろ失敗するにしろ、半日もかからず全員目覚めるはずだ。


「しかし、私のときもこうだったけど、もうちょっと説明してあげたらだめなもんかい?」


3人が眠っている影響で、キーラのしゃべり方が元に戻っていた。

バッカスの威厳を保とうと取り繕っていたが、ついつい昔のようにふるまってしまう。

キーラにとってバッカスは第2の父親みたいなものだった。


「事前に心の準備が出来ていたら意味がないんだよ。そこも含めての祝福だからね。」

「今頃3人ともびっくりしてるよ。祝福なんて名前だから、きっと楽なもんだと思ってただろうし・・・まあでも、この子たちの反応を見ていると、祝福って名前にしたからか、実状はちゃんと伝承されなかったみたいだね。」


エルフのなどとたいそうな名前をがついているが、これはただのアーティファクトだった。

修練の巻物、己の分身と戦うことで比較的容易に自分の限界を引き上げることが出来るアーティファクトだ。

比較的容易にとは、自分の限界を超える方法の中ではというだけで、決して修練の巻物自体が簡単というわけではない。

たまたまエルフの手に渡ったこのアーティファクト、元は求道者たちが喉から手が出るほど欲しがった代物だった。

発生した争いも数知れず、里に保管しておくことは危険だった。

ただ、自国に閉じこもることが多いエルフという種族に置いて、修練の巻物の効果は願ったりかなったりではあった。

なんとか世間にばれずに手元に置いておきたい、そのために考えたのはエルフの祝福だった。

名前を変え、その様子自体を完全に秘匿とした。

幸いにもエルフ以外の種族の寿命は短い。

月日が経つにつれて、いつしか修練の巻物とエルフの祝福は別のものとして世間に残っていった。

その結果、ここで寝ている3人も違和感なくエルフの祝福として受けることになったのだ。


「まあ完全に切り離されることは難しいだろう。いつの世も、気づくものはいる。」


(たちまちローエンは気づいているようだしな。)

バッカスは手紙の意図が祝福の中身を理解している書き方だったので、容易に判断できた。


「3人とも乗り越えられるかな~?素直にどう思う?」

「・・・私はそれ以上にお前が心配だよ、キーラ。」

「へ?なんで?」

「帝国にはお前もいくのだろ?」

「もちろん、私がいなかったら、こいつらブリッツ=ライトに殺されるよ。」

「・・・」

「なになに?」

「ブリッツ=ライトと普通に戦えばお前が勝つだろう。だが、相手がデーモンポーションを使ってきたらわからんだろ。私はやつに会ったことあるが、お前と奴の実力差はそこまで広くはないぞ。」

「油断しないさ。」

「帝国はお前にとって因縁のある場所だ。冷静でいられるとは思わん。」

「・・・・・・大丈夫だよ。私の気持ちは、とうの昔に整理できている。」


そういったキーラの表情は、稀にみる真剣なまなざしだった。

バッカスにとっても、キーラはまた3人目の娘のような存在だった。

親心からくる心配は当然のことだ。


「必ず生きて戻るんだ。」

「もちろん、いつでもそのつもり。」


キーラがやさしく笑いかけてくる。

間違いなくキーラの存在が今回の作戦の要であった。

潜入組が失敗しては、自分が結界に帝国兵を閉じ込めても意味をなさない。

心の中で作戦の成功を願っている、それは当然のことだ。

だが、それと同時に3人目の娘の無事も願っていた。

最初に謝っておきます。

アーティファクトを出しすぎて申し訳ないです。

小説を投稿開始する前、この章を考え始めたとき、この祝福は普通に魔力授かったり、武器がエルフの里で強くなったりとかのつもりでした。

その後、1、2章を書いている間に3~5章のあらすじを何度も手直していたんですが、徐々にそんな簡単に強くなってええのか?という気持ちが出てきました。

そして気づいたらこの展開をメモしている自分がいたんです。

そこからはまた4,5章の大幅な書き直しが発生しましたが、それでも生き生きと書き直せました。

そういう自分自身の感情を考えると、その選択は間違いではなかったんだと思えます。

なので、予定以上にアーティファクトというものを登場させることになりましたが、お付き合いいただけたらと思います。


自分自身のコピーと戦う展開って結構好きなんですよね。

自分がよく覚えているのはゼルダに出てきたダークリンクですかね。

それ以外にも漫画も映画もゲームでもたくさん出てきましたが、強敵だったな~って自分自身の記憶があるのはそれですね。

イメージ的には同じ感じだと持っていただけると嬉しいです。


バッカスとアイシャ、メリルの外見情報を全然出さずに申し訳ないです。

完全に抜けておりました。

ちょっとどこかできちんと書くようにします。

申し訳ないです。


今回も読んでくださった方々ありがとうございました。

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